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◇希生さんちへ

「デートの行先」*優月

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「あ、玲央の鯉、居た」
「すぐ見えるよな。目立つ」
「ほんとに玲央みたいだね」

 そう言うと、はは、と玲央が笑いながら、ペットボトルを「飲む?」と渡してくる。オレが受け取ると、玲央は蓋を開けて、水を煽った。

 ――――……上向いた首が、綺麗だなあと。
 絵になるなあ、と、綺麗な青空を背景に、玲央を見上げてしまう。

「ん?」

 気づいた玲央が、蓋を閉めながらオレを見下ろす。


「……なんか。カッコイイなぁ、と」
「なんだそれ」

 は、と笑って、ふに、と頬に触れられる。


「襲うよ?」

 ふ、と緩む瞳に、どき、と心臓が弾む。


「オレ、昨日からすっげー我慢してんだけど」

 すり、と頬を撫でられて、そんな風に言われると。
 ……その触れ方に、ぞく、と背筋に何かの感覚が走る。


「……今日、早めに帰ろうかな。もうじいちゃんが優月と触れ合うのは出来たと思うし。どっかデートに行ってもいいよな」

 ふ、と笑って、玲央がオレをよしよし撫でる。

「どこかデート、行きたいとこある?」
「えっ玲央とデートでしょ? いっぱいある」
「そうなの? 例えば?」
「今日行けるところ?」
「今日じゃなくてもいいよ。オレとデートしたいとこ全部言ってみな?」

「玲央はもしかしたらいっぱい行っちゃってるかなあ?」
「って、何で楽しそうなの。むしろそういうの言う時は嫌がれよ」
「えーだって。オレが今から言うの、すっごいデート、て感じのとこだから」

 ふふ、と笑ってしまうと、「いいから、言ってみ?」と、玲央が優しい。

「んとね。水族館とか、遊園地とか、美術館……はオレの趣味だけど、動物園とか、アスレチックとか……? あっ日帰り温泉とか? 映画とか。でっかい公園とか。カラオケとかは玲央のコンサートになっちゃうけど。あっ、ディズニーランドも行ってみたい」

 思いつくまま、誰かと付き合ったらデートしてみたいなーと思っていた場所あげている間、玲央は面白そうにオレを見つめていた。

「うーん、ぱっと浮かぶのはこれくらいかなー」
「いっぱい言ったな」

 クスクス笑って、玲央はまたオレの頭をなでなでしてる。

「そういうデートかぁ」

 玲央が楽しそうに笑うので、あれ? と首を傾げる。

「そういうデートって、どういう意味?」
「今までオレがしてたのは……適当に街ぶらついて買い物したり、カフェ行ったり、クラブとか……」

 とか、で何かを言いかけて、玲央が口をつぐんだのに気づいて、玲央を見上げると。

「……あーと、まあ」
「……??」
「……不健全なのは、今優月に言いたくない」

 少し困ったように言う玲央に、あ、なるほど、と頷いていると。
 むぎゅ、と抱き寄せられた。

「なるほど、とか納得すんなよ」

 苦笑交じりの玲央の声。なんか困ってる。

「――――……」

 前のことだし、別に今更そんなに困ってくれなくてもいいのにと思うんだけど。……なんかそんな感じで困ってくれる玲央が、なんか可愛い。
 ていうかそれよりも。

「オレが言ったデートって、子供っぽすぎる……??」
 
 そっちが気になってしまって、聞いてみると。
 玲央は、オレを少し離して、見下ろしてくる。


「んー……まあ、聞いてて、可愛いなと笑ってたけど」
「ですよね……」
「ただ、オレは、そっちのデートが新鮮」
「――――……」

 新鮮、なんだ。

「あんまり、行ってない?」
「行ってないな、特にテーマパーク系。グループで連れ出されたことはあるけど、二人でとかは無い」

 そうなんだ。……そっか、玲央の付き合ってたって、恋人、とかだったのは、高校の途中まで、だったんだっけ。あとは全部、そういう関係の……。なるほどー。

「……ってことはね?」
「ん?」
「玲央もあんまり、ちゃんとデートっぽいのはしてないってこと?」

 行きつくしちゃってたかと思ってたんだけど。と思いながらそう聞くと。

「してないな」
 と玲央は苦笑い。

「だから行こうな、これから、たくさんデート」
「じゃあ、玲央が行きたいと思ってくれるとこ、いこ?」

「優月が楽しそうなら、多分、オレ、どこでも平気」
「――――……」

 わー……。
 なんかもう。……嬉しすぎて困る。


 言葉を失ったオレを、玲央は、ん? とにっこり笑って見つめてくる。

 





(2024/5/14)

すぐするとは限らないんですがいつかのために。。
どこデートが最初に見たいです? もしあれば(*'▽')?
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