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◇同居までのetc

「可愛いだろ」*玲央

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「今日はお昼、クロのところに行ってくるね」

 別れ間際、正門でそう言われて、即「オレも行く」と言って、約束して、昼を待っていたのだけれど。
 一限が終わって外を見ると、雨が降ってきていた。
 昼くらいまではもつかと思ったんだけどな、と思いながら、仕方なくスマホを取り出した。

『優月、雨だから行かないよな?』

 少し返事を待っていると、『うん、行けない。残念』という言葉の最後に、うさぎが泣いてる絵文字がくっついてる。

 ハムスターも似てるけど、うさぎも似てるな……。
 ふ、と口元が勝手に綻ぶのを感じながら、返信。

『昼、一緒に食べる?』
 そう入れかけて、送信ボタンを押すのを躊躇う。
 朝も帰ってからも一緒なのに、昼、友達と食べるのまで奪ったら良くないよな、そう思って、文字を削除した。

『晴れてる日、行こうな』 そう入れると、優月からは、『うん』とニコニコのハムスターのスタンプが送られてきた。
 ……かわい。

「……きもい」

 隣から、ものすごく低い声が聞こえてきた。

「うるさい、稔」
「だってキモい……どうせ相手は優月なんだろー?」
「……あたりだけど。ンだよ?」

 最近恒例と言うか、そんなやり取りだなと思いながら稔を眺める。

「だってさー、あの、クールイケメンで、超絶塩対応がカッコいいとか言われてた玲央がだよ?」
「……最後の方のは知らねえな」
「一人のほわほわな奴とのやりとりで、デレデレとスマホ眺めて笑ってるとかさぁ、キモイ以外の何物でもないだろ」

 はーやれやれ、とおおげさに首を振ってる。
 ……まあ。
 稔からしたら、良く分かんねえのは、分かるすぎるくらいに分かるのだけれど。

「つか、そろそろ慣れろよ。もう最近ずっとこんな会話してねえ?」
「まあ、慣れてはきたよ? 慣れてはきたんだけど……やっぱ、デレデレの玲央はキモイと、オレの本能が言ってる」
「何が本能だよ……」

 呆れて稔を見て、苦笑い。

「そういえば朝、オレ、優月に会ったんだよね」
「あぁ、そうなのか」
「今日も玲央と一緒だったのって聞いたら、うんって、すげー純粋な感じで、ニコニコするからさぁ。ついつい、聞きたくなってさ」
「何を?」
「毎日玲央の相手って疲れない?って」
「は?」
「もちろんオレ、そーいう意味で聞いたんだけど」
「お前……」

 なにしてんだよ、と眉を寄せてると。

「毎日すごく楽しいよ~、だって」
「――――……」

「全然意味通じてなくて、楽しいよーてニコニコされちゃってさぁ」

 稔がめちゃくちゃ苦笑いを浮かべている。

「なんかもう、あ、それは良かったな、て言っちゃったんですけど、オレ」
「――――……」

 ぷ、と思わず吹き出してしまった。

「だめだ、アレ。毒気抜かれるな」

 クッと笑いながら、口元、手で押さえる。

「――死ぬほど、可愛いだろ」

 ニヤニヤしながら言ってやると、隣で稔は、はーー?!としかめっ面。

 言葉の意味とか何にも気づかず、今もきっと、楽しそうなんだろうなあと思うと、目の前の稔の表情との対比で、ふ、とまた笑いがこみあげてしまう。






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