630 / 838
◇同居までのetc
「ちがくて」*優月
しおりを挟む【side*優月】
着替えて、顔を洗ってリビングに近づくと、玲央がちょうどドアを開けて、部屋から出てきた。
「今、頼んだから。二十分位で来るって。着替えてくる」
「あ、うん」
「あいつら起こしといてくれる?」
玲央が笑いながらそう言って、親指でリビングを指した。うん、と頷いて、玲央と入れ替わりでリビングを覗くと、三つ布団が敷かれていて、なんだかもぞもぞ動いてる。多分、一応玲央が声はかけたんだろうなあと思いながら、布団に近づく。
「おはよー」
普通の声で呼びかけると、「んー」と誰かよく分からないけど、一応返事が聞こえる。昨日皆遅かったんだもんねーと、苦笑してしまう。
「起きれそう?」
そう言うと、起きる―とか、んー、とか。
そういえば皆が目覚めるとこ見るのって、初めてかも。こんな感じなんだなーとクスクス笑ってしまう。
「玲央が朝ごはん頼んでくれたって」
そう言うと、颯也がムク、と起き上がった。
「……おはよ、優月」
「おはよー」
目、あんまり開いてない。颯也はいつも割とクールな感じなので。
……なんかちょっぴり可愛く見える。
「……おはよーゆづきーー」
ゴロゴロ転がって、がばっと起き上がったのは勇紀。
朝から勇紀っぽくて、笑ってしまう。
「おはよ、目、さめた?」
「ん、さめたー」
寝起き良いんだなぁ、勇紀は。らしいかも。
甲斐は……と見ると、まだぐっすりと寝てる。
呼んで聞こえた返事は颯也と勇紀のだけだったのかな。
「前は玲央もだったけど、甲斐も結構寝起き悪いんだよ」
少しあくびをしながら、勇紀が教えてくれる。「そうそ。ほんと寝ぼけてる時あるよな……」と、颯也も眠そうに言う。
「甲斐ー起きれる?」
布団に膝をついて、ぽんぽんぽんと布団を叩く。
「あ、あんまり側に行かない方が」
「え? なん――――……」
勇紀がちょっと慌てた声に、何で、と言いかけたオレは。
グイっと引き寄せられて、え? と驚いたまま、布団に引き倒された。
「………………っっ!?」
何だか分からないけど、抱き枕みたいにされて、身動きが取れない。
「か、かい??」
「……んー……」
力が強くて、起き上がれない。
「あーあ……ちょっと待ってね、優月」
見えないけど、勇紀が助けに来てくれようとして立ち上がる雰囲気。
「なんのつもりか分かんないけど、たまにこれするんだよねー。しかも、本人は布団に引き込んだこと、大体覚えてないの」
クスクス笑いながら近づいてきてくれた時。
「優月、起こせた?」
そんな風な玲央の声が聞こえた。わ、と慌てて起き上がろうとするのだけれど。全然起き上がれない。
「……優月は?」
不思議そうな玲央の声と。
「あー……ここ」
と、バツの悪そうな勇紀の声がする。
黙って、近づいてきた玲央は。はー、とため息。
わーん、違うんだようー!
って、何が違うのかもいまいち良く分からないながら、なぜかとっさに頭の中で出た言葉はそれだった。
焦ってると、なんだか、あれよあれよと動かされて、はっと気づいた時には、玲央の腕の中に引き込まれていた。
「あ、れお……」
「大丈夫か?」
「ち、ちがくて……あの」
えっと、と玲央を見上げていると、玲央は、プッと笑い出した。
「……浮気した言い訳でもするみたいな顔すんなよ」
クスクス笑って、オレの頬に触れて。
「あーもー……可愛い……」
ちゅ、と頬にキスされて、あ、良かった、と思ってると。
勇紀が呆れたように笑いながら、甲斐の布団を掴んだ。
「ほらほら、お前のせいで、朝から激アマなキスシーン見せられてるだろー、起きろよ、甲斐―」
布団を剥がれて、無理無理起き上がらされて、甲斐はようやく目を開けた。
「……なん、だって?」
寝ぼけた声に、苦笑い。
240
お気に入りに追加
5,436
あなたにおすすめの小説


義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる