上 下
604 / 825
◇同居までのetc

「玲央の手」*優月

しおりを挟む

 
 お湯を火にかけて、人数分のマグカップを並べると、玲央がオレの隣に並んだ。じっと見つめられて、自然と、微笑んでしまう。

「玲央、抜けてて大丈夫なの?」
「十分位抜けたって、変わんない」
「そうなんだ」
「もう行って、って言われたし」

 確かに……。呆れモードだったけど、楽しそうでもあった、三人の顔を思い出すと、ちょっと可笑しい。

 玲央の手が、オレの頬にかかる。

「……玲央ってさ」
「ん?」

 返事をしながら、玲央が、クスクス笑い出す。オレの頬に触れてた手を、肩に触れさせて、ぽんぽんと軽く叩く。
 まだ何も言ってないのに、何で笑うんだろうって、思ったら。

「優月が、玲央ってさ、ていう時って、大体なんか面白いこと言うから」
「……そうだっけ?」
「そんなイメージ……玲央ってさ王子様みたい、とかも言ったよな?」
「あー……うん、言ったかも」

 そういえば、と思い出すと、オレも笑ってしまう。

「だって、そう思うんだもん……」
「まあいいけど。……で? 今は? 玲央ってさの続きは?」

「あ、うん……玲央ってさ、オレのほっぺによく触るでしょ?」
「……これ?」

 肩から手を外して、オレの頬に、また手を掛けて、すりすりと撫でてくる。

「うん、それ……」

 触れ方が優しくて、自然と笑みが零れてしまう。

「それ、すっごく、好き……」
「――――……」

 ぴた、と玲央が止まる。

「――――……これ? 好き?」

 今度は、玲央の両手が頬に掛かって、包まれるみたいに触れられる。

「うん」

 そのままめちゃくちゃ近くから見つめられて、ただ瞬きしながら玲央を見つめ返す。

「……ちょっと、恥ずかしい、んだけどね」
「――――……」

「でも、好き……優しくて」
「――――……」

 ぐい、と引かれて、キスされる。
 こんな時だし、軽いキスかなって思ってたのだけれど。

 重なってすぐに、頬に触れてた手は、片手は後頭部、片手は顎を掴んで上向かされて。いきなり深いキスに変わった。

「……んっ……ん、ん……む……?」

 何か言おうとして開けた口に玲央の舌。

「ん、ぅ……っ……」

 目を開けてたけど、耐えられなくなって、ぎゅ、と閉じる。
 皆が来たらどうしようーと思うのだけれど。
 ……好きで。……離れるの、無理。

「――――……っ……」

 ぎゅ、と玲央の背中につかまって、抱き付く。
 しばらく、玲央の思うようにキスされて、力、入らなくなった頃。

 ぴー、と静かな、お湯が沸いた音が鳴り始めた。


「――――……ふ ……」

 ゆっくり、唇が離れた。
 頬に触れられて、そっと、瞳を開くと、視界が涙で滲んでる。

 玲央の親指が、涙をふき取る。
 いつも、この流れ。

 いつも泣いちゃうけど。
 ……いつも優しいこの指が、大好き過ぎて。


「……すっごく好き、とか言われると…………」

 玲央がオレを見下ろして、クスクス笑う。


「可愛くて、我慢、無理だな……」

 ちゅ、と最後にキスして、玲央はオレを離した。
 ぼー--、としてるオレから離れてコンロの火を止めてる玲央を見ながら、カウンターに寄りかかる。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

処理中です...