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◇希生さんちへ

「昔の玲央」*優月

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 食事を終えると、お手伝いさんたちが片付けてくれる。その人達とは別の人達がお茶を持ってきてくれて、また別のテーブルに並べてくれている。
 そこから少し離れて大きな窓から、広い庭を眺めて、庭の先が良く見えないってどういうこと、どこまで続いてるのかなと思いながら、きょろきょろ見回していたら。

「優月くん、おいで」
 希生さんに呼ばれて振り返る。もうお手伝いさんたちは居なくなっていたので、はーいと返事をしながら側に行く。ソファに囲まれた、楕円形のテーブルに希生さんがお菓子の箱を置いた。

「食後だけど、一つくらい食べられそう?」
「はい」

 わーい、と覗くと、玲央の買ったお菓子だった。

「玲央と一緒に買ってきてくれたんだよね?」
「あ、はい」
「ありがとうね。どれが食べたい?」

 あ、玲央渡したんだなあと思いながら。

「玲央が選んだんですよ、希生さんの好きそうなのをって言って。ね、玲央?」

 ふふ、と笑って、まだ窓のところに立ってた玲央に言うと、希生さんはクスクスと笑う。

「いいから。優月くんは何食べたい?」
「……つか、何で優月にだけ聞くわけ?」

 玲央が近づいて来て苦笑いで聞いてきた。

「一応オレが選んだんだけどなぁ?」
「玲央が手土産もって帰ろうなんて、そんなことする気持ちになったのは、優月くんのおかげだろ? だから一番に」

 クスクス笑いながら、希生さんが言う。玲央は苦笑い。

「選んだら? 優月」
 久先生が言いながら、蒼くんと一緒に近づいてきて、ソファに座りながら、笑う。

「希生さん、なんか優月に感謝中みたいだし」

 蒼くんは、なんだか可笑しそうに笑って言う。感謝中? と蒼くんを振り返ったオレから、玲央に視線を移して、蒼くんはまた笑った。

「前の玲央、どんな感じだったの?」

 クスクス笑われて、玲央はちらっと蒼くんを見てから。

「つかオレ、たまにはお土産持ってきたよな?」

 希生さんにそう言うと。
 
「春休みも帰って来なかっただろ?」
「……忙しかったし」
「遊んでばっかりでか?」

 じろ、と見られて、「マジで。忙しかったし」と、玲央がそっぽを向いてる。

 希生さん、春休み帰ってほしかったんだろうなぁ。と思いつつ。
 ふふと笑ってしまう。

 希生さんと居ると玲央は、何だか少し、可愛い。
 前も思ったけど。何だろうなぁ、ほんと。可愛い。ちょっと子供っぽくなる?
 
「優月、選んでいいよ」

 玲央にも言われるし。

「優月くん、どうぞ」

 笑ってくれる希生さんに頷いて、「おすすめあります?」と聞くと。

「あんこが好きならこれが美味しいかな。でも好きなので良いよ」
「あんこ好きです。じゃあこれで。頂きます」

 わーい、と受け取って、すぐ近くのソファに座ると、隣に玲央が腰かけた。

 「久と蒼は?」と希生さんが言って、二人がお菓子を選ぶと、希生さんは玲央を振り返りながら、オレの隣に腰かけた。

「玲央は?」
「じーちゃんが先選んでいいよ」

 少し苦笑いで、でもそんな風に言う玲央に、希生さんは。

「少し大人になったか?」
 なんて言って、微笑む。

「オレそんな変わってねーし」
「変わっただろ」
「そんなじゃないって」

 そんなやりとりを見ながら。んー、と考える。

 希生さんが比べて見てる、前の玲央って、玲央が一人暮らしするまでの、高校生の頃かな。
 なんか希生さんの言葉の感じだとあまり帰ってはなさそうな感じがするし。
 
 ――――……んー。
 高校生の玲央って。
 なんか。

 ……イメージ的に、今よりもっと、攻めてる感じ? で。自由で。
 すっごくカッコよかっただろうなあ。

 オレの想像力だと、いまいち想像しきれなくて残念なんだけど、きっときっと、めちゃくちゃカッコよかったに違いない。

 


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