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◇同居までのetc

「いい匂い」*優月

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 しばらくして、コーヒーを淹れ終えた頃、玲央が出てきた。

「おかえりなさいー」
 ドライヤーを出そうと思って、玲央の横を通り過ぎようと思ったら。

「迎えにきた? 可愛いんだけど」

 クスクス笑いながら、なんだかホカホカしていい匂いの玲央に抱き締められそうになったのを、とっさに、手を出して止める。

「オレまだお風呂入ってないからきれいじゃないよ~待ってて?」
「お迎え来たんじゃないの?」

 クスクス笑う玲央に、「あ、ドライヤーを出そうと思って。待っててね」と脱衣所に入って引き出しを開ける。ドライヤーを取り出して、玲央に渡した。

「はい。使ってて?」
「ん。早くはいっといで」
「うん。あ、コーヒー淹れたから飲んでゆっくりしてて? お水もペットボトル、冷蔵庫にあるから、自由にしててね」
「ん。サンキュ」
「いってきまーす」

 脱衣所のドアを閉めて、服を脱ぎながら。
 ……今、玲央に抱き締められてたら、ホカホカで幸せだっただろうなぁ。
 残念。なんて、ちょっと思う。

 玲央って至るところに、キュン、てすることを差し込んでくるからすごい。
 シャワーを浴びながら、そんなことを思う。

 今だって、普通だったらすれ違って、オレは普通にドライヤーを出して、それだけのやりとりだったと思うのに。

 「お迎え?」とか楽しそうに、めちゃくちゃいい笑顔で、抱き締めようとしてくれるとか。なんかすごく、好き。
 めちゃくちゃ大好き。

 どうしてこんなに好きなんだろう。
 今オレの家に来ててくれて、一緒に泊まってくれようとしてるとか、なんかそれだけで、めちゃくちゃ嬉しいもんね。

 シャンプーで頭を洗い始めて、あ、久しぶりにこのシャンプーの香りだ、と思う。
 あ、そっか。今日は玲央がこのシャンプーで洗ったんだな。
 多分、玲央の使ってるシャンプーと、お値段が全然違いそうなんだけど……大丈夫だったかなあ、なんて、妙なことを考えつつも。でも。
 あ、今日は玲央からこのシャンプーの香りがするんだなーと思ったら、何だかそれも、とっても嬉しい。
 ふんふんご機嫌で鼻歌を歌いながら、全身洗い終えて、バスルームから出た。

「おかえり」

 ドアを開けたら、目の前に玲央が居て、ぎゅう、と抱き締められた。

「わ……」
 玲央の腕の中にすっぽり入ってる自分。

「あったかいな、優月」

 クスクス笑いながら、玲央がつぶやく。
 ちゅ、と頬にキスされる。

「おかえり」
 笑いながら、玲央がオレの頬をぷにぷにと摘まむ。

「んー……ん」

 ぎゅ、と玲央の背中に腕を回して、抱き付く。

「ただいま、玲央」
 そう言ったら。もう一度、ぎゅーと抱き締められる。と、ふと気付く。

「……いいにおい、玲央」
「優月の好きな匂い?」
「うん、シャンプーとかボディソープはそうなんだけど……玲央がいい匂い……」
「そう?」
「うん」

 頷いて、すうと吸ってると、「吸われてるし」と、玲央はクスクス笑った。
 ふふ、と笑ったら、玲央が、そういえば、と笑う。

「なんか前オレもそんなようなこと言ったな」
「……うん。言ってた。シャンプー同じだけど……オレの匂いがするって、言ってた。今それ、すごく分かる」

 クスクス笑いながら、玲央がオレの首筋に顔をうずめる。

「いい匂い」
「玲央も……」

 ふ、と笑って、見つめ合って。


「……なんか、すごく……」
「ん?」
 クス、と笑って瞳を細める玲央。

「イチャイチャしてる気がするね……」

 じっと見つめたまま、そんな風に、言葉が出てくるままに言ったら。
 玲央はますます優しく笑って。


「してるよな」

 クスクス笑う唇が、少し斜めになって、そのまま、ちゅ、と重なってきた。





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