【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇同居までのetc

「良い人だな」*優月

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 えっと……ちょっと、落ち着こう、オレ。

 本当のことを話してるんだから、本当っぽく話せば……って、どう話せば本当っぽいんだろう。うーん。

 なんか春さんのこの様子だと……。
 オレが恋人って思いこんでるだけで、玲央に騙されてるとか、なんかそんな感じで思ってるとしか思えない。友達としてすら、一緒に暮らすとか心配してたみたいだし、それでわざわざこんな風に時間まで取って、オレの所に来てくれてるんだし。これが恋人ってなったら、「余計心配」っていうのも、うん、まあ、春さんの言いたいことは分かる……。

「……あの、春さん」
「うん?」
「春さんは、どんな噂を聞いた感じですか……?」

「言ってもいい?」
「はい」
「……ほんとに? 聞いたままでいい?」
「え。あ、はい、いいです」

 うんうん、と頷いて待っていると、ちょっと言いづらそうに。

「……超お金持ちで、バンドやっててなんでもできてルックスもあれで……すごくモテる分、とっても自由で……恋人は作らず遊びまわってる、みたいな……急に捨てられることもあるとか、そんなかな……?」
「――――……」

 まあ、なんか。でたらめでは、ない……っていうところがね。
 そんな噂、違いますよって、言えないところがね、昔の玲央さんのちょっぴり困ったところ、なんだけど……。
 なんかそんな風に思ったら、ちょっと、苦笑いが浮かんでしまう。

「この噂って、あってる?」
「……んーと……オレと会う前の玲央は、そんなとこもあった、ような……」
「あってるのか……」

 あってます、とははっきり言わなかったけど、違いますとも言えず……。
 結果、ああ、春さん、困ってる。
 うーん、と悩み始めてしまった。

 ああ、なんか話せば話すほど、ますます心配させてしまうような気がする。

 うーんうーんうーん……。困ったな。
 あれ、美咲とかって、どこから信じてくれたんだっけ。どうやって、あの最初の印象を良くしてくれていったのだっけ……? 

 ……ていうか。なんか。
 春さん。良い人だなぁ。

 絶対本気で心配してくれて、なんかすごく言い辛そうな話なのに、わざわざ来てくれたんだなーと思うと。
 この人に何て説明したら、心配を晴らせるかなあ。

「春さん……あの、噂はほんとのところもあるの、オレも知ってるんですけど……」
「うん?」
「……今は玲央、すごく、変わってくれて」

「あのさ、そもそも優月くんて、いつ知り合ったの?」
「えっと……」

 言わない方がいいような気がする……。けど答えずにはいられない。

「三週間位前……」
「三週間?」

 びっくりしたみたいな顔してる。
 ……そうだよね。
 三週間前に会って、なぜかノーマルのオレが、男の玲央と付き合うことになって、もう先週には一緒に暮らそうって言ってたんだから、それだと出会って二週間の時点でってことになっちゃうし、そうなると……。

「優月くん、ほんとに、大丈夫? 一緒に暮らすとかは、少し待って、様子見るとか……」

 ですよね。
 そうなるかなって、ますます心配させちゃうかなって、分かってた……。

 まてまて、落ち着いて、オレ。
 どうしたら、春さんを……。

「お待たせしました」

 そこに、店員さんが現れた。目の前に並べられていくお昼ご飯を見ながら、あーどうしよう……とめちゃくちゃ考える。

 春さんはほんとに良い人だと思う。
 なんだろう、言葉一つとっても、気遣いみたいな。そんな風に言ってくれるんだ、て思うような話し方をする人で、だから初めて会った時から、結構心を許してた。
 だから、一緒にご飯食べたりするようになったんだと思う。皆が言ってたみたいに、隣の人とご飯、とか、今はあんまりしない時代なのかもしれないけど、春さんは大丈夫って思っちゃって。……うん、それで大丈夫だったわけで。
 ……今の様子見てても、これはもう、絶対、めちゃくちゃ心配してくれてる。

 オレの言葉も信じてくれる人だけど、多分今は、オレのことを信じてくれないんじゃなくて、オレがだまされてるか何かだと、思ってるんだろうな……。

 どう話したら、分かってくれるんだろう。
 春さんにも、できたら、分かってもらいたい。


「とりあえず、優月くん、食べよ?」

 春さんが、にこ、と笑ってくれたので、はい、と頷く。
 ちょっと食べながら考えることにして、いただきます、と手を合わせた。




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