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◇同居までのetc
「幸せな時間」*優月
しおりを挟むなんだかとっても思いつきで発してしまったセリフに、玲央が返してくれた言葉のおかげで、とってもとっても幸せ気分のオレ。
トレイにコーヒーをのせて、皆の部屋に運ぶ。
玲央がドアを開けてくれて、中に入ると、皆が振り返った。
「おそーい……」
「まあどうせイチャイチャしてたんだろうけど」
勇紀と甲斐に言われて、イチャイチャなんて……と言いながら、ローテーブルの上にコーヒーを置いた。
「してなかった?」
「う……う、ん……」
してたかも……ドキドキしながら、颯也の視線にうろたえていると。
「キスとか、してない?」
「して……」
もうそこでダメだった。
かあっと顔に血が上って、何も答えられなくなると。
ぐい、と玲央に腕を引かれた。
「いじめんな」
よしよしされて、余計に赤くなってるオレを見て、皆、はあ? と眉を寄せた。……でも、面白そうに。
「いじめてねーし」
「むしろ今もっと真っ赤だっつの」
「玲央が一番、そうさせてんじゃん」
颯也と甲斐と勇紀が立て続けにそう言うと、玲央は、オレを見下ろして、真っ赤になってると思う、頬を手で挟んだ。
「オレがして赤くなんのは、いーんだよ。な?」
よくわからないことを言ってる玲央。キラキラした瞳でまっすぐに見つめられると、なんだかなあもぅほんとに対処しきれないよう、と思いながらも、うん、と頷いてしまう。
「優月、嫌な時は嫌って言うんだよ?」
と、勇紀がオレに向かってそんな風に言う。
「嫌じゃないもんな?」
うん。
頷くと、よしよし、と撫でられる。
「なんかもう、猫可愛がりってこのことか、みたいな感じだよね……」
「玲央でこんなの見る日が来るとはな」
勇紀と甲斐が言うと、颯也は息をつきつつ、「もう大分、今更って感じ……優月コーヒー、貰うなー」とマグカップを一つ取った。
「うん、どうぞ」
頷くと、勇紀と甲斐も、頂きまーすと、コーヒーを飲み始める。
「皆、まだしばらく頑張るの?」
「ん、もう少しな。優月、コーヒー飲んだら、眠い時に寝ていいから」
「うん。分かった」
――――……とは言ったものの。
コーヒーを飲み終えても、なんとなく、皆があんまり真剣すぎるので、声を掛けれない。
おやすみ、というのもちょっとはばかられる位。
音とか歌詞とか、あれこれ言いながら、曲を作ってくんだなあ……。
皆、いつもは結構ふざけてたりしてて、冗談言って、玲央をからかったりもよくしてて。顔、すごく整った人たちではあるけど、同じ男同士だし、玲央以外は別に、容姿でときめくとかもない、のだけど。
……今こうして、見てる皆は、ほんと全員、ほんとにカッコいい。
キラキラ光ってるステージで歌ってるライブもカッコよかったけど。
真剣に音を紡いでく皆は……素敵だなあ。
ここに居させてもらえて、ほんと、すごい、幸せ。
曲は玲央が作ってたのがほぼそのままだけど、重ねてく皆の音。一度弾いて、止まって、少し話して弾きなおす。色んな作り方があるんだろうけど。ここで聴いてる間にも、どんどん、良くなってく気がして。
なんかちょっと眠くなってきたけど。
うとうとしながらも、ずっと、聴いていたくて。
Ankh……素敵だなあ……なんて、思いながら。
すっごく幸せな時間だった。
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