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◇同居までのetc

「警戒心?」*優月

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「優月」
「ん」

 玲央が何かを持って、オレの口の前に出してくる。自然と口を開けて、口に入れて、噛むと、口の中に甘い味。

「おいしー」
 サラダに乗っかってたミニトマト、だったみたい。

「甘いね、これ」
「な。オレんとこ二個入ってた」

 サラダはお皿に適当に分けちゃったから、オレのにはミニトマト乗ってなかったみたいで。だからくれたんだなーと思いながら、ありがと、と笑うと、玲央も、ふ、と瞳をやわらげる。

「優月、好きなの? ミニトマト」
「うん。好きだよ」

 勇紀に聞かれて、頷くと、ふーん、と笑われる。
 あーんて、食べさせられたからかな? そう思ったら、甲斐がクスクス笑った。

「今、優月って、玲央が何持ってるか見てから口あけた?」
「え? あ、見てない。何だろ、と思いながら食べたけど……?」
「――――……」

 面白そうに見られて、ん?と聞くと、甲斐はなんだか苦笑い。
 勇紀はオレ越しに玲央を見ると「これは可愛いねー」とか言ってる。玲央はチラッと勇紀を見て、なんだか少し笑ってるから、「これ」の意味が分かったみたいだけど。

「なに??」

 甲斐と勇紀と玲央を順番に見ながら聞くと、向かい側で颯也が「分かんねーの、優月?」と聞いてくる。

「うん」
 
 この感じだと、皆が分かっていそうな感じだけど。
 え、何のことだろう、と、誰かが何かを言ってくれるのを待っていると。

「普通は、何もってるか分かんないと口開けないよなってことだろ?」

 颯也が甲斐にそう言って、クスクス笑う。

「そう。玲央のこと、もう無条件に信じてるみたいな」

 甲斐も笑いながら言うと、勇紀が「だからこれは、玲央、可愛いだろうなぁと思ったんだよね」と続ける。

 そう言われてみたら、そうかもしれないけど。

 玲央がオレに食べさせてくれるものは、全部美味しいものなんじゃないかと、思ってる……かもしれない。……ていうか、かもしれないじゃなくて、もう、思ってるけど……。

「…………」

 言葉に詰まって、もぐもぐ食べながら無言。
 ……んー。

「あれ? 優月?」

 ちょっと斜め前のテーブルのマグカップ辺りをただ、じーと見つめながら無心……になろうとしたんだけど、勇紀に呼ばれて、ちょっとのぞきこまれて。

 もう無理だ……。

「……なんかオレ、恥ずかしいんだけど……」

 額を抑えて、んー、と唸ったオレを、ぷ、と笑った玲央が覗き込んできた。

「また赤いし……」

 クスクス笑う玲央がよしよし、と撫でてくるけど、その言葉にますます恥ずかしくなる。

「……そうだよね、普通は何食べるかちゃんと見るよね」

 考えるほどに、そんな気がしてきた。
 なんかオレ、警戒心、ほんの少しも無いのでは……。

「何も警戒しないで口開けんの、すげー可愛いから、そのまんまでいーけど」
「――――……」

 正直、ちょっとオレ、警戒心みたいなのなさすぎな感じがして、恥ずかしすぎるとちょっと反省モードだったのだけれど。玲央のその言葉で、はた、と玲央を見つめる。

「え、いいの?」
「良いに決まってるし」

「…………」

 ……ちょっと恥ずかしいのは否めないけど。
 でも玲央が良いって言ってくれてるなら……いっか。

「……いいみたい」

 勇紀の方を見て、そう言ったら、勇紀は一瞬きょとんとしてから、あは、と笑い出した。

「悪いなんて言ってないよ」

 クックッ、と笑いながら、勇紀がぽんぽんと背中を叩いてくる。
 颯也と甲斐も笑ってるし。

 ……そういえば、オレ、何でだか、食べる?とかで食べさせてもらうことが今までも多くて、食べさせられることに、あんまり抵抗はない。……けど、何を食べさせられるか分からないまま、口を開けるっていうのは、してきてない気がする。それは玲央だから、な気がする。

 だからやっはり。
 ……勇紀とかの目には、不思議に映ったんだろうな。と一人納得していると。

「つーか、玲央があーん、みたいに食べさせるとか、今までねーしな。それだけでも、目が点だけど」

 甲斐が面白そうにそう言う。「ほんとだよな」と颯也も続ける。

 …………。

 ……そっちも不思議なのか。

 じゃあ、さっき、自然と、あーんてさせに来た玲央も、自然と口開けちゃったオレも、もう全部まるごと、不思議だったってことかぁ……。

 ……よそでやらないように、気を付けようかな。うん。
 玲央にもいっとこうかな。と思ったのだけれど。隣の玲央を見ると、ん?と優しく笑われるので。

 …………やっぱり、言わなくていいやと。思ってしまった。





(2023/4/30)


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私の小説の文体、ストーリー性、会話の掛け合い、感情表現の中でどれが好きですか?という4択。結果が出ましたので、よろしければどうぞ~(★´∀`)ノ❤

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