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◇同居までのetc

「遊ばれて」*優月

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 涙目で赤面してるのとかいろいろが落ち着いてから、玲央がオレをゆっくり離した。

「優月んち泊まる用意しよ。明日、車でそのまま大学行くから、学校の準備もしてな?」
「うん」
「行く途中で何か食べよ。食べたいものあるか考えといて」

 うん、と頷いて、部屋に向かって歩き出しながら、ふと思った。

「玲央は食べたいものないの? いつも聞いてくれるから、玲央の好きなものでいいよ?」
「別にオレ、なんでもいいんだよな……」
「そうなの?」
「正直なとこさ」
「うん」
「体に必要なものは取ってたけど、三食ちゃんと食べてもなかったし。あんまりこれがいい、とかが今まで無かったかも。適当に通りがかりで入るとかが多かったし」
「そうなんだ」

 ……そこ行くと、オレ、人生、ほぼ三食絶対食べて生きてきたような……。
 食べたいものいっぱいあったような……。
 筋トレとか体づくりはしてる玲央だから、必要なもの、ていう言い方になるんだろうけど。逆にオレは、そっちが出来てないような。

「ん?」
「オレ、なんか好きなもの食べて生きてきたような……」

 苦笑いで玲央を見上げると、玲央は、ぷ、と笑った。

「いいんじゃねえの、好きなもの食べてる優月、可愛いし」

 伸びてきた手に、頭をクシャクシャ撫でられる。

「オレは優月が嬉しそうに食べてるのが好きだから、何食べたいか聞いてる」
「……オレ、そんなに嬉しそうに食べてる?」
「ん。食べてる」

 クスクス笑いながら、ポンポン、と頭を軽く、撫でるように叩いて玲央の手が離れた。

「なんか、オレ、めちゃくちゃ食いしん坊みたいな気がしてくるね」
「ん? ……そんなことは言ってねーけど」

 そこまで言って、玲央は、ぷ、と吹き出す。

「優月が幸せそうに食べてると、オレも嬉しいとか」
「――――……」
「そんなのは初めて思ったな」

 クローゼットから服を出しながら、玲央が笑う。

「オレ、優月との間に、初めてのことがたくさんあるかも」

 何で玲央は、そんなにオレに、初めてって言ってくれるのかなあ。
 ほんとに嬉しくなっちゃうんだけど。

 教科書を用意し終えたオレは、服を持ってる玲央に近寄って、すぐ近くから見上げた。

「ん?」
「……オレが初めてって、玲央、よく言うでしょ」
「まあ。そう、だな」
 くす、と笑って、オレを見下ろす。

「オレも、玲央が初めてのこと、いっぱいあるよ」
「ん」
「あと……二回目でも、三回目でも、なんでも嬉しいんだけどね」
「ん?」

「なんか、玲央、オレとが初めてって言って、笑ってるくれるからさ」

 少しだけ背伸びをして、玲央の頬に、ちゅ、とキスした。

「めちゃくちゃ嬉しい」
「――――……」

 少しの間、ただ見つめ合って、玲央を見上げてると。

「――――……そういうのって、誘われてると思って、大丈夫?」

 くす、と笑う玲央に、ぶに、と顎を掴まれて、引き寄せられる。

「……ち、ちが」

 うわ、と思って、ぎゅーっと目を閉じると。
 数秒して、何もされないので恐る恐る目を開けると、玲央の苦笑いが目の前に。

「これ、ここで始めたら、もうそこのベッドに絶対押し倒すから。無理」

 クス、と笑ってそんなことを言うと、お返し、みたいな感じで頬にキスされて、顎を離された。そのまま、すり、と頬に触れて。

「もーほんと、優月って……もうちょっと気を付けないと、オレに至る所でドロドロにされるからなー?」
「――――……」

 その言葉に、なんだか想像が追い付かないけど、なんとなく想像しかけて、もうその段階で、かぁっと血が上る。

「はいはい、早く用意して、寝室でようぜ。ここヤバいから。早く早く」
「…………っ」

 ふざけた口調で言って、可笑しそうに笑う玲央。
 もう絶対からかわれているのも分かるのに、顔は熱いし。

 ちょっとキスしただけなのに、いっぱい遊ばれてしまった。
 ……好きだけど。
 
 
 

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