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◇ライブ準備
「ふたりきり」*優月
しおりを挟むひゃー、変な声出しちゃった……。
肩を竦めたまま、固まってると。
「――――……」
歩いてるのを止めて見つめ合う。玲央は、ふ、と時計を見て。
少しの間だけ、んー、と考えてから。
「……優月?」
オレを呼んで、じっと見つめてくる。
「嫌だったら言ってくれていいんだけど」
「……?」
「オレ、お前に触りたい」
すり、と頬に触れる玲央の手。
なんか、そういうようなこと、言うのかなって、今は分かった。
なんとなく。玲央の表情が……瞳が。熱く見えて。
触りたいって。
めちゃくちゃ直球だし。
……ていうか、もう、ほっぺ、触ってるし。
お天気のいい日曜午前中の街の中で。
めちゃくちゃに整った顔の人に。なんだかとっても色っぽい感じで。
そんな風に言われる日が、オレに来るとは。思ってなかったなぁ……。
なんて、ちょっと遠い目になってしまう。
いくらまだ中心から離れた所だと言っても、人は歩いてるのだけど。玲央は全然気にならないみたい。
「……あの」
「ん」
「どこかで……二人きりに、なれる、なら……」
じっと見上げて、そこまで言って……。
「オレも。触ってほしい……かも……」
「かもって……」
玲央はそう言って、オレを見つめてから、ふ、と笑い出す。自分の口元を抑えて、笑うのをとめようとしてるっぽいのも。なんかカッコいいというか。
「二人きりになって、触っていいの?」
「……うん」
「触るだけじゃないけど。いい?」
「…………」
その台詞に想像するにつれ、かぁぁぁぁとどんどん熱くなっていく頬。
「……待って、今探す」
めちゃくちゃドキドキして頷いたオレを優しく引いて道路の脇によると、スマホを操作していたけれど。少しして、玲央はまたオレの手を取った。
「いこ」
「――――うん」
心なしか、さっきよりも熱い気がする、玲央の手。
……わーわーー。どこ行くんだろ。……ラブホ? かな??
二回目だー。ドキドキ。
ていうか。こんな昼間から、そんなとこ行って、いいのかな。
午後には皆に会うし、ライブなのに。
…………ああでも。
昨日から、ずっと。
めちゃくちゃ、思い切り。抱き締められたかった。から。
……我慢、出来ない、かも。
………………とか、そんなこと、我慢できないと思う日が来るなんて。
わー。こんなのちょっと、恥ずかしい、無理かも……!
……めちゃくちゃ、ドキドキしながら、辿り着いたところは。
外見は高級ホテルみたいな感じのところ。
「……ここ?」
「そう。良さそうだったから。いい?」
「うん」
手を引かれて、中に入る。玲央が手続きしてくれて、連れられて入った部屋は、なんだか、めちゃくちゃ豪華。ソファとかベッドとか、そのまんま高級ホテルみたいだし。ラブホテルと言われなかったら、全然分かんないかも。
「……なんかすごい」
「またワクワクしてそうだけど探検は後な?」
くす、と笑われて、探索なんてしないもん、と思いつつ。
前、したような……と思い出して苦笑が漏れる。
「……玲央?」
玲央を見上げて、じっと見つめる。
「……ふたり、だね」
また急にドキドキしてくる心臓。
オレの言葉に、ふ、と口元をほころばせると。玲央は、オレを引き寄せた。
「優月」
吸い込まれそうな、玲央の瞳。初めて会った時もそう、思った。
ゆっくり、と顔が傾いて、ふ、と唇が重なる。
「……ん、……」
もっと。深く。して、ほしい。
そう思って、自然と唇を開くと、すぐに舌が触れてくる。
キスが、熱い……。
ぎゅ、と玲央の背中の服に抱き付く。
なんか……たった一日なんだけど。
……希生さんのところで、玲央を大好きって、改めて何度も思って。
中途半端にくっついては離れてたせいで。
なんだかすごくすごく、こうしたかったみたいで。
「れ、お……」
激しいキスの間に、そう呼んで瞳を開けると、もう視界がぼやけてる。
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