712 / 838
◇同居までのetc
「無意識」*玲央
しおりを挟む優月のマンションから持って帰ってきたアルバムと買い物の袋を手分けして持って、オレの部屋に入った。
アルバムはあとで見ようと、ソファの上に置く。見たいけど、長くなりそうだから我慢……。
「優月、シャワー浴びてきてもいいけど」
そう言うと、ううん、と笑顔。
「お腹空いたから、一緒に用意して早く食べよ?」
「ん」
まず炊飯器を早炊きでセットして、それから大き目の皿を出すと、優月が刺身を並べようと、パックを持ったまま固まった。
「ん? どした?」
聞くと、オレを見上げて苦笑い。
「お刺身ってどうやって並べていいかわからないんだよね……なんか、綺麗にならないの」
「シソと大根と人参のツマ、買っただろ?」
「うん。買ってたね。これ?」
「そう。それをさ、こうやって立てて……」
「うんうん」
奥に大根のツマを置いてシソの葉をのせる。
「そこに、刺身立てるみたいに置いて?」
「立てる……?」
箸でそーっと立ててみて、おお、と嬉しそう。
「イイ感じかもしれない。次は??」
「シソ、置いて――――真ん中も高さ出して。形違うのも置いて、一番前は寝かせるとか」
「うんうん」
「サーモンとかは巻いたり」
「うん」
めちゃくちゃ楽しそうにキラキラ笑顔。
少しずつ刺身を並べていく。
ミニトマトとか、ニンジンのツマとか飾って、出来上がると、優月は何やら感動している。
「お刺身、初めて綺麗に並べられた」
なんかお店みたい、とめちゃくちゃ喜んでいる。
「コツがあるよな」
「うんうん。ほんと。全然違う。すごいー」
手放しで褒めまくってくる優月に、ふ、と微笑んでしまう。
「今度実家帰ったら、オレが並べようっと」
「ああ」
クスクス笑って頷くと、優月はオレを見上げて、玲央すごい、とニコニコ。
「一通り料理習った後、盛り付け方も習ったから」
「違う気がする」
「ん? 違う?」
「センスだと思う」
そう言って、オレが答える前から、玲央はすごいなぁ、なんて言いながら嬉しそう。
「あっ、写真撮っていい? 一樹と樹里に送ろう~」
「いいよ。つか、だめとは言わないし」
「ありがとう」
わーい、とばかりにスマホを取りに行く。
たまに、すごく幼くなる感じも、可愛いなと思いながら、写真を撮ってる優月を眺めていると、ふと、オレを見て、止まった。
「えーと……はしゃぎすぎ、ですか??」
照れ笑いの優月に、笑いを抑えながら「可愛いからいいですよ」と答えると。ふふ、と笑う。
たまに敬語の優月が可愛くて、最近真似して応えてるけど。
大体そういう時、優月は、楽しそうに、嬉しそうに笑う。
可愛い。……って、一日に何度思うのか不思議。
その内、見慣れたら、思わなくなるのか? どうなんだろ。こんなに可愛いと思うのが初めてだから、経験からは分かんねーな。と思っていると。
「玲央、見て、すごいおいしそうに撮れた」
すぐ隣に来て、スマホを見せて、これとかこれとか言いながら、オレを見上げてくる。それを見つめて返事を返していたら。
「――――……」
いつの間にか、キスしてて。
ん? と優月がオレを見つめてる。
……あれ。キスしてたな。
いつの間にか。
優月は、ふふ、と笑って、お返し、みたいな感じでオレの頬に口づけた。
「双子に送っちゃう」
「ん。ああ」
優月は少しの間スマホを操作して、すぐに戻ってきた。
「ごめんね、続きしよ」
「ああ」
頷いて一緒に準備を続けながら。
……なんか無意識にキスするとか……。
やっぱ、優月のことは、ずっと可愛いって思ってそう、オレ。
つか、これ外でやんないように気をつけねーと、と思わず苦笑いが浮かんだ。
234
お気に入りに追加
5,436
あなたにおすすめの小説


義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる