上 下
583 / 825
◇同居までのetc

「意外な」*優月

しおりを挟む

【おしらせ】
 前回のラスト部分。ちょっぴりだけ変えてます。
 皆さまにとったら、なんとなくの変化かもですが(*´艸`*)💦

◇ ◇ ◇ ◇


「……ほんと可愛い」
 クスクス笑う玲央に、ちゅ、と頬にキスされる。

「まあでも、可愛い優月を惑わしちゃいけないから……諦めることにする」

 また指で頬を撫でながらそう言って、玲央はオレを優しい瞳で見つめた。

「朝、作ろっか。パンで良い?」
「うん。パンがいい」
「じゃあ、行こ」

 クスクス笑う玲央に手を引かれて、キッチンに向かう。

 ……惑わしちゃいけないって……。
 もうすっかり惑わされてますが……。

 なんて思いながら。玲央の、カッコいい後ろ姿を見つめながら歩く。
 ……なんだかなあ。ほんと。……大好きすぎるなあ、オレ。

 ふ、と笑んでしまう。

「玲央」

 玲央の腕に手を絡めて、きゅとくっついた。

「玲央、何、作る?」
「んー。卵は食べる?」
「うん。スクランブルエッグがいいな。こないだ玲央が作ってくれたの美味しかったから、作り方、最初から教えて?」
「いいよ」

 クスッと笑って、オレを見下ろす玲央が、ひたすらカッコいい。
 それから一緒にご飯を作って、ちゃんとスクランブルエッグの作り方を教えてもらった。

 朝からずーっと。
 なんか幸せで。

 楽しい朝だった。
 
 
 玲央と別れて授業中。

 ……サボろうと一瞬考えたけど、この授業サボれない授業だった……。

 いけないいけない。……なんて考えて、ノートをとりながら苦笑いが浮かぶ。
 
 玲央と会ったばかりの頃の授業は、なんだかもういっぱいいっぱいで、あんまりちゃんと聞いてなかった。やっと、最近まともに受けれるようになってきた気がするし。はぁ、良かった……。

 玲央にドキドキすることがなくなるってことはなさそうな気がするけど。ほんのほんの少しだけは、一緒に居ることに慣れてきたような気がする。

 周りにも、男の人とっていうのが伝えられたし。
 なんか思っていたよりもずっと……ていうか、なんだかもう、完全に皆は普通で、優しいし。良かったな……。

 少しは落ち着いて授業も受けられるし。
 ……あ、サボろうとしちゃったけど。ふふ。

 そんなことを考えながらだったけど、ちゃんと二限まで終えて、お昼に行く途中の購買でノートを買おうと思って、皆と別れた。購買に入ろうとした時、反対側から来た人と、購買の前で鉢合わせ。一人ずつしか入れない狭い入り口なので、先にどうぞ、と思って止まっていたら、「あ」という声が聞こえた。

「……優月かよ」

 何だか、やれやれみたいな声と同時に目に入ってきたのは。

「奏人く……」
 あ、と口を押さえて。「奏人」と言い直した。

 ……くんで呼んだら、蹴るって言ってたっけ、と思い出したから。

 そんなオレを見て、奏人は少しムッとしたような顔のまま、「入れば」と言った。

「あ、うん」
 言われて、購買に足を踏み入れる。

「何買いに来た?」
 後ろから、そう聞かれて、「ノート」と答える。

「オレも」

 一緒に、買いに行ってくれるのかな? 帰っちゃうとかは……なさそう。ちゃんと、ついてきてる。
 何だか少し不思議な感じがしながら、奏人と一緒に中に進んでいく。

「なあ……どーなってんの? 玲央と」
「どうなって……?」
「別れた?」

 そう聞かれて、思わず振り返って、小さく首を振ると、奏人は、大げさに「知ってる」とため息。

「……知ってるの?」
「だって、なんか玲央、ウキウキしてるし」
 はー、とため息。

「……信じらんねーけど。玲央が、そういうので浮つくとか」
「――――……」

 そのこと自体は嬉しいんだけど……奏人の前で喜ぶべきじゃないだろうし……。
 ていうか。奏人はなんのつもりでそんなことをオレに言ってるんだろ……。なんて返事したら……。
 と思っていたら、奏斗がオレをじっと見つめてきた。

「玲央、ほんとモテるから気を付けな? 狙ってる奴いっぱい居るし、今からだってきっとたくさん居るだろうし」
「……知ってる……」

 モテるのは、知ってる。
 ……ていうか、モテて当然だろうなっと思ってる。
 …………それよりも。


「……あのさ?」

 ……ふと思ったことに、クスクス笑ってしまう。

「何?」
「気を付けなって……注意してくれてるの?」

 そう聞くと、ばちっと目があって、それから、ふー、とため息。


「……お前、抜けてそうだから」
「そう、かもね……」

 クスッと笑ってしまう。
 意外、だけど……心配、してくれてるのかな。ちょっと言い方が微妙で分かりづらいけど。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

処理中です...