658 / 838
◇同居までのetc
「ピアノを弾く」*優月
しおりを挟む少し話してから演奏が始まった。
新しい曲だから、少しで止まって、相談タイムが始まったりする。あと、歌もつかないから、楽器の演奏だけ。
今日は玲央の歌は聞けないのかも。それはちょっと残念。とも思いつつ。
こうして見ていられるだけで最高幸せ。って思ってしまう。
カフェオレに口をつけながら、ぼー、と眺める。
学校でコンテストみたいなのがあって、その後、夏に色んなとこのライブハウス回るとか言ってたなぁ。オレも連れていってくれるって。
……めちゃくちゃ楽しみ。
夏休みに合宿で免許取ろうとしていたのは無しなので、もう学校通いながらいける時に行けるやつで取ろうっと。土日メインで取れるやつがいいかなぁ……。でも土日ずっとそれだと玲央と居られなくなっちゃうけど……。うーん。少し予定考えながらだなぁ。免許は学生の間に取っておきたいし。
いつか玲央を乗せて、車運転してみたいなぁ。
なんて思っていたら、「優月」と玲央に呼ばれた。
「今から二パターン弾くから、どっちがいいか聞かせて」
「え、オレで良いの?」
「うん。参考に」
皆もこっちを見てる。玲央の言葉に頷くと、玲央が「まず一つ目な」と言って、皆の演奏が始まる。
それから、「次なー」と言って、また同じ部分の演奏。
「二つめの方が好き」
そう言うと、玲央と皆は顔を見合わせて、ニッと笑った。
「じゃあそれでいいや。サンキューな」
言いながら、玲央達が楽譜に何か書きこんでる。
今ので良かったのかなと思いながら、なんとなく皆を眺める。
甲斐のおばさんの会社と言っても、ちゃんとしたところでデビューしてるから、仕事でもある訳で。メジャーデビューするとかは決まってないとは言ってたけど。絶対人気でると思うんだけどなあ。だって、皆カッコいいし。……特に歌うたってる人がめちゃくちゃカッコいいからなぁ。ふふ。
こんなところで、こんな風に、好きな人がバンドしてるの見てるとか不思議すぎるんだけど……幸せだなあ。
もうなんか、今の気分を言葉にしたら、ただ、ホクホクとか、ホカホカ、って感じ。
色々決めながら弾く感じなので、一曲全部聞ける訳じゃないけど、止まって直す度にまた少し違う感じになっていく様が、すごく楽しい。
いいな、皆、楽しそう。
見ているこっちまで、ほんと幸せ。
幸せ時間を過ごしていると、皆が一旦休憩で、オレの方に歩いてきた。
「暇じゃね? 優月」
甲斐がそんな風に聞いてくる。
「暇じゃないよー楽しいよ」
「でも曲としてまだ弾けてねえし。止まってばっかりだしさ」
「それも楽しい」
そう言うと、そっか、と笑いながら飲み物を口にする。
近づいてきた玲央がオレの隣に立って、ペットボトルの蓋をしめながら、ふと言った。
「そういや優月も作曲とか出来る?」
「え。無理だよ」
玲央の言葉にフルフル首を振ってると、ソファに腰かけてた颯也が玲央を見上げる。
「優月って、何かの楽器弾けるってこと?」
玲央からオレに視線を移しながら、そう聞かれて、「ピアノは弾けるけど、曲作るとか、したことないし」と答える。
「ピアノ弾けるんだ。へー。なんかちょっと意外かも」
颯也がそう言って、笑う。
「何で意外なんだよ」
と、玲央が反応するけど。「よく言われる」とオレ。
「弾けなそうに見えるみたいだよね。合唱コンクールで弾くってなった時、皆が、優月弾けんの?って、びっくりしてた」
あははー、と笑うと、玲央がなんかなんとも言えない顔をして、もーお前は……と言いながら、なんだか頭をヨシヨシしてくる。
「マジで可愛いな」
ぷに、と頬をつままれて言われるけど周りの皆が苦笑いなので、オレもほんとに苦笑い。
「優月、おいで」
玲央に手を引かれて、楽器の方に連れていかれる。
「颯也、キーボード借りる」
「んー」
玲央と並んで、キーボードの前に座る。
「弾くの?」
「ん。こないだの楽譜なくても弾ける?」
「ん、たぶん」
頷くと、玲央が、ふ、と優しく微笑む。
261
お気に入りに追加
5,432
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-
悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。
拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。
逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。
兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる