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◇希生さんちへ

「困ってしまう」*優月

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 玲央と廊下に出て、二人になると、玲央がクスクス笑う。

「優月にちゃんとお風呂の場所教えてないだろ。一人で行くとか」
「そうだけどー」
「だけど?」

 玲央が楽しそうに笑って、オレを見つめる。

「玲央と蒼くんが恥ずかしいんだもん」
 むむ、と眉を寄せて見上げると。

「何で?」
 と聞かれる。

「お風呂でのぼせるようなことするみたいな……」
「何でそれが恥ずかしいの?」
「え」
「ん?」

 じー、と見つめられて、玲央が真顔なので、ふ、と首を傾げてしまう。

「普通にのぼせないようにって言っただけだろ?」
「……ん。まあ……??」
「何? 優月は何考えたんだ?」
「――――……何も考えて、なぃ……」

 だんだん小さくなるオレの声。

 ……あれ?? 変な意味なのかなと思ったんだけど、違った??
 てことはオレってば、普通のセリフに勝手に恥ずかしくなったとか?

「……えっと……」

 ……わーん、すっごい恥ずかしい……。
 オレは玲央から視線を外して、俯いてテクテクひたすら歩いてると。
 横で、玲央がふっと笑う気配。

「……?」
 おそるおそる玲央を見ると。玲央ときたら、向こうを向いて、何だか震えてる。ピン。と来て。

「……もー!」
「ごめんごめん」

 あは、と笑って、玲央がオレを見つめる。

「あってる。蒼さんもそういう意味で言ってたんだろうし、オレもそういう意味で答えたから」

 クスクス笑いながら、玲央はオレの頭をよしよしする。

「もう、玲央……」
 ものすごく、恥ずかしかったせいで、何だか文句すら咄嗟に出てこないし。

「真っ赤だし。……可愛い」

 肩掴まれて、くい、と引かれて、ちゅ、と頬にキスされる。

「ごめん。可愛すぎて」
 クスクス笑いながら、玲央がオレの手を引く。

「お風呂こっち」

 玲央に連れられて、あるドアを入ると。
 ……個人宅のお風呂というよりやっぱり、旅館みたいな。

 中のバスルームへの扉を開けると、めちゃくちゃ湯船おっきい……。

「これ、玲央一緒に入れるよ?」
「入れるけど……絶対触るから、やめとく」
「――――……」

 またしても咄嗟には返せない。

「あれ。優月、下着とかは?」

 そう言われて、何も持たずにここに来たことに気づく。

「あ。忘れた。ていうか、お風呂グッズ何も持ってきてない。何しにきたんだろ……」

 部屋から逃げてきたからなあ、と苦笑いしながら。

「取りに戻らないと」
「いいよ。取ってきてやる……と思ったけど……」

 玲央が、脱衣所に置いてあったかごを見て、「これ着ていいみたいだな。下着も新しそう」と言う。

「まあ、一応聞いてくる」
「うん。ありがと」
「行ってくる――――……あ。忘れてた」
「ん?」

 離れかけた玲央が、戻ってきたと思ったら。
 ぐい、と手を引かれて、ちゅ、と唇が重なる。

「……ん、ん……っ」

 舌が口の中に入ってきて、絡んでくる。

「ん……ふ」

 玲央の腕の中にとらわれるみたいな感じでしばらくキスされて、ゆっくりと離れる。は、と息をつきながら、玲央を見上げると。


「二人になったらキスしないと」
「……」

 くす、と優しく笑う玲央に、きゅ、と、胸が弾む。


「入ってな」
「うん」

 よしよし、と撫でると、玲央はドアを開けて出て行った。
 撫でられた頭に何となく触れてしまう。


「……はー。もう……」


 ほんと、強烈、だなぁ……。
 なんか。熱い、口。


 息も、熱い。

 なんかさ……もっとしてほしく、なっちゃうんだよう……。
 玲央はキスして、けろっとしてオレから離れるけど。

 ……なんか、今日何回か、キスされて。
 はー。

 ……オレの方が、そういうこと、して欲しくなっちゃってるみたいで。
 なんか、困ってしまう。





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