683 / 825
◇同居までのetc
「とんでもない」*優月
しおりを挟む「あ……そうだ」
オレは、心臓のためにも、この恥ずかしい会話は終わりにしたかったので、ふと思い出したことを話すことにした。
「玲央がね、どう思うか聞きたいんだけどね?」
「ん? 何?」
クスクス笑いながら、首を傾げてくれる玲央に、オレは、渋滞が生まれそうって言われたことと、知らない人についてかないように、みたいに言われたことを話してみた。
そしたら、途中からふんわり笑んだままオレを見つめてた玲央は、オレが話し終えると、んー、と少し考えるそぶり。
「そうだなぁ……」
少し前を向けた視線を、またオレに戻して、目が合うと、ふんわり微笑む。
「渋滞を生みそうって言われるのもなんとなく分かるし……知らない人についてっちゃいそうだから気を付けて、っていう気持ちも、分かる」
「分かるの?」
「ん。そう言いたくなる気持ちは分かる。ふわふわしてる風に見えるしな」
……そうなんだ。
てことは、玲央もだし、皆も、オレのイメージはそんな感じなのかぁ。
玲央のマンションについて、エントランスで、傘を畳む。
「でも、優月、見た感じよりしっかりしてるし、人見る目はあると思うよ」
「――――……」
「だから、渋滞うまないだろうと思うし、知らない人っつっても、変な奴にはついてかないって気がする」
わあ。
なんか。
なんとなく、嬉しい。
「……そう?」
「ん、そー思う」
クスクス笑う玲央と、エレベーターの前で、見つめ合う。
「そうだ。オレ、玲央と初対面でくっついてっちゃったもんね」
「――――……」
「見る目、あるよね」
ふふ、と笑ってしまうと。
玲央が面白そうに笑って。
「オレに関して、見る目あるかは、まだ分かんないんじゃねーの?」
そんな風に言いながら、頬に触れて、ぷに、と摘まむ。
「とんでもない奴だったら、ごめんな?」
ちょっとふざけて、目を細めて笑う玲央は、なんだかとっても可愛く見えて。……とんでもなくても何でもいいなあ、なんて思ってしまうけど。
エレベーターに乗り込んで、なんとなく少し黙っていたオレは、ふ、と玲央を見上げた。
「……ていうかね」
「うん?」
じっと見つめると、玲央は、クスッと優しく微笑む。
「玲央はとんでもない人……な気がする」
「……そう?」
「うん」
玲央の部屋の階について、部屋まで歩きながら、玲央がオレに視線を向ける。
「どういうとこが?」
「……なんか全部、普通の人じゃない、気がする」
「んー……そう?」
「うん」
……普通、ではないよね。
カッコよすぎるし。……ていうか、顔、どうやればそんな感じになるの?とか思うし。脱いでもカッコよすぎるし。そういえば実際のところは全然知らないけど、お家も絶対すごそうだし。マンション二つ一人で使ってる大学生なんてそんな居ないよね? バンドだってめちゃくちゃすごいし、曲作ってる玲央もすごいし、歌ってるのもすごいし、ていうか、しゃべってるだけでこんなに華がある人、見たことないし。
…………はて? 何でオレは、ここにいるんだろうか?
「……何考えてんの?」
鍵を開けながら笑う玲央の視線に、全部心の中で喋り倒してたことにはっと気づいて、オレは玲央を見上げた。
「……玲央って……なんか色々すごくて」
「ん?」
ドアを開けてくれるので、ありがと、と中に入る。傘を置いて、部屋にあがると玲央を振り返った。
「玲央って、なんか、全部普通じゃないくらいすごいなぁって……そういう意味ではとんでもないかもって、思って。あれオレ、どしてここにいるんだっけ、とまたちょっと思っちゃってた」
「――――……ふーん?」
ふ、と口角だけあげて微笑する感じ。
……綺麗な笑い方。そんなのも、特別な気がして、見惚れてしまうと。
腕を掴まれて、とん、と壁に押し付けられた。
「?」
「……でもオレ、すげー普通だと思うけど」
「……どこが??」
どこが普通なんだろう、玲央って。
普通なとこ……。
「そんなきょとんとする?」
玲央は苦笑いしつつ、オレの顎に触れる。
「好きな奴に、いーっつも触りたいとか、キスしたいとか思うとこは」
「――――……」
「普通の男、だろ」
最後の方は、唇が触れそうなところで言いながら。言い終えると同時に、キスされた。
「――――……」
……普通の男って。
…………カッコよすぎて、全然普通の男じゃないのだけれど。
はっ。
ていうか、玲央って、いっつも触りたいとか、キスしたいとか、思ってくれてるってこと??
キスが離れたら聞いてみよう。
と思うのだけれど。
「……ん、ン」
全然離れてくれなくて。
一生懸命上向いて、玲央のキスに応えてる間に、どんどん何も考えられなくなっていく。
「……ん、ん……ふ ……」
なんだか好きすぎて。
玲央の背に回した腕で、きゅ、としがみつくと。
ますますキスが、深くなる。
138
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる