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◇同居までのetc

「心底」*玲央

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「今頃真っ赤だろうね。ってさっきも真っ赤だったけど」
 クスクス笑う勇紀。
「行ってきてあげたら? 一人で死にそうになってんじゃねえの」
「同感」
 甲斐と颯也も笑いながら言う。まあもう言われる前から、行こうと思ってたけど。
 部屋を出て、洗面所をそっと覗くと。
 左手を洗面台についてがっくりうなだれたまま、右手で持った歯ブラシで、何やら力なく歯を磨いている感じの優月が居た。つい、ふっと笑ってしまうと、びくうっと震えてこっちを見て、オレと目が合うと、ふにゃ、と顔を崩した。泣きそうというのか、とにかく困り顔。

「待ってね?」
 言って早々に歯磨きを終えると、優月は口をすすいでから、オレを見上げた。

「ごめん……寝ぼけてて……」
 オレと向き合って、俯いて、しょぼん、としている。

「何でそんな顔してんの?」
「え、だって……なんか……良く分かんないけど、なんか、やでしょ?」

 しょんぼりしてる優月が、なんだかやたら可愛い。
 なんだこれ、何でこんなに可愛い訳? 

「何が嫌だと、思ってんの?」

 顔赤いし、それを隠すみたいに少し俯いてて、でも、少しオレを見ようとはしてるから、それはどうしたって、上目遣いに見られることになる訳で……。

「……だって、皆の前で抱き付いちゃったし……」

 しょんぼりした顔でオレを見上げてくる優月は。

「優月」
「……?」

 顎に触れて、上向かせる。

「……抱き付かれて、可愛かった」
「――――……」

 そう言われるとは思っていなかったみたいで、優月は、目をぱちくりして、オレを見つめる。

「……嫌じゃなかった?」
「キス位、してくれても良かったのに」

 そう言うと、優月はまた赤くなって、無理無理、とプルプル首を振った。

「……なんか、一気に、目が覚めちゃった。ほんと、びっくりした……」
 
 オレを見上げながら、困ったように言う優月。
 引き寄せると、腕の中にすっぽりと抱き込んだ。

「……さっき皆に気づいた時、優月の背中が、ぴーんって伸びたの、分かった」

 クックッと思い出し笑いをしながらそう言うと、優月は、うー、と腕の中で唸ってる。

「だって、皆とばっちり目が合っちゃって……」
「うん」

「……す、ごい恥ずかしかった……」
「……うん」

 聞けば聞くほど可笑しくて笑ってると、優月が、むぎゅ、と抱きついてきた。

「オレ……玲央にいつも甘えちゃってるけど……」
「ん」

「それ、見られるのは、恥ずかしいね……」
「……まあ、そだな」

 ふ、と笑ってしまう。

「優月が甘えてんの可愛いから……オレ以外に見せんのは、もったいないかも……とは思う」

 思うままに言ったセリフだったのだけれど。
 言って少しした後、優月が顔を上げて、オレを見上げて。

「……もったいなくは、ないと思うんだけど……」

 と言いながら、苦笑い。


「でもなんか……ありがと、玲央」

 そのまままた、すぽ、と腕の中に戻ってくると。

「玲央、やさしい……」

 むぎゅ、としがみつかれるのも。
 ……まあ。ほんと。

 心の底から、可愛いなと、思う。
 
 
 
 

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