622 / 825
◇同居までのetc
「笑ってる?」*玲央
しおりを挟む食事の後はマンションで、実際弾きながらの曲作り。
優月からの連絡が来てから、駐車場まで迎えに行こうとしたら、勇紀が一緒に立ち上がった。
「オレも蒼さん、会いたいかも」
勇紀がそう言うと、じゃあオレらも行こうぜ、と颯也と甲斐も乗り気。皆で迎えに降りることになった。
優月と別れてからそんなに時間的には経ってない。昼から数えて数時間程度。なのに、蒼さんの車が入ってきて、窓越しに優月の顔を見た途端、ふわ、と気持ちが暖かくなった。話す前から、おかえり、という言葉が心の中で勝手に溢れたような感じで不思議な気分だった。
相変わらず少し悔しい位、大人でカッコいい感じの蒼さん。優月が何を話したのか詳しくは分からないが、三人にオレと優月のフォローを頼んだりしつつ、蒼さんは帰っていった。じいちゃんとこに蒼さんも来ると聞いて、どんな感じの集まりになるのか、楽しみになりつつ、オレの隣に立ってる優月に、改めて、おかえりと言ったら嬉しそうに笑って頷く。
……ほんと可愛い。
そう思って見つめていたら、皆が呆れたように笑って、先に歩き出したので、優月とその後を追って歩き出した。
部屋に戻って話した結果、皆が泊まっていくことに決まると、「お布団とか出すなら出しとくよ、オレ」とか優月が言う。先にシャワー浴びといで、と伝えていったん送り出したのだが、ふと、着替えを渡さないとと気づいた。
「着替え渡してくる」
立ち上がったオレに、皆がニヤニヤした視線を送ってくる。
「優月んとこ行きたいだけでしょ」
「……なことねぇし」
「まあごゆっくりー」
「いってらー」
そんな風に言って笑う三人を、なんとなくジロ、と見回してから、部屋を出て優月に呼びかける。
「優月、着替え渡す。おいで」
「あ、うん」
オレを振り返った優月が、嬉しそうに笑う。
……何で、こんなに可愛いかな。
まだまだ終わってないし泊まってくのも仕方ないとは思いつつ、今日は優月には触れられないだろうなと、やっぱり残念。
軽いキスはしながらも、仕方なく優月を離して、シャワーに送りだしてから部屋に戻ると、「あれ、意外に早い」と勇紀に言われた。
「襲ってンのかと思った」
甲斐の言葉に苦笑して、しても良かったけどな、と舌を出して睨むと、可笑しそうに笑われた。
「絶対拒否られるだろ、オレ達が居るとこで、なんて」
「……だろうな」
想像して、ぷ、と笑ってしまう。
さっき、ちょっかいだしただけでも、すげえ真っ赤になって、ぷるぷるしてたしな……。可愛かったな。と、思ってると。
「……玲央って、ほんとに優月のことが可愛いのな?」
颯也がしみじみ言ってくる。
今オレは、気持ちを口には出してないし、「何でだよ?」と聞き返すと。
「なんかよく、そう思ってんだろうなーって顔、するよな。で、なんか少し笑ってるし」
クスクス笑われて、確かに今そんなこと考えてたから、とっさに否定もできず。オレ笑ってたか?と、自分のことながら少し引く。ため息をつきつつ、ぽん、とキーボードの音を鳴らした。
「進めようぜ」
オレが言うと、皆、はいはい、と笑いながら、譜面と楽器に向かった。
(2023/4/12)
119
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる