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◇同居までのetc
「知らない人に」*優月
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三限が終わって、四限に移動中。雨が降ってたので、いつもなら外に出るんだけど、隣の校舎の中を突っ切って移動していたら、「優月くん」と呼び止められた。
「あ」
振り返って、呼んだ本人を見て、オレは一緒に居た友達に、先に行ってと伝えた。
「春さん。こんにちは」
「うん。元気?」
クスクス笑うその人は、オレのマンションの隣人。江波 春仁さん。
「はい。学校で会うの久しぶりですね」
「今日は卒論のことで来たよ」
「そうなんですね」
「ん」
頷いてから、春さんはふとオレを見つめた。
「そういえば引っ越しどうなった?」
「あ、するんですけど……まだいつとは……今週末に決まったら、動くかもです」
希生さんのところに行って、ちゃんとOKが出て、うちの家族とも一度話して、かな。
「今はどうしてる? 隣に居る?」
「今、玲央の家に泊まってて。今日はいったん帰りますけど」
「そっか、優月くん引っ越したら、寂しくなっちゃうね」
「そう、ですね……。とってもお世話になりました……ってまだ早いんですけど。春さんは卒業したらあのマンションは出るんですか?」
「仕事がどこかによるかな」
「あ、そうですよね」
「まあ、また遊びにきてよ」
「はい」
笑顔で頷いてから、ふと時計を見た。
「授業ギリギリ?」
「あ、はい」
「行っていいよ、ごめんね、引きとめて」
「いえいえ。会えてよかったです。じゃ、また」
軽く頭を下げて、春さんから離れて教室へと急ぐ。
ほんと学校で会うの、久しぶりだったかも。
四年生になると、学校あんまり来なくても良くて、就職活動とか卒論とかが忙しくなるって聞いてるけど……。
今みたいに何時間も、友達と授業受けて、皆と過ごすっていうのも、なくなっちゃうんだなあ。
そう考えると、就職活動とか、三年位から話に出るだろうし。
大学生活って意外と短いのかも。
こんな風に毎日大学来て、会いたければすぐ会える、この環境って。
今だけかなあ。
仕事始めたらそうはいかないもんね。んー……。
そう考えると、貴重な残り、二年と半分。
教職はとるから、教育実習は行くし。免許取るし。あと、何だろう。大きいこと。
今年の夏は、玲央達のライブについてくから、それと、教習所で夏は終わりかな。引っ越しもするかも……?
そんなことを考えながら、時間ギリギリ教室に滑りこむと、さっき先に行った皆と目が合った。近くの開いてる席に座ると、「さっきの人誰?」と聞かれた。
「マンションの隣の人。四年生だよ」
「ああ、道理で。先輩ぽかった」
「仲いいんだ~。色々分けあったり。ご飯一緒に食べたりしてて」
「へー?」
「え、マンションが隣ってだけの人と?」
なんだか驚かれて、首をかしげてしまう。
「え? あ、うん。そうだよ」
「なんかすごいよな、優月」
「ん? 何で?」
「隣の人と、なかなかご飯食べようなんてならないと思って」
「でも同じ大学だから余計仲良くなったんだと思う。最初、色々学校のこと聞いてたし」
「同じ大学なんて、何千人も居るからね~優月」
「そうだよ、ヤバい奴だったらこわいじゃん。気を付けないと」
「うーん……でもイイ人だよ?」
「結果論でしょ。変な人だったかもしれないじゃん」
「あんまり知らない人についてっちゃだめだよ」
「えー……知らない人っていっても……」
「優月、彼氏に聞いてみな? 心配すると思うよ?」
彼氏、のところだけこそっと言う友達に、頷きながらも。
「……うーん……」
そうかなあ。玲央心配するかな。
そういえば、思えば今までも、よく知らない人についてっちゃダメとか、言われて生きてきたような。ていうかそんなことしないよ、オレそんな、知らない人について行かないし。と、言いながらきたんだけれど。
確かに、春さんのことは挨拶に行った時、同じ大学だーっていって、喜んじゃったような。
イイ人だったから、良かったってことなのかな。
そうか。部屋にあげちゃうとか、ほんとはだめなのか。
んー。なんか。昔から、近所とかでもそんな感じで生きてきちゃったもんね……。商店街も馴染みの人ばっかりで。
さすがに、玲央の家に勝手に誰か上げたりはしないけど。
……それと同じ感じで、自分のとこもだめなのかな。
「なんか難しいねぇ……」
考えながら、うーん、と唸りながらそう言ったら、周りの皆は、オレをパッと見て、それから。
「そのままでいいぞって言ってやりたいんだけど」
「ちょっと気を付けて」
「彼氏によろしく伝えといて」
「え、何を?」
「ここらへんの話一通り」
一人が言うと、皆が、うんうん頷くので。
オレは、一応、うん、と頷いた。
玲央に一通り話して、何になるんだろ。
ていうか。
さっきも渋滞作りそうとか言われたし、これも彼氏に伝えといてとかさ。
皆の中のオレって……。
相変わらず、心配されてしまう傾向にはある気はするのだけど。
おかしいな、オレ、一応ちゃんと、無事生きてきてると思うんだけど。
すぐ教授が入ってきたので考えるのはやめて、授業に集中することにした。
……ま、いっか。
あとで、玲央に、全部一緒に聞いてみよっと。
「あ」
振り返って、呼んだ本人を見て、オレは一緒に居た友達に、先に行ってと伝えた。
「春さん。こんにちは」
「うん。元気?」
クスクス笑うその人は、オレのマンションの隣人。江波 春仁さん。
「はい。学校で会うの久しぶりですね」
「今日は卒論のことで来たよ」
「そうなんですね」
「ん」
頷いてから、春さんはふとオレを見つめた。
「そういえば引っ越しどうなった?」
「あ、するんですけど……まだいつとは……今週末に決まったら、動くかもです」
希生さんのところに行って、ちゃんとOKが出て、うちの家族とも一度話して、かな。
「今はどうしてる? 隣に居る?」
「今、玲央の家に泊まってて。今日はいったん帰りますけど」
「そっか、優月くん引っ越したら、寂しくなっちゃうね」
「そう、ですね……。とってもお世話になりました……ってまだ早いんですけど。春さんは卒業したらあのマンションは出るんですか?」
「仕事がどこかによるかな」
「あ、そうですよね」
「まあ、また遊びにきてよ」
「はい」
笑顔で頷いてから、ふと時計を見た。
「授業ギリギリ?」
「あ、はい」
「行っていいよ、ごめんね、引きとめて」
「いえいえ。会えてよかったです。じゃ、また」
軽く頭を下げて、春さんから離れて教室へと急ぐ。
ほんと学校で会うの、久しぶりだったかも。
四年生になると、学校あんまり来なくても良くて、就職活動とか卒論とかが忙しくなるって聞いてるけど……。
今みたいに何時間も、友達と授業受けて、皆と過ごすっていうのも、なくなっちゃうんだなあ。
そう考えると、就職活動とか、三年位から話に出るだろうし。
大学生活って意外と短いのかも。
こんな風に毎日大学来て、会いたければすぐ会える、この環境って。
今だけかなあ。
仕事始めたらそうはいかないもんね。んー……。
そう考えると、貴重な残り、二年と半分。
教職はとるから、教育実習は行くし。免許取るし。あと、何だろう。大きいこと。
今年の夏は、玲央達のライブについてくから、それと、教習所で夏は終わりかな。引っ越しもするかも……?
そんなことを考えながら、時間ギリギリ教室に滑りこむと、さっき先に行った皆と目が合った。近くの開いてる席に座ると、「さっきの人誰?」と聞かれた。
「マンションの隣の人。四年生だよ」
「ああ、道理で。先輩ぽかった」
「仲いいんだ~。色々分けあったり。ご飯一緒に食べたりしてて」
「へー?」
「え、マンションが隣ってだけの人と?」
なんだか驚かれて、首をかしげてしまう。
「え? あ、うん。そうだよ」
「なんかすごいよな、優月」
「ん? 何で?」
「隣の人と、なかなかご飯食べようなんてならないと思って」
「でも同じ大学だから余計仲良くなったんだと思う。最初、色々学校のこと聞いてたし」
「同じ大学なんて、何千人も居るからね~優月」
「そうだよ、ヤバい奴だったらこわいじゃん。気を付けないと」
「うーん……でもイイ人だよ?」
「結果論でしょ。変な人だったかもしれないじゃん」
「あんまり知らない人についてっちゃだめだよ」
「えー……知らない人っていっても……」
「優月、彼氏に聞いてみな? 心配すると思うよ?」
彼氏、のところだけこそっと言う友達に、頷きながらも。
「……うーん……」
そうかなあ。玲央心配するかな。
そういえば、思えば今までも、よく知らない人についてっちゃダメとか、言われて生きてきたような。ていうかそんなことしないよ、オレそんな、知らない人について行かないし。と、言いながらきたんだけれど。
確かに、春さんのことは挨拶に行った時、同じ大学だーっていって、喜んじゃったような。
イイ人だったから、良かったってことなのかな。
そうか。部屋にあげちゃうとか、ほんとはだめなのか。
んー。なんか。昔から、近所とかでもそんな感じで生きてきちゃったもんね……。商店街も馴染みの人ばっかりで。
さすがに、玲央の家に勝手に誰か上げたりはしないけど。
……それと同じ感じで、自分のとこもだめなのかな。
「なんか難しいねぇ……」
考えながら、うーん、と唸りながらそう言ったら、周りの皆は、オレをパッと見て、それから。
「そのままでいいぞって言ってやりたいんだけど」
「ちょっと気を付けて」
「彼氏によろしく伝えといて」
「え、何を?」
「ここらへんの話一通り」
一人が言うと、皆が、うんうん頷くので。
オレは、一応、うん、と頷いた。
玲央に一通り話して、何になるんだろ。
ていうか。
さっきも渋滞作りそうとか言われたし、これも彼氏に伝えといてとかさ。
皆の中のオレって……。
相変わらず、心配されてしまう傾向にはある気はするのだけど。
おかしいな、オレ、一応ちゃんと、無事生きてきてると思うんだけど。
すぐ教授が入ってきたので考えるのはやめて、授業に集中することにした。
……ま、いっか。
あとで、玲央に、全部一緒に聞いてみよっと。
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