598 / 838
◇同居までのetc
「何したのって」*優月
しおりを挟む店を出て、蒼くんの車の助手席に乗り込む。
場所を伝えた玲央のマンションまで、ナビを入れて、蒼くんはシートベルトを着けた。
「三十分位だな」
「あ、うん。玲央に言っとくね」
スマホで玲央に入れると、蒼くんがゆっくり車を発進させた。
「あ。そうだ……蒼くんに話したかったこと忘れてた」
「ん?」
「……玲央とね、オレの実家に行ったの」
言うと、蒼くんが、え、という顔でオレを見た。
「蒼くん、前、前」
「ああ……つか、何だそれ、挨拶に行ったのか?」
視線を前に戻してから、蒼くんが聞いてくる。
「いやちがくって……あのね、樹里と一樹が喧嘩してて、珍しく長くてね。玲央が曲作ってたし、ちょっと実家に行ってくるって言ったら、玲央も、曲作りに詰まってたから一緒に行くって」
「へえ??」
「父さんは居なかったんだけど……一緒に、二人が仲直りするとこ見守って、それで……ちょっと話して帰ってきたの」
「ああ。……なんだ。もう実家に挨拶しに行ったのかと思って、玲央すげーなって思った」
楽しそうに、笑ってる蒼くん。
……何て言ったら分かってくれるかな。えーと……。
「あのね、蒼くん……特にオレ達、それっぽいことは、何も挨拶みたいなことは、してないんだけど……」
「……だけど? ……ああ、バレたのか?」
「――――……」
今度は一瞬だけチラ見され、そんな風にズバリな一言。
「……完全に……とかじゃないと、思うんだけど……」
「何言われた?」
「……今度は父さんが居る時においで、とか……お父さんと私は、子供たちの味方だから……とか、母さんが言ってた」
しばらく、しーんと、無言の蒼くん。
「あー……バレてんな、ほぼ」
「……う、ん」
「普通の友達に、父さんが居る時においでなんて、言わねえよ」
「……だよ、ね。うん」
「長居してたのか?」
「いや……そんなにいなかったし、特にばれそうなこととか言ってないんだけど」
「……まあ、分かるんじゃねえの。母親って」
クックッと、笑いながら、蒼くんが、「優月が分かりやすいしな」と言う。
「……あ。あと、ね」
「ん?」
「……玲央の家に帰ってから、一樹から電話が来たんだけどさ」
「うん?」
ちょっと言うのを躊躇うけど。
「樹にさ、ゆづ兄は、玲央くんが好きなの?って聞かれて、何だろうって思ったらさ……樹里が、BLだって騒いでるって一樹が言うの」
「――――……っ」
クッと笑い出した蒼くんが、なんかムせて、ゲホゲホ言ってるし。
「何、だそれ。お前らほんと、実家で何したの?」
「何したのって……何もしてないよ? ……普通に話してただけ。あ、玲央と一緒に住みたいとは言ったけど……んー。もう、分かんないんだけど……一樹はあんまり意味が分かってなくてさ、でも、樹里は、ゆづ兄可愛いもんねっとか言っちゃっててさぁ……」
「あー、笑える……」
そう言いながら、蒼くんはもう、ずーっと笑ってる。
「……もう、また今度行くから、とりあえず、仲良しって思っててねって、電話切った」
「仲良しねぇ……」
「だって、BLとか言われて、なんて答えれば……」
「まあ間違ってないから……言っとけば、カッコいい彼氏でしょ、って」
「…………まだ、ちょっと、それは無理かも……」
うーん、と考えながら、ちょっと考えて。
「だって小学生なのにー……BLとか、なんで知ってんのかな?」
「ドラマとかも普通にやってるしなぁ? 目に入るのかもな」
にしても、ほんとにお前、面白いな、と蒼くんがしみじみ言いながら、まだ笑ってる……。
260
お気に入りに追加
5,436
あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる