646 / 825
◇同居までのetc
「色んな玲央」*優月
しおりを挟む実家であったことや、樹里と一樹にBLとか言われたことも話してる間、二人は面白そうに聞いててくれた。
「んー、なんかもうほぼ公認、みたいな感じ?」
「んー……まだ父さんには会ってないけどね」
「おじさん優しいし。絶対反対しないでしょ」
「どうだろうね。言ってみないと」
「神月の方には行かないの?」
「もう少ししばらく付き合った期間を置いてから行こうって玲央が言ってたよ」
「……信用無いのね」
美咲が苦笑い。
「あ、でもね、玲央のおじいちゃんのところには行くんだけど」
「そうなの? おじいちゃん? 何で?」
「……うーん、えーと……絵の久先生のお友達だったの。偶然会って……玲央のおじいちゃんだって分かって……で、もう、なんか、バレちゃって、それで今度お家に行くことになってるんだ」
すると、智也が「なんかすごいことになってるね。縁があるんだろうな」と、クスクス笑った。
「最初にキスされたーって言って、美咲が超怒ってから、まだそんなに経ってないんだけどな。進展早い。まあ、あれだよな」
「ん?」
「玲央が優月のこと、大好きそうだもんな」
そう言って笑う智也を見て、美咲が首を傾げる。
「そういえば、いつの間に智也は、玲央って呼んでるの?」
「ん? あぁ……ほら、玲央の仲間と優月と、一緒に夕飯行ったって話しただろ?」
「あ、言ってたね」
「そん時。名前で良いって」
「ふーん。そうなんだ、仲良くなったの?」
「まあもともと学部一緒だし。……多分、優月の仲良し、てことで、仲良くしようって感じなんじゃないかな。これから関わるって思ってるんじゃない?」
「そっかー」
美咲が「あ、はいはい、どんどん食べて」と笑いながらお肉をのせてくる。
「わー、ありがと」
お肉を頬張る。
「おいしー」
幸せ。なんて思っていると、美咲がクスクス笑った。
「なんかさ。のどかなのは変わってないのに、神月と居るのよねぇ、優月」
「……どういう意味?」
「タイプ違うように見えるから。……神月と居て、楽? 無理してない?」
「……んー……と。無理は、してない」
言いながら、いつもの優しい玲央を思い出すと、ふ、と顔が綻んでしまう。
「……オレ、大丈夫だよ、美咲」
そう言うと、美咲も微笑んで、「もう最初の頃よりは心配はしてないんだけどね」と言いながら、ふーと息をつく。
「学校で会った時も、心配してないよ、とか言ったのに……なんかどうしても心配しちゃうのかも」
美咲が苦笑いを浮かべる。
オレは、智也となんとなく視線を合わせて、クスッと笑ってしまった。
「……オレだって、美咲や智也が付き合う人、いい人だといいなーって思うし、色んな噂とか聞いたら心配するもん。だから、分かるよ。同じ、でしょ?」
そう言うと、美咲はオレを見つめて、それから、ふふ、と笑う。
「そうだね。同じだね」
うん、と美咲が頷くので、オレも「ん」と頷いた。
「でも……今、オレの前に居る玲央は、噂に居る玲央とは、違うと思う」
考えながら言ったセリフに、二人はオレの顔を見て、ふうん?と笑う。
「モテるのはそうだと思うし。……今まで、自由だったのは、そうだと思うけど……玲央がモテたのは、カッコいいからが一番じゃなくて、優しいからだと思う」
「――――……」
「……今、一緒に居て、優しいんだよ。すごく」
思い浮かべて、優しい玲央しか浮かばない。
「稔とか勇紀にはめちゃくちゃツッコミ入れてるけどなー?」
智也がクスクス笑うけど。
「それは絶対お互い楽しんでるからいいんだよ」
「まあそーだな」
「……ていうか、そういう玲央も、なんかカッコイイし。色んな玲央が、全部」
ついつい、玲央を思い浮かべて話していたら、ふふ、と微笑みながら、全部大好き、とか言ってしまいそうになって。さすがにちょっと恥ずかしいかなと思って、口をつぐむと。
ちょっと黙ってた二人が、顔を見合わせてから、息をついた。
「そこまで言ったら最後まで言ったら?」
「そうよ。中途半端。もうその後、続く言葉なんて、黙ったって、バレバレだしね」
う。
……ニヤニヤ笑われて、かなり、恥ずかしい。
なんかオレ、調子に乗って、言いすぎた……。
148
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる