【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

文字の大きさ
上 下
713 / 838
◇同居までのetc

「何してても」*玲央

しおりを挟む



 綺麗に並べた刺身と、酢飯と海苔とをテーブルに並べて、二人で座る。

「いただきます」
 そう言って、海苔にご飯と刺身、くるくる巻いて、優月が嬉しそう。

「なんかもう子供じゃないけど……」
「ん?」
「やっぱり手巻きは嬉しい食べ物みたい」

 そんな風に言って、嬉しそうなの、ほんと可愛いなと思う。オレだとなんとも思わずに普通に過ごしてしまいそうなことを、嬉しいって幸せそうにしてんのが新鮮すぎて、可愛いし。
 なんとなく、優月がずっとこんな風に生きていけたらいいなと思う。で、その側に居られたら。多分、優月が居ない未来より、オレは幸せな気がする。

「なら良かった」
 つか、なんかオレ、今、また歌詞につながりそうなこと考えてたな、と思って、笑ってしまいながら答えると、優月がオレをじっと見つめる。

「玲央は手巻き寿司、してこなかった?」
「だな。刺身で食べるか、店で食べるか……食べたことはあるよ」
「そうなんだ」
「お好み焼き食べてないのと、同じ理由かも」

 そんな風に皆で囲むような食卓ではなかったし、と思ってると。
 優月は、ふふ、と笑う。

「ん?」
「玲央が、手巻き寿司パーティする? って聞いてくれたのが、なんか嬉しかった」

 ああ、それね。と、苦笑が浮かんでしまう。
 優月は、パーティーっぽい時に、手巻き寿司を食べたって言ってただけで。別に「手巻き寿司パーティー」をしたって言ってた訳じゃなかったのに。
 確かに。自分でも何言ってんだとは思ったんだよな。

「なんか勝手に口から出た」
「ふふ」
 うんうん、と頷いて、優月は笑う。

「ねね、玲央、お店の手巻き寿司ってさ、すごく綺麗だよね」
「そうかもな」
「双子たちとさ、誰が綺麗な手巻き寿司を作れるか大会をしてたんだけどさ」
「何それ」
「え」
 聞いた瞬間、ぷ、と笑ってしまうと、優月は「変だった?」と照れ笑いを浮かべている。

「いや、面白いからいいけど」
「面白いって言われてる……」

 優月もクスクス笑いながら、オレを見つめてくる。

「父さんと母さんにね、皆で作ってあげるの。で、どうぞってして、誰が上手に綺麗に巻けたか判定してもらうんだよね」
「誰が勝つの?」
「樹里かなあ。なんかオレと一樹はいい勝負というか……」

 むー、と優月が口をとがらせているのが、可愛いなとか思いつつ。
 話を聞きながら、海苔にご飯をのせて、綺麗にか、と考えてみる。

「なんか、お店のを思い出しながら、形とかは綺麗にするんだけど、なんでか違うんだよね。ああいう風に、綺麗にはならなくて。美味しいからいいんだけど」
「形っていうか、色を考えてみれば?」
「色?」
「優月、得意そうじゃん、色使いとか」
「そっか、色かぁ」

 んー、と刺身を見て、優月が考えてる。

「そっか。さっきお刺身置いた時と一緒かな。緑のものと、赤とか白とか巻けばいいのかな」
「かもな。店のってどんなだっけなぁ」

 あんまり綺麗とか考えずに食べてたな、と笑いながら、シソの葉とサーモンをのせて、いくらを少しのせてみる。

「こんなふうなのは? 丼とかにこんな感じでのってるよな?」
「ん?」

 オレの手元を見た優月は、見た瞬間、目を大きくしてキラキラ笑顔で嬉しそうな顔になる。

「すっごくイイ~綺麗」
「ん」
「そっか、シソとか巻いてあるかもね、お店の。ていうか、いくらが可愛い、それ」
「まあこれ、なんかこういう感じの見たことあるって感じだけど」
「んー、美味しそう」

 じっと見つめられるので、ふ、と笑ってしまいながら、少しだけ醤油をつけて、優月の口元へ。

「ん」
 ぱく、と嬉しそうに食いついて、モグモグしてるのが。
 ……ああ、も、可愛いよな。

 つか、「誰が綺麗な手巻きずしを作れるか大会」ってなんだ? とも思って笑ってしまったのだけれど。優月と双子たちが楽しそうに巻いてる姿が容易に想像できると、なんかもう、全員可愛い。

「オレ、次の大会出たら、勝つかも。お刺身も上手に並べられそうだし。今度帰る時、手巻き寿司にしてもらおうっと」

 そんな事を言いながら、残りの手巻き寿司をオレの手から、ぱく、と食べる。
 次の大会って何、と笑ってしまいながらも。

「じゃあその大会、オレも出ようかな」
 クスクス笑いながらそう言ったら、「玲央はダメ」と断られる。

「なんで?」
「えー、なんか負けちゃいそうだから」

 ふふ、と笑って、優月はオレを見つめる。

「嘘。……ていうか、うちの大会、出てくれる気あるの?」
「あるけど?」

「そっちが嬉しい」

 心底嬉しそうに笑う優月に、こっちのが嬉しいけど、と思いつつ。
 ちゅ、と頬にキスすると、また優月の瞳が、めちゃくちゃ緩む。

 つーか何してても可愛い。
 オレ、変になってる? ……ま、いっか。

 




(2023/10/17)
※次、1ページだけ、番外編「金木犀」です。


後書き。

うわ、17日もあいてました👀
お久しぶりです。近況報告でつぶやいてますが、戻ります♡
またよろしくです。
しおりを挟む
感想 791

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

処理中です...