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◇同居までのetc

「できること」*優月

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 言わない方が強いって何だろう? と思ってると、玲央がオレを見つめた。

「オレは、優月が後で改めて気づいて後悔したら困るから……今言っておいて……」
「――――……」

「覚悟してもらおうと思った感じ、かな。後に引き延ばすのが嫌だっただけ」

 玲央と見つめ合いながら、玲央の言葉の意味を考える。
 自然と、顔が綻んでしまった。

 子供作れないから、やめといたほうがいい、じゃなくて。
 作れないけど覚悟してほしい、なんだと思って。

 一緒に居ない方がいいとか、そういう話じゃないんだ、と思ったら。
 嬉しくなってしまった。

「……優月はネガティブな話しないで、そのまま過ごそうとしたんだろ。そっちのがいいな」
「……何で? 玲央のは覚悟してって話でしょ? ネガティブじゃないよ。ていうか……覚悟して一緒に居るってこと、言ってくれたのが嬉しい」

「……ん」

 すぽ、と玲央の腕の中に引き込まれる。

「優月……何言ってんのって、思うかもしんねーけど。聞いて?」
「……うん」

「……オレ達の間で、どうしてもできないことってさ」
「うん……?」

「そういうこと、他にもきっとあると思うんだけど」
「……」

「それでも、オレと居るのが一番幸せって思ってくれるように、したい」
「――――……」

 …………ぅわ。
 もう。玲央……。

「……会ってそんなに経ってないし……付き合ったばっかりで何言ってんのって感じかもしれないけどさ」
「――――……」

「オレ、本気で、そう思ってるから」

 言いながら、玲央がぎゅー、とオレを抱き締める。


 ヤバい。
 ……ヤバい、ちょっと、待って。


「――――……」

 喉の奥が。
 痛い。


「…………」

 ぎゅ、としがみついて、我慢していたのだけど。
 息を吸ったら、ちょっとすすり上げるみたいな感じになって。

「え?」

 玲央に覗き込まれて、もうバレたと思った瞬間に我慢出来なくなって。
 ぼろぼろ、涙が零れ落ちた。

「え、何、優月。ちょっと待って」

 手を伸ばして、玲央がサイドテーブルにあったティッシュの箱を取って、オレに渡してくれる。
 拭くんだけど、涙が止まらない。

「大丈夫か?」
 玲央は、心配そうにじっと見つめて、オレの頭に手を置いて撫でてくれてる。

「……大丈夫じゃ、ない……」

 鼻をかんでも、全然鼻声のままだけど、そう言ったら、玲央が苦笑い。

 少し涙が止まって、ティッシュをゴミ箱に捨ててから。

「……玲央ー……」

 手を、玲央の首に回して、ぎゅう、と、抱き付く。

「優月……」

 笑んだ気配と、優しく抱き締め返してくれる腕に嬉しくなりながら。

「あのね? ……誰と居たって、できることと、できないことが、絶対あると思うんだよ、オレ」
「――――……」

「……もし女の人と結婚して子供ができたとしても、きっと他に何かできないことってあると思うし……。人ができることなんて、そんなにたくさんじゃないと思うんだよね……」
「……」

「……オレの最優先が、玲央と居たいってことだから……それをしたから、できないことがあるとしたって、それは、ほんとにいいよ……玲央と居て、できることをできたら、それでいいし」
「……」

「……玲央の赤ちゃん写真が可愛すぎたから、ちょっと、オレも思っちゃったけど……でも、そのせいで、玲央と居れなくなるなんて、やだから……」

 そこまで言って、ぎゅう、と抱きついたら。

 触れてる玲央の体が少し揺れて。笑ったのが分かる。





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