上 下
655 / 798
◇同居までのetc

「怒られる??」*優月

しおりを挟む

「早くいこ」
 そう言ってオレを振り返りながら差し出された玲央の手。
 そっと触れると、ぎゅと、繋がれる。

 安心する。手をつなぐと。
 玲央の手、あったかい。

「何、話してきた?」
「んー。玲央のこと」
「どんな?」
「いっぱい。ほんとに色々、玲央のこと」
「例えば?」
「んー……とにかくいっぱい玲央のこと」

 ほんとに玲央のことばかり話してたような気がするなーと思いながら笑うと、なんだそれ、と玲央も笑う。
 幸せ気分で歩き出しながら、智也と美咲と話していたことを、のんびり話していく。

「ふーん……じゃあ、智也も少しは心配してたんだな」
「そうみたい」
「今日話してきて、安心したって言われたなら、良かったな」
「うん」
「……にしてもさ。なんかあれだなー?」

 玲央はクスクス笑いながら、オレを見下ろす。

「優月のまわりにはさ」
「うん?」
「……オレが優月を大事にしないと、めちゃくちゃ怒りそうな人達が、たくさんいるよな?」
「……んー。そう?」
「そんな気がする」
「でも、それ言ったら、玲央も……」
「オレとは違うんだよなー」
「そう……?」

 玲央の言葉の意味を考えながら、玲央を見上げると。
 玲央は、分かんない?と聞いてくるので、うん、と頷く。

「とりあえず、蒼さんにはめちゃくちゃ怒られそうだし」
「蒼くん? そうかなぁ、別に怒んないと思うけど……」
「智也と美咲も。……特に、美咲。すげー怒りそう」
「あ。美咲は……そうかも?」

 何だか今想像がついた。クスクス笑ってしまう。

「一樹と樹里も絶対怒りそう」
「えー怒るかなあ……」
「怒るよ、絶対。ゆづ兄いじめるなー、みたいに」
「……あはは。想像すると可愛い」

「多分お母さんは怒りはしない気がするけど」
「あー……そうかも」

「多分、久先生はオレに直接は言わないけど、心の中で怒ってそう。で、じーちゃんに伝わって、じーちゃんからオレにくるかな」
「何それ。どんな想像……」

 玲央、へんなこと言ってるーと見上げると、玲央は苦笑。

「冗談じゃないんだけどなー?」
「え、冗談じゃないの?」

「例えば、オレが浮気して、優月泣かしてみ? ……まず勇紀に蹴られるだろうし」
「蹴るかな??」
「絶対だと思うけど。稔もセットで来そうだし」
「そう??」
「絶対そー」

「……でも、たとえば、じゃあオレが浮気したとしたらさ。きっと皆、怒るんじゃないのかな、何してんだって」
 オレが言うと、玲央は、少しの間考えて、いや、と首を振る。

「その時はきっと、優月に浮気させるようなオレが悪いって、怒られる気がする」
「えええ? ……それで玲央を怒ったりしないと思うんだけど……」
「いーや、絶対オレが文句言われる」

 何だか面白そうに笑いながら、玲央はオレを見つめる。

「まあ最後のは冗談半分だけど……でもなんかありそうってくらいにさ」
「ありそう、かなぁ?」
「そう思うくらい、優月のこと、大事にしてる奴が多いなーて思うんだよね」
「どうかな……うーん……?」

 首を傾げながら玲央を見上げて、なんだか可笑しくてクスクス笑ってると。

「まあでも」
「ん?」

「オレが一番、大事にするから、今のは絶対ありえない想像なんだけど」

「――――……」


 急にそんなことを言いながら、手をぎゅ、と握ったりしてくれちゃうので。
 ちょっと呆けて、玲央を見つめてしまう。
 



 




(2023/6/13)



ふと、
読者さまも玲央に怒るかな…とか思ったり(´∀`*)ウフフ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

BL / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:1,952

【完結】 いいえ、あなたを愛した私が悪いのです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1,962

下級巫女、行き遅れたら能力上がって聖女並みになりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,888pt お気に入り:5,692

ピッツァに嘘はない! 改訂版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:867

【R18】人の好みは説明できない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:92

凍てついた薔薇は恋に溶かされる

BL / 完結 24h.ポイント:823pt お気に入り:783

帰れなくてもいっか

BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:31

処理中です...