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◇希生さんちへ

「穴あきそ」*優月

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 和菓子とプリンを買う間も、玲央はただひたすら目立つ。
 土曜のデパート、人がたくさんだから余計かな。

 こんなに目立つとやっぱりスルーしないと疲れちゃうなあなんて思った。

 しかも、何だか玲央と居ると、こんな人と居るのはどんな人?みたいな視線が、こっちにも飛んでくる。
 綺麗な彼女さんとかだったら、納得するんだろうけど、まあ多分。なんだ、彼女じゃなくて友達か、みたいな視線に変わった後、なんかそれにしても、あわないな、と思われてそうな感じで、じー、見つめられる気が。

 オレって、人の視線とか、あんまり気づかないというか。
 そういう、周りの人に対して鈍いかなあと思っている。噂とかもそうだけど、直接絡まないことにそんなに興味がないというか。その自覚はあったのだけど。

 なんか。
 ……今珍しく気付いているこれは、多分、オレ、あっている気がする。

 別にね、玲央とオレじゃ、部類ていうか系統というか。なんかそういうのが違うから、何で一緒にいるんだろ?と思われるのも分かるからいいんだけど。

 でもなんか、玲央がオレに話しかけて、なんかめちゃくちゃ優しく笑うと。なんかすごく静かに盛り上がる外野の人達。

 んんー。
 大学だと、結構皆がもう玲央を知ってるし。視線は感じるけど、ここまでじゃないかも。近所のスーパーとかも、こんなじゃない。

 なんだろ、デパートって、目立つのかな? 今、たまたま?
 はー、とにかく。なんか視線に疲れちゃった。
 わーなんか、すごくぐったりー。
 って、別に見られてるメインはオレじゃないのに。と思うと可笑しい。

 見られてる玲央はへっちゃらなんだよねぇ……と、平気で凛としてる玲央を見つめてしまう。

 買ってきたものを後ろに置いて、玲央がそのドアを閉めながら。

「なんか買っておきたいものあるか?」

 最後に確認してくれるけど、ううん、と首を振った。
 車に乗り込んで、シートベルトを締める。二人の空間に、ほっとする。

「混んでそうだな……」
 ナビを入れて確認して、玲央が苦笑い。

「空いてたら三十分くらいなんだけどな」
「土曜だもんね」
「だな。昼前にはつくし、いっか」
「ん」

 二人だし。玲央の運転姿好きだから、全然、オッケイ。
 そんなことを思いながら頷く。

「あ、あれ考えながら行こうぜ」
「あれ?」
 車を発進させて、駐車場の坂を下りながら、玲央が、ふ、と笑った。

「夏のさ、ライブで行きたいところ」
「わーほんとに行けるの?」
「大きいところ押さえるのは大変かもだけど、別に小さいライブハウスなら全然ありだし。小さいとこでも別に行けばいいだろ?」
「うん、そっか」
「全国での知名度はまだそんなにないけど。今はSNSとか動画で知ってくれる人もいるからな。どん位来てくれるかは謎だけど。社長たちがライブハウスの大きさとかは、いまどうしようか考えてるって」
「楽しみだねー」

 メジャーデビューとか、しちゃったら、全国で有名になっちゃうんだろうなぁ……。そしたら今よりもっと見られちゃうのかな。
 うーん。穴空いちゃいそう……。大変。

 でもそっか、玲央は視線を跳ね返すから、大丈夫かな。
 あ、オレに穴あくかも。隣で。

 そんな風に思ってたら、なんだかクスクス笑ってしまった。

「どした?」
 突然笑ったオレに、玲央がなんだか可笑しそうに笑う。

「ううん。……玲央達ってデビューのことは、まだ決めてないって言ってたもんね?」
「ん。大学の間はやろうってのは決めてるよ」
「そうなんだ」

 そっか、じゃあ少なくてもまだ三年弱は見れるんだ。とりあえずそれだけでも嬉しい。
 色んな地名を挙げて、あれこれ話しながら。何だか一時間あっという間だった。


「着いたよ」

 言われて、見上げた目の前の門は。
 ……めちゃくちゃデカくて。瞬きを繰り返してしまった。





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