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◇同居までのetc

「とんでもない」*優月

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「あ……そうだ」

 オレは、心臓のためにも、この恥ずかしい会話は終わりにしたかったので、ふと思い出したことを話すことにした。

「玲央がね、どう思うか聞きたいんだけどね?」
「ん? 何?」

 クスクス笑いながら、首を傾げてくれる玲央に、オレは、渋滞が生まれそうって言われたことと、知らない人についてかないように、みたいに言われたことを話してみた。
 そしたら、途中からふんわり笑んだままオレを見つめてた玲央は、オレが話し終えると、んー、と少し考えるそぶり。

「そうだなぁ……」

 少し前を向けた視線を、またオレに戻して、目が合うと、ふんわり微笑む。

「渋滞を生みそうって言われるのもなんとなく分かるし……知らない人についてっちゃいそうだから気を付けて、っていう気持ちも、分かる」
「分かるの?」

「ん。そう言いたくなる気持ちは分かる。ふわふわしてる風に見えるしな」

 ……そうなんだ。
 てことは、玲央もだし、皆も、オレのイメージはそんな感じなのかぁ。

 玲央のマンションについて、エントランスで、傘を畳む。

「でも、優月、見た感じよりしっかりしてるし、人見る目はあると思うよ」
「――――……」

「だから、渋滞うまないだろうと思うし、知らない人っつっても、変な奴にはついてかないって気がする」

 わあ。
 なんか。
 なんとなく、嬉しい。


「……そう?」
「ん、そー思う」

 クスクス笑う玲央と、エレベーターの前で、見つめ合う。


「そうだ。オレ、玲央と初対面でくっついてっちゃったもんね」
「――――……」

「見る目、あるよね」

 ふふ、と笑ってしまうと。
 玲央が面白そうに笑って。

「オレに関して、見る目あるかは、まだ分かんないんじゃねーの?」

 そんな風に言いながら、頬に触れて、ぷに、と摘まむ。


「とんでもない奴だったら、ごめんな?」

 ちょっとふざけて、目を細めて笑う玲央は、なんだかとっても可愛く見えて。……とんでもなくても何でもいいなあ、なんて思ってしまうけど。

 エレベーターに乗り込んで、なんとなく少し黙っていたオレは、ふ、と玲央を見上げた。

「……ていうかね」
「うん?」

 じっと見つめると、玲央は、クスッと優しく微笑む。

「玲央はとんでもない人……な気がする」
「……そう?」
「うん」

 玲央の部屋の階について、部屋まで歩きながら、玲央がオレに視線を向ける。

「どういうとこが?」
「……なんか全部、普通の人じゃない、気がする」
「んー……そう?」
「うん」

 ……普通、ではないよね。
 カッコよすぎるし。……ていうか、顔、どうやればそんな感じになるの?とか思うし。脱いでもカッコよすぎるし。そういえば実際のところは全然知らないけど、お家も絶対すごそうだし。マンション二つ一人で使ってる大学生なんてそんな居ないよね? バンドだってめちゃくちゃすごいし、曲作ってる玲央もすごいし、歌ってるのもすごいし、ていうか、しゃべってるだけでこんなに華がある人、見たことないし。
 …………はて? 何でオレは、ここにいるんだろうか?

「……何考えてんの?」
 鍵を開けながら笑う玲央の視線に、全部心の中で喋り倒してたことにはっと気づいて、オレは玲央を見上げた。

「……玲央って……なんか色々すごくて」
「ん?」

 ドアを開けてくれるので、ありがと、と中に入る。傘を置いて、部屋にあがると玲央を振り返った。

「玲央って、なんか、全部普通じゃないくらいすごいなぁって……そういう意味ではとんでもないかもって、思って。あれオレ、どしてここにいるんだっけ、とまたちょっと思っちゃってた」

「――――……ふーん?」

 ふ、と口角だけあげて微笑する感じ。
 ……綺麗な笑い方。そんなのも、特別な気がして、見惚れてしまうと。

 腕を掴まれて、とん、と壁に押し付けられた。

「?」
「……でもオレ、すげー普通だと思うけど」
「……どこが??」

 どこが普通なんだろう、玲央って。
 普通なとこ……。

「そんなきょとんとする?」
 玲央は苦笑いしつつ、オレの顎に触れる。

「好きな奴に、いーっつも触りたいとか、キスしたいとか思うとこは」
「――――……」

「普通の男、だろ」

 最後の方は、唇が触れそうなところで言いながら。言い終えると同時に、キスされた。

「――――……」

 ……普通の男って。
 …………カッコよすぎて、全然普通の男じゃないのだけれど。

 はっ。
 ていうか、玲央って、いっつも触りたいとか、キスしたいとか、思ってくれてるってこと?? 

 キスが離れたら聞いてみよう。
 と思うのだけれど。

「……ん、ン」

 全然離れてくれなくて。
 一生懸命上向いて、玲央のキスに応えてる間に、どんどん何も考えられなくなっていく。


「……ん、ん……ふ ……」

 なんだか好きすぎて。
 玲央の背に回した腕で、きゅ、としがみつくと。

 ますますキスが、深くなる。
 
 

 

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