上 下
565 / 830
◇同居までのetc

「彫刻……」*優月

しおりを挟む



 そういえば、最初の頃に頑張ってしてからは、玲央に、今度でいいよと言われ続けていたっけ。しばらくあいてしまったけど、よし、再チャレンジでやってみよう! と思って意気込んでいたら。

「あー、ちょっと待って。オレ体洗うから」
「…………」

 やる気満々だったのに、急に待てをされたワンコの気分……。
 なんとなくバスタブに腰かけて、手早く体を洗ってる玲央の後ろ姿を見る。

 ……後ろ姿だけでも、カッコいいなあ。
 …………オレ、いつも、この背中にぎゅー、て抱き付いてるんだよなぁ。

 うう……。またドキドキしてきちゃった。いつまでオレ、こんななんだろう。普通に生きてきて、ここまでドキドキすることって、そうそうなかったと思うよね。ほんと毎回、ドキドキはいつしなくなるんだろうって……。

 玲央は、いつでも強烈。立ってるだけでも。何してても絵になるし。
 ……玲央と向かい合って、緊張しない人たちって、居るのかな。
 勇紀たちは緊張しなそう。友達だからかな? 稔なんて絶対平気そう。蒼くんも。……ていうか、蒼くんは、蒼くん自体もなんか特殊だからな。智也も平気そう。美咲は、むしろ最初敵意を燃やしてたから、ドキドキじゃないだろうなあ……。
 …………あれ、周りの人達は、意外と平気そうだな。おかしいな……。

 えーと……あ、コンビニのおばちゃんたちはきゃあきゃあしてた。
 それに、いっつも一緒に居ると、玲央って色んな人達に見られてるし。絶対あの女の子達は、ドキドキしてるんだと思うんだけど。

 オレも、最初から、ドキドキしてたよね。
 こんなに長く一緒に居てもらっても、ドキドキがほんとにすごくて。

 体を洗い終えた玲央が、シャワーで泡を流していくと、今まで泡で隠れていた肌色が出てきて、ますます緊張する。

 きゅ、とシャワーを止める音がして。
 振り返った玲央を見上げられず、カチンと固まってると。

「……優月?   どした?」
 笑いを含んだ声がして、手が頬に触れてきた。やむを得ず、見上げると、なんかもう。

「……玲央って」
「うん?」
「……あれ、みたい。あれ……」
「あれ?」
「……って出てこないはずないのに……えっと……あの」
「んん?」
「あ、分かった。玲央ってね、彫刻、みたいだなって」
「――――……」
「あの、教科書に載るような感じ……」

 しーん、と静かになった後。
 ぶは、と吹き出して、完璧カッコいいはずの玲央は、めちゃくちゃ楽しそうに笑い出した。なんか、ヒーヒー言って笑ってる。楽しそうで良いけど、なんか、ちょっと笑いすぎ。……もー。

「何でそんなに笑うの?」

「っ……なに言うのかと思ったら……優月が、玲央って、とか言う時は割と変なこと言うからさ、結構ちゃんと構えてたんだけど。ダメだった」


 そんなことを言いながら、まだ笑ってる。



 玲央が結構笑い上戸だって、皆に言ったら、分かってくれるかな。
 もう……。





しおりを挟む
感想 776

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

皇帝の寵愛

たろう
BL
※後宮小説もどきです。女の人が出てきます。最近BLだけどサスペンス?時代小説?要素が混じってきているような……? 若き皇帝×平民の少年 無力の皇帝と平民の少年が権力者たちの思惑が渦巻く宮中で幸福な結末を目指すお話。 ※別サイトにも投稿してます ※R-15です。

処理中です...