740 / 825
◇希生さんちへ
「繋がってる」*優月
しおりを挟む「玲央の友達、ヤバいな。色んな仮装する奴いたけど、その仮装見たのは初かも」
蒼くんが面白そうに言うので、オレも涙目を拭きながら。
「売ってるの? 稔のこの服」
そう聞いたら、玲央が苦笑しながら、どうだっけ、と考えてる。
「いやでも、さすがに作ってはなかったと思うから買ったんじゃないかな」
「……どっちにしても、稔ってばさすがな気がする……すごい……」
こらえきれずまたクスクス笑ってると、希生さんが、ふとオレを見て。
「稔も知ってるの?」
「あ、はい。バンドの皆と、稔は、一緒にご飯行ったりしてて……」
希生さんの質問に、そう答えると。
「じゃあ玲央は、自分の仲良しとは、優月くんを会わせてるんだな」
「どっちも一緒に居るから、自然と、かな? あ、でも、稔は、オレが優月のことを稔に話したあと、突然勝手に優月に話しかけたんだよな?」
「そう。智也が呼んだ名前を聞いて、優月っていうの?って。急に話しかけられて。ね」
「あいつ、おかしいよな」
笑う玲央に。
「でも智也のことを知ってるから話しかけたって、言ってたから。さすがに知らない人しか居なかったら話しかけなかったんじゃないかな」
「いや、あいつは、知らない奴が優月って呼んでも、話しかけたと思うけど」
「え。さすがにないんじゃ……あるかなぁ?」
クスクス笑いながらそう言うと、今度は蒼くんが、「智也って優月の幼馴染?」と入ってくる。すると久先生も、「智也くんと美咲ちゃん? の智也くん?」と首を傾げてる。
「智也、玲央と同じ学部だから」
そう言うと、蒼くんが「どうつながってんだよ」と、笑い出す。すると希生さんが首を傾げる。
「てことは、久と蒼も、玲央の同級生の子とつながってるのか? その子が優月くんの幼馴染?」
「つながってるというか、優月の絵の展示会とかに毎回来てたから、知ってるんだよ」
久先生の言葉に、ふ、と希生さんは笑う。
「なんだか楽しそうだな?」
そう言ってオレと玲央を見る希生さんの方が楽しそうなので、つられて嬉しくなって、「はい」と頷いたら。
「周りの人が自然とつながってるとか。運命っぽいなぁ……とか思ってるか?」
クスクス笑って、希生さんが笑いながら玲央に言うと。
「……思ってるけど?」
と、玲央がけろっとした感じで言って、ニヤ、と笑った。すると、希生さん、自分で言ったのに、はーと大きくため息をついて、オレの背中をポンポンとたたく。
「優月くん、ほんとこいつって、偉そうだし、なんでもできると思いこんでてほんと困る時あると思うけど、嫌だったら言っていいからね?」
「……おーい」
「もうなんか、何なら、無理な時は、そう言ってくれていいよ?」
冗談だと思ってるので、あは、と笑いながら希生さんを見ていたら。
「変なこと吹き込むなって」
くいと引かれて、玲央の方を向かされる。
「聞かなくていいからな?」
カッコいい顔が何だか今は、すごく可愛く見えて。
ふふ、と笑いながら頷く。
「あ、でも希生さん」
くるっと振り返って。
「玲央が何でもできるのは、ほんとにそうかも。いつもほんとにびっくりしてて、オレ」
バンドやっててすごくカッコいいし、曲とか作れちゃうし、歌うまいし人気あって、なのに料理できるし、掃除とかもちゃちゃっとしちゃうし、家も綺麗にしてるし、見た目もちゃんと整えてて完璧だし、朝からもう、ちゃきちゃき動いてるし。でもって、ものすごく、優しい。
なんて心の中で思いながら、笑顔でそう言ったら。
希生さんはきょとん、として。
それから、ふ、と笑いながら顔を背けられてしまった。
なんか、笑ってる。
……そうやって、顔背けて笑うとこも、なんかそっくり。
と、ちら、と玲央を見上げると、玲央もなんか苦笑してる。
123
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる