上 下
799 / 825
◇希生さんちへ

「玲央のライブの時」*優月

しおりを挟む



 散歩から帰って、ドアを開けると、蒼くんが階段から降りてくるところだった。

「おはよー蒼くん」
「あぁ、おはよ。朝から散歩か?」
「うん、玲央の鯉見てきた」

 ああ、なるほど、と蒼くんが笑う。

「あんなにたくさん派手なのいても、目立つもんな。玲央っぽい」
「おんなじ話をしてきたよ」

 ふふ、と玲央と笑いながら、リビングのドアを開けると、希生さんと先生も起きてた。朝日が差し込む部屋はなんだかすごく眩しい。

「おはようございます」

 すがすがしいなぁ、と思いながら挨拶すると、「どこ行ってたの」と希生さんに笑われる。

「玲央の鯉見てきました」
 そう言うと、ふ、と笑われる。「気に入ってくれて良かった」と笑う希生さんに、うんうん頷いてると、玲央が隣で笑う。

「金の鯉なんてそんな見ないもんな……」
「うん。黒だよねぇ、よく見るのは。公園とかで見る」
「おそろいで金髪にでもしてみたら?」

 蒼くんが面白そうにそんな風に言う。あはは、と笑ってから、ふと、玲央をじっと見つめる。

 …………金髪の玲央?
 ……蒼くんの冗談かと思ったけど、金髪もありでは……? 似合う気がする。うーん、と玲央の髪に金髪を妄想でのせていると、蒼くんが、おい、とオレをつついた。

「お前今玲央を金髪にしてただろ」
「えっ。……あ、うん。似合う、なーと……」

 皆に笑われて、ちょっと困ってると、玲央が自分の髪を少し引っ張って、見つめる。

「金? してみる?」
「えっ」

 なんでもないことのように言うので、玲央を見上げると。

「勇紀が金にしてたことあるし。ライブハウスとかでは、そんな珍しくないから」
「えええええ……」

 普通のことのように言う玲央に、そうなの? と頷きつつ。

 金髪の玲央の妄想を続けてみる。
 出来上がった、金髪の玲央は。


「……めちゃくちゃカッコいいかも」

 そう言ったオレに、蒼くんが呆れたみたいに笑う。

「優月はもう、玲央なら、なんでもいいんだろ」
「そ、そんなことないよ、ちゃんと、似合うか考えてみたもん」
「お前、玲央が青でもピンクでもいいって言いそうだけどな」
「そ。……んなことない……と思うけど」

 ピンク……? 可愛い……??

「……ピンクはあんま居ないかも」

 玲央が苦笑しながら、オレの頭をぽふぽふと叩くと。


「今度大学のライブん時、金髪にしてみようか」
「…………」

 軽く言いながらオレを見る玲央につい、うんうん頷いてしまう。

「勇紀たちとかぶらなかったらな? 話してみよ」
「うん」

 嬉しくて頷いてると、希生さんが、「金か。鯉と揃いにするわけか」と笑う。ちげーし、と玲央が苦笑いしてるけど。……あれ?

「え、違うの? あの鯉と、お揃いの綺麗な金色がいいよね。キラキラの……」

 ふふ、と笑ってそう言うと、玲央はオレを見下ろして、「マジで鯉とお揃いって意味なのか?」と苦笑い。
 希生さんも先生も可笑しそうに笑ってる。


「そのライブいつ?」

 蒼くんが面白そうに聞いてくる。

「来月だよ?」
「出る時間とか決まったら教えて」
「ん? あ、見に来る?」
「行けたらな」

 うん、と頷いたところで、希生さんが朝食にしようと言ってくれたので、テーブル席についた。

 蒼くん、オレの学校行事に来てくれてたみたいに、玲央のバンドも来てくれちゃうのか……。こないだのコンサートの打ち上げ来てくれたけど、あれはお願いしたからで。……今回は、蒼くんから言ってくれた。しかも、ライブをを見ようとしてくれるって。なんか、すごく、嬉しいなあ。



 ……んーと。とにかく……。
 玲央、金髪。



 ……楽しみすぎる。








◇ ◇ ◇ ◇
(2024/5/21)





色んな水族館の生き物ありがとうございました。
正解とかじゃないので……それぞれ楽しい(´∀`*)ウフフ

ちなみに私は 玲央はイルカかな。……シャチかな?と。
優月はペンギンしかないな、て思ったんですかけど、ゴマフアザラシ(赤ちゃん)もいいなあ……と( ´∀` )

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

処理中です...