上 下
602 / 825
◇同居までのetc

「もう大変…」*優月

しおりを挟む
 
「……れお」

 ぎゅ、と包まれるみたいに抱き締められて、その背中に手を回す。

「楽しかった?」
「ん? あ、うん。玲央とのことも話したよ……実家いったこととか」
「そっか」

 少し離されて、見つめ合う。玲央の手が頬に触れて、いつものように、すりすりと撫でられる。

「さっき車の窓が開いて、優月の顔見たら……」
「?」
「なんか嬉しくなった」
「――――……」

 そんな風に言って優しく笑む玲央に、なんか胸の奥が、きゅっと痛い……というのか。締め付けられるみたいな。
 さっき、窓を開けた時の玲央の笑った顔を思い出すから、余計に。

「もー……玲央……」
「ん?」

「……もう大変」
「……え? 大変?」

 きょとんとされて。
 ……なんかその顔が可愛く見えて。

「……なんか、嬉しいし。……ドキドキ、して、大変……」

 そう言うと、玲央は、ああ、と笑い出して。

「そういう意味か」
 と言いながら、オレをもう一度抱き締めた。

「かわいーな……」
 ちゅ、と、頭のてっぺん辺りの髪の毛にキスしながら優しく言う玲央に、ますます大変なんだけど、と思いながら。

「……シャワー浴びたら、あの部屋戻っといで」
「うん」
「眠かったら先に寝てもいいけど」
「ん」

「三人寝かせたら、オレは優月と寝るから」
「……うん」

 ふふ、と笑いながら頷く。

「……まあ……抱くのは我慢するつもりだけど」
「――――……」

「優月の声聞こえたら困るし」
「…………」

 …………オレ、声、そんなにうるさいんだろうか……。
 自分では、我慢、してるつもり、なんだけど……。

 ……ああでも、そういえば、よく分かんなくなってる時も多々あるし……。
 玲央がよしよししてくれてる中、してる時の自分を思い出しながら、どんどん恥ずかしくなって、顔が熱くなってくる。

 …………そんなに、声、気にされるほど、出してたっけ……。
 うー。恥ずかし……。

「……優月?」

 返事が出来てないオレを不思議に思ったのか、玲央がオレを見下ろして、ちょっと驚いた顔をした。

「何。そんな赤いの?」

 言いながら、クスクス笑ってる。

「……オレ、そんなに、声……出す??」
「――――……ああ、それか……」

 ふ、と笑んで、まっすぐ見つめられたまま。

「大きいとかじゃなくて、すげえ可愛いから。絶対聞かせたくない」
「――――……っ」

 もっと恥ずかしい答えが返ってきて、もっと、顔が……一瞬で熱くなる。

「はは。……耳も赤い」

 そんなこと言われて、玲央の手が耳に触れるけど、やたら冷たく感じるのは、オレの耳がめちゃくちゃ熱いからだと知る。

「……かわいーなぁ、ほんと」

 何を思ったのか、玲央が、かぷ、と耳に噛みついた。

「ひゃ……ッ」
「……ほら。かわいい」
「……っっだ、って……っ」

 そのまま、ちゅっと頬にキスされて固まってると、クスクス笑う玲央に抱き締められた。

「しょーがない…………戻るか」
「…………しょうがないの?」

「……ん。優月に触ってたいけど、やらなきゃだから、しょーがない」

 可笑しそうに笑って、玲央が言う。

「これ、皆のとこ持ってくの手伝って」

 撫でられて、ゆっくり離されてそう言われる。うん、と頷いて。

 玲央と一緒に皆の部屋着を抱えて歩くだけなのに。
 ……なんかすごく楽しかった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

処理中です...