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◇同居までのetc

「ピアノを弾く」*優月

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 少し話してから演奏が始まった。
 新しい曲だから、少しで止まって、相談タイムが始まったりする。あと、歌もつかないから、楽器の演奏だけ。

 今日は玲央の歌は聞けないのかも。それはちょっと残念。とも思いつつ。
 こうして見ていられるだけで最高幸せ。って思ってしまう。

 カフェオレに口をつけながら、ぼー、と眺める。

 学校でコンテストみたいなのがあって、その後、夏に色んなとこのライブハウス回るとか言ってたなぁ。オレも連れていってくれるって。
 ……めちゃくちゃ楽しみ。
 夏休みに合宿で免許取ろうとしていたのは無しなので、もう学校通いながらいける時に行けるやつで取ろうっと。土日メインで取れるやつがいいかなぁ……。でも土日ずっとそれだと玲央と居られなくなっちゃうけど……。うーん。少し予定考えながらだなぁ。免許は学生の間に取っておきたいし。

 いつか玲央を乗せて、車運転してみたいなぁ。 
 なんて思っていたら、「優月」と玲央に呼ばれた。

「今から二パターン弾くから、どっちがいいか聞かせて」
「え、オレで良いの?」
「うん。参考に」

 皆もこっちを見てる。玲央の言葉に頷くと、玲央が「まず一つ目な」と言って、皆の演奏が始まる。
 それから、「次なー」と言って、また同じ部分の演奏。

「二つめの方が好き」
 そう言うと、玲央と皆は顔を見合わせて、ニッと笑った。

「じゃあそれでいいや。サンキューな」
 言いながら、玲央達が楽譜に何か書きこんでる。
 今ので良かったのかなと思いながら、なんとなく皆を眺める。

 甲斐のおばさんの会社と言っても、ちゃんとしたところでデビューしてるから、仕事でもある訳で。メジャーデビューするとかは決まってないとは言ってたけど。絶対人気でると思うんだけどなあ。だって、皆カッコいいし。……特に歌うたってる人がめちゃくちゃカッコいいからなぁ。ふふ。
 こんなところで、こんな風に、好きな人がバンドしてるの見てるとか不思議すぎるんだけど……幸せだなあ。

 もうなんか、今の気分を言葉にしたら、ただ、ホクホクとか、ホカホカ、って感じ。

 色々決めながら弾く感じなので、一曲全部聞ける訳じゃないけど、止まって直す度にまた少し違う感じになっていく様が、すごく楽しい。

 いいな、皆、楽しそう。
 見ているこっちまで、ほんと幸せ。

 幸せ時間を過ごしていると、皆が一旦休憩で、オレの方に歩いてきた。

「暇じゃね? 優月」

 甲斐がそんな風に聞いてくる。

「暇じゃないよー楽しいよ」
「でも曲としてまだ弾けてねえし。止まってばっかりだしさ」
「それも楽しい」

 そう言うと、そっか、と笑いながら飲み物を口にする。

 近づいてきた玲央がオレの隣に立って、ペットボトルの蓋をしめながら、ふと言った。

「そういや優月も作曲とか出来る?」
「え。無理だよ」

 玲央の言葉にフルフル首を振ってると、ソファに腰かけてた颯也が玲央を見上げる。
 
「優月って、何かの楽器弾けるってこと?」

 玲央からオレに視線を移しながら、そう聞かれて、「ピアノは弾けるけど、曲作るとか、したことないし」と答える。

「ピアノ弾けるんだ。へー。なんかちょっと意外かも」

 颯也がそう言って、笑う。

「何で意外なんだよ」
 と、玲央が反応するけど。「よく言われる」とオレ。

「弾けなそうに見えるみたいだよね。合唱コンクールで弾くってなった時、皆が、優月弾けんの?って、びっくりしてた」

 あははー、と笑うと、玲央がなんかなんとも言えない顔をして、もーお前は……と言いながら、なんだか頭をヨシヨシしてくる。

「マジで可愛いな」

 ぷに、と頬をつままれて言われるけど周りの皆が苦笑いなので、オレもほんとに苦笑い。

「優月、おいで」
 玲央に手を引かれて、楽器の方に連れていかれる。

「颯也、キーボード借りる」
「んー」

 玲央と並んで、キーボードの前に座る。

「弾くの?」
「ん。こないだの楽譜なくても弾ける?」
「ん、たぶん」

 頷くと、玲央が、ふ、と優しく微笑む。
 
 


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