上 下
601 / 825
◇同居までのetc

「嬉しい」*優月

しおりを挟む


 玲央の部屋に戻ると、皆はリビングではなくて、別の部屋に入った。

「ここ、防音だから、こっちでやってたんだよ」

 そうなんだ。楽器とかはこっちの部屋でやるんだ。
 なんだか、色んな楽器が並んでて、カッコいいなぁ、と思っていると。

「あ、そういや、お前ら今日、帰ンの?」

 玲央がそう聞いたら、皆、そういえば、と顔を見合わせてる。

「どうする? 帰る?」
「ちょっとめんどくさいかも。玲央、服借りれる? ズボンはこのままでいいから」

 勇紀がそう言うと、「別にいーけど」と玲央が言う。

「なあ、派手じゃないのある?」
「オレ、そんな派手なのばっか着てないだろ」

 颯也の言葉に玲央が苦笑すると、ああ、と颯也が笑う。

「玲央が着ると派手になるだけか」
「何だそれ」

 玲央が笑って答えて、それに勇紀も甲斐も笑ってるけど。

 ……うん、なんか分かる。
 玲央が着ると、派手というか、目立つんだよね。

 ただの白いシャツでも、なんか目立つし。
 ……カッコよすぎるもんね、うんうん。目立ちすぎる。うんうん。

「ん? どした?」
 はっ。なんか普通にうんうん頷いていたみたいで、玲央に面白そうに笑われて、見つめられる。 

「あ、いや。……目立つよね、玲央、て思って」
「なんだそれ」

 クスクス笑う玲央に、頭をくしゃくしゃ撫でられる。

「じゃあ、皆泊まってくのか?」

 そう聞いた玲央に、皆、そーだな、と頷いてる。
 わぁ、お泊りだ。なんか、楽しいなぁ。

「そしたら少し遅くまでやってられるか」
「だね」

 玲央の言葉に勇紀が答えて、皆も頷いてる。

「お前ら、教科書とかは?」
 玲央が聞くと、少しの間考えてから、無くても明日一日くらい何とかなる、と皆が言って笑ってる。

「オレと優月は明日一旦家帰ってから学校行くつもりだけど。な?」
 玲央がオレを見てそう言うので、うん、と頷く。

 とりあえず、じゃあ皆泊まってくなら……。

「お布団とか出すなら出しとくよ、オレ」

 そう言ったら、玲央は、ん?とオレを見つめて、それから、ふわ、と笑った。

「良いよ。こいつらあるとこ知ってるし」
「あ、そうなんだ。良く泊まるの?」
「んー、たまにな?」
「そっか。オレ、なんも、しとくこと、無い?」

 そう言うと、皆はクスクス笑う。玲央も笑いながら。

「優月は、先に風呂入ってきていいよ。何かあったら頼むけど」
「あ、うん。分かった」

 今やることないなら、とりあえずシャワー浴びてきちゃおう。
 皆もあとから浴びるんだろうし。

「いってきまーす」

 言うと、皆に、「いってらー」「いってらっしゃーい」と見送られて部屋を出た。ふふ。なんか楽しいな。お泊り会だ。

 あ。ここに来た時って、前はバスローブだったけど……皆居るのに変だよね……と思った時。後ろでドアが開いた。

「優月、着替え渡す。おいで」
「あ、うん」

 ……玲央が、おいでって言ってくれるの、優しくて、大好き。
 …………とか言っても、来いよ、て言うのも、好きなんだけど。……ていうか、なんでも好きなんだけど。

 とか、そんなことを思いながらついて行って、別の部屋のクローゼットへ。


「あいつらの服も一緒に出すか……」

 ぽいぽいと、部屋着と下着を次々出して、置いてあった棚の上に積んでいく。

「部屋着、いっぱいあるんだね。すごいねー」
 感心しながら言うと、玲央が振り返って笑う。

「ここ泊まるのってほぼあいつらだから、人数分ある」
「あ、そっか、なるほど……」

 皆のところに持っていこうと服を抱えようとしたら、待って、と言われて、ん?と玲央の方を向いた瞬間。

 腕を取られて、引き寄せられて。
 唇が、触れてきた。


「――――……」

 ……玲央だー……。玲央の、キス。
 ……なんか今日離れてたから。……嬉しいな。


「……優月」

 少しだけ唇を離してオレの名を呼んで。
 目を開けたオレを見つめて、ふ、と笑って。


「――――……」


 優しいキスがまた触れてきた。


 胸が、とくとく、速くなる。



 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...