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◇希生さんちへ
「赤」*優月
しおりを挟む椅子に座りながらお水を飲んで、ほかほかしていたのが落ち着いてきた頃。
ふと、さっきの絵が置いてある部屋を思い出した。
「希生さん、さっきの絵の部屋、見て来てもいいですか?」
そう言うと、いいよ、と笑ってくれるので、立ち上がると、「一緒に行く」と玲央も立ち上がった。
「いいの?」
「いいよ」
ふ、と笑んで、オレの隣に歩き出す。
たくさん見ておいで、と言って笑う久先生に頷いて、部屋を出ると、玲央がクスッと笑った。
「聞かなくても、いいに決まってるし」
「うん。あ、でも、オレ、ぼーっと見ちゃうと思うから。つまんなかったら、戻っていいからね?」
「ぼーと見てる、優月を見てるから大丈夫」
クスクス笑って、玲央がオレの頭を撫でる。
「えと……オレを見てて、玲央は楽しい?」
「ん。楽しい」
「……ありがと」
そんな風に言ってくれて、一緒に居てくれるのは、とっても嬉しい。
幸せ気分で一緒に歩いてると、玲央がオレを見つめる。
「優月は、絵、ほんと好きなんだな」
「うん。好き」
しみじみ言われて、ふふ、と笑顔で頷いてから、玲央を見上げる。
「描くのが一番好きだけど、見るのも大好きだよ」
そっか、と頷いて、「オレも見るのは結構好き」と言う。
「玲央は、絵、描くの好きだった?」
「学校では、描いたけどな。嫌いではなかったけど、卒業したらもう描くことないな」
「そだよね。ねね、玲央の子供の頃の絵ってどんな絵だった?」
「んー? どんなと言われると……」
「子供の頃の絵って、性格でるんだよね。大きく描くか、とか、色使いとかさ」
「まあ、なんかでっかく書いて……赤とか好きだったかも」
「そうなんだ」
「淡い色とかは使わなかった気がする。何描いたかはあんま覚えてないな」
「そっか。子供らしい、元気な絵って感じかなぁ?」
なんとなく分かるような……と、色々想像しながら、絵の部屋のドアを開けた。
「赤とか好んで使うのは、行動力あるとか。強いイメージかなあ。大きく描くのも、おなじかな」
「ふうん……」
そうなんだ、と頷いてる玲央に、「なんかステージで歌ってる玲央のイメージに重なる。赤って」と言うと、玲央はオレをふと見つめ返した。
「ステージのオレ、赤のイメージ?」
「う、ん。青いライト浴びてるのもカッコよかったけど。赤いライトは情熱的な感じで、そっちもすごくカッコよかった」
電気をつけるけど、ちょっと薄暗い。ぱたん、と扉を閉じて、一歩部屋の中に踏み出す。
「……ていうか、玲央は、全部すごくカッコいいから、どっちも似合うんだけど」
「そっか」
ふ、と玲央が笑う。優しいその声に惹かれて、振り返ると。
「――なんか、まっすぐ、全部カッコいいとか言われると……少し、照れるかも」
「――――」
そんなセリフにぴた、と動きが止まったオレは。
玲央の近くに戻って、すぐ至近距離から玲央を見上げた。
「どした?」
「玲央が照れるのって貴重だから。見つめてみました」
ふふ、と笑いながらそう言うと、玲央は「そうですか」と返して、微笑む。
オレを見つめて細められる玲央の瞳は、キラキラして見える。
「でも玲央、カッコいいって、めちゃくちゃ言われてきてるでしょ?」
「んー。まあ……」
ふ、と可笑しそうに玲央が笑う。
「言われてきたかもな」
「かもじゃないと思う」
だってほんとにカッコイイもん。なんていうのだろう。
整った顔の人は、結構いるのかもしれない。けど。
……玲央は、ほんとに目立つし。キラキラオーラに、見惚れてしまうもん。
そう思いながら見上げていると。
笑っていた玲央の手が、オレの頬に触れた。
「優月に言われるのは、なんか……全然違うんだよな」
ふ、と少し首を傾げて、オレをじっと見つめてくる。
「優月に言われると、オレもっとカッコよくなってくかも」
「え。そうなの? じゃあいっぱい言おうかな」
そう言うと、玲央は、ふ、と微笑んだ。
「心込めて言える時だけでいいよ」
すり、と頬を撫でてくる玲央に、じっと見つめられる。
「んと……今から百回言っても、心、こもるけどな」
「そう?」
「だって、玲央って、ずっとカッコいいもん」
「……そ?」
「うん。外見もだけど……動きとか? 言うこと、とか……することも。全部、カッコいい」
見上げて、ふふ、と微笑んでしまう。
(2024/3/28)
ちょっと聞いてみる( *ˊᵕˋ )
玲央と優月のイメージって何色ですか…?
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