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◇同居までのetc
「玲央の手」*優月
しおりを挟むお湯を火にかけて、人数分のマグカップを並べると、玲央がオレの隣に並んだ。じっと見つめられて、自然と、微笑んでしまう。
「玲央、抜けてて大丈夫なの?」
「十分位抜けたって、変わんない」
「そうなんだ」
「もう行って、って言われたし」
確かに……。呆れモードだったけど、楽しそうでもあった、三人の顔を思い出すと、ちょっと可笑しい。
玲央の手が、オレの頬にかかる。
「……玲央ってさ」
「ん?」
返事をしながら、玲央が、クスクス笑い出す。オレの頬に触れてた手を、肩に触れさせて、ぽんぽんと軽く叩く。
まだ何も言ってないのに、何で笑うんだろうって、思ったら。
「優月が、玲央ってさ、ていう時って、大体なんか面白いこと言うから」
「……そうだっけ?」
「そんなイメージ……玲央ってさ王子様みたい、とかも言ったよな?」
「あー……うん、言ったかも」
そういえば、と思い出すと、オレも笑ってしまう。
「だって、そう思うんだもん……」
「まあいいけど。……で? 今は? 玲央ってさの続きは?」
「あ、うん……玲央ってさ、オレのほっぺによく触るでしょ?」
「……これ?」
肩から手を外して、オレの頬に、また手を掛けて、すりすりと撫でてくる。
「うん、それ……」
触れ方が優しくて、自然と笑みが零れてしまう。
「それ、すっごく、好き……」
「――――……」
ぴた、と玲央が止まる。
「――――……これ? 好き?」
今度は、玲央の両手が頬に掛かって、包まれるみたいに触れられる。
「うん」
そのままめちゃくちゃ近くから見つめられて、ただ瞬きしながら玲央を見つめ返す。
「……ちょっと、恥ずかしい、んだけどね」
「――――……」
「でも、好き……優しくて」
「――――……」
ぐい、と引かれて、キスされる。
こんな時だし、軽いキスかなって思ってたのだけれど。
重なってすぐに、頬に触れてた手は、片手は後頭部、片手は顎を掴んで上向かされて。いきなり深いキスに変わった。
「……んっ……ん、ん……む……?」
何か言おうとして開けた口に玲央の舌。
「ん、ぅ……っ……」
目を開けてたけど、耐えられなくなって、ぎゅ、と閉じる。
皆が来たらどうしようーと思うのだけれど。
……好きで。……離れるの、無理。
「――――……っ……」
ぎゅ、と玲央の背中につかまって、抱き付く。
しばらく、玲央の思うようにキスされて、力、入らなくなった頃。
ぴー、と静かな、お湯が沸いた音が鳴り始めた。
「――――……ふ ……」
ゆっくり、唇が離れた。
頬に触れられて、そっと、瞳を開くと、視界が涙で滲んでる。
玲央の親指が、涙をふき取る。
いつも、この流れ。
いつも泣いちゃうけど。
……いつも優しいこの指が、大好き過ぎて。
「……すっごく好き、とか言われると…………」
玲央がオレを見下ろして、クスクス笑う。
「可愛くて、我慢、無理だな……」
ちゅ、と最後にキスして、玲央はオレを離した。
ぼー--、としてるオレから離れてコンロの火を止めてる玲央を見ながら、カウンターに寄りかかる。
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