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◇同居までのetc

番外編【2023年ver 七夕🎋】

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一話だけ本編外れます。
【2023年ver 七夕🎋】
◇ ◇ ◇ ◇

 夕飯を食べ終わって、片づけを終えた時。玲央が、あ、そうだ、と笑い出した。

「ん?」
「待ってて」
 クスクス笑いながら、部屋を出て行った玲央が、何かを持って戻ってきた。

「あ、七夕飾り」
 こないだスーパーで買い物をしてた時、入り口でくじ引きをしてて、当たったんだった。

「優月、作るって言ってたよな? ギリギリだけど」
「オレすっかり忘れてた」
 そう言うと、玲央はちょっと苦笑い。

「今カレンダーで七夕って見て思い出した」
 テーブルで、七夕飾りのセットを袋から引き出す。作り物だけど笹もどきも入ってて、色んな折り紙や短冊や一通りが揃っていた。ノリとはさみとテープを持って、二人で並んで座った。

「これ何すればいいんだ?」
 玲央はひらひらと色紙を摘まみ上げながら、そんな風に聞いてくる。なんかすっごく可愛い気がしてしてまう。

「んーと……まず、これ輪っかにしよ」
 細長い色紙とノリを輪っかで繋げて見せると、玲央も同じように、繋げ始める。

「……これ作るの、小学生以来かも……」
 玲央の笑いを含んだ声に、オレも、ふふ、と笑ってしまう。

「玲央が毎年作ってたらびっくりしちゃう……」
「だよな……」
「オレは、家出るまでは、一樹と樹里としてたから」
 玲央が、ふ、と微笑む。

「三人で作ってンの、可愛いな」
 聞きながら、玲央が今作ってるのも可愛いです。なんて思うけど、それは内緒。だって、このまま見ていたいから。

「この三角は?」
「これは三角を重ねて糊付けしてくの」
「OK、オレこれやる。優月は、そっちやって」
「?……あ、これ?」
 ちょっと難しそうな、漁網をイメージした、綱飾りの作り方をさして、玲央が笑う。

「オレそういうの無理」
「任せて」
「任せる」

 玲央にも苦手なもの、あるんだ。できないんじゃなくて、やれば出来そうだけど。無理とか言ってるの、ますます可愛いよう。何だかホクホクしながら、オレは色紙に切り込みを入れていく。最後まで切り込みを入れてから、玲央に、その紙を渡した。

「ん?」
「それ、そーっと縦に引っ張ってみて? 網が綺麗に広がるから」
「……」
 そー、と玲央が網を広げて、ちょっと驚いたみたいな、笑顔。

「綺麗だな。優月、さすがって感じ……」
「ありがと」
「次は?」
「んー……星、一緒に折る?」
「折れるかな?」
「うん。折れると思う」
 黄色と青の折り紙を持って、一から一緒に折っていく。オレが先に折って、玲央も真似して折る。……玲央の指、綺麗。なんか、折り紙を折っている手に、じっと、見惚れてしまう。

「そしたら、こっち」
「ん」
 なんか妙に真剣な玲央と、しばらく折り紙タイム。……勇紀たちが見たら、何て言うだろう。数分後、綺麗な折り紙の星が二つ、出来上がった。

「玲央上手」
「そう?」
 うんうん頷くと、玲央、ちょっと嬉しそうで、余計可愛い。

「今日天気悪いよね。会えるのかなー、彦星と織姫」
「一年越しのデートなんだっけ?」
「うん。そだよね」
 作った飾りを笹に飾りながら、そんな風に話していると。

「一年も待てないよな」
「ん?」
「年に一度のデートなんて、無理だよな?」
 玲央の言葉に、オレはウンウンと頷いた。

「どうする? 一年に一回しか会えなくなったら」
「え。どうするって……一回しか会えないの確定?」
「確定」
 玲央の質問に、真剣に考えてしまう。

「えー……さみしい、よね」
 しょんぼりした気持ちになってきてしまって、んー、と首をかしげていると、玲央が瞳を緩めて、その手で頬に触れてくれた。

「つか、冗談。何があっても側に居るから、んな顔すンな」
 クスクス笑いながら、玲央が言う。

「うん、オレも。どーにかして会いにいくね」
「ん。つか、そもそもんなこと無いから。そんな真剣にしょんぼりすると思わなかった」
 クッと笑いながら、優しい顔でオレを見て、ちゅと頬にキスしてくれる。

「なんて書く? 短冊」
 差し出された短冊。んー、と考える。ずっとそばに居たいなぁ。と思うけど。

「玲央は?」
「んー……考える」
「じゃオレも」

 玲央は肘をついて顎をのせて、真剣に考えてる。玲央ってこういうの、一生懸命やってくれるんだなあと思うと。やっぱり可愛い。いつもカッコよすぎるから、ギャップがすごくて。……可愛すぎるなぁ。

『ずっと仲良しでいられますように』
 迷った末そう書いた。玲央も、何かを書いてる。

「何書いた?」
 聞かれて見せると「いられるよ」と玲央が笑う。「玲央は?」と、覗き込むと。

『優月がずっと笑顔で居られますように』

 え。と、ちょっと固まる。

「オレのことなの?」
「だめなのか?」
「自分のお願い事を、書くんだよ?」
 クスクス笑ってしまうと、玲央は、オレを見て。

「優月が笑顔ならオレも幸せだと思うから、これでイイよ」
「――」

 ……なんだかなもう、果てしなくきゅんきゅんするんですが。

「ずっと仲良しって、すげー可愛いなー」
 玲央がオレのを改めて見て、ふ、と笑ってる。

「まあどっちの願いも、オレ達で叶えるから大丈夫だけど」
「……飾らないの?」
 玲央を見上げると。玲央は、ん?と考えてから「飾ろっか?」と笑う。

「うん。飾ろう」
 クスクス笑ってそう答える。糸を通して短冊をかけてから、笹をベランダの柱にくくりつけた。

「なんか……優月と作るの、楽しかったかも」
 その言葉に玲央を見上げると、玲央は、本当に楽し気に、微笑んでて。

「優月――?」

 なんかずーっと可愛かったなぁと思いながら、玲央にキスした。離れて見上げると、玲央が、またキラキラした顔で、嬉しそうに笑ってくれる。

 ああ、もう大好き。

 玲央から触れてくる唇。目の端に、七夕飾りが映る。閉じる瞬間、並んで揺れてる短冊が見えた。 







終わり🎋

◇ ◇ ◇ ◇

(2023/7/15)
おしらせ❤

今日ひとつ新作を完結まで投稿中です。
期間限定で7月末まで公開してますので、よかったら♡

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