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◇同居までのetc

「ちゅって」*優月

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 家に帰ってきて、一緒にシャワーを浴びた。
 お互いドライヤーを掛け合って、全部完了。玲央がドライヤーをしまいながら、あ、とオレの顔を見た。

「明日優月んち行くだろ?」
「あ、ほんとに行くの?」
「行く。アルバム見たい」

 そんな風に言って笑う玲央に、オレは微笑んでしまう。

「オレ普通だと思うけど」
「めちゃくちゃ可愛かったけど? つるつるしてるのも、最高可愛い」
「つるつる……」
「顔もすげー可愛いよなー……天使に見えてたんじゃないのか、お母さんたち」
「んー……玲央の目ってどうなってるのかなー」

 ふざけて言ってクスクス笑うと。玲央が少しだけ黙った後。

「優月だと思うと全部可愛いのかも」
「――――」

 ……言葉に詰まるしかないのだけど。そう思いながら、玲央を見上げると。
 ん?とオレを見つめてくるお風呂あがりの玲央は、髪もふわふわで。玲央こそ、いつもよりちょっと可愛く見える。

「…………」

 そーと玲央に近づいて、玲央の腰辺りの服をきゅと握りしめたまま、見上げる。そのまま、ゆっくり顔を近づけて、微笑んでる唇に、ちゅ、とキスをした。

「お風呂上り、ちょっと可愛い……」
「は?」

 玲央は苦笑。可愛いっていやなのかな。
 でも、アクセサリーとかもついてなくて、髪も乾かしたまま少し乱れてほわほわしてて……どうしても、可愛く見えちゃう。

「可愛いって、言われたこと、ない?」
「……無いな」

 また苦笑。

「……嫌だったりする?」
 じっと見上げると、玲央はまっすぐオレを見つめて、それから、ふ、と笑んだ。

「オレに可愛いって言ってる優月が可愛いから、許す」
「ん?」

 どういうこと?
 はて?と首をかしげていると、玲央は、ぷ、と笑った。

「優月限定で、いいよ」
「……うん。ありがと」

 良く分からないけど、玲央が楽しそうなのでよしとしよう。

「何飲む、優月」
「ん、今は麦茶いれる」
「コーヒーとかは?」
「さっきも飲んだし、今いいや」
「了解」

 二人でリビングに向かいながら、そんなやり取り。
 カウンターのところでオレがコップを出して、玲央が麦茶を注ぐ。
 隣で、麦茶を飲んだ玲央を何気なく見たら。
 麦茶で濡れた唇が、綺麗に見えて。なんだか、どき、とする。

「玲央玲央」
「ん?」
「……ちゅってしたい」
「――――……」

 なんかその濡れた唇に、触れたい。
 そう思って言ったら、目の前の玲央がちょっと固まった。あれ?と思った次の瞬間。
 腕を引かれて、抱き込まれて、深く深くキスされた。

「んん……っ」


 ち、違うー、こんなんじゃなくて、ちゅ、て……。
 しかもオレから……。

 そう思うんだけど、急に深すぎる玲央のキスに、ただなすがまま。

 


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