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◇同居までのetc

「玲央が良い」*優月

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「そんなに似てるかなあ……?」
「まだ二人は子供だからそこらへんは違うけど……まっすぐ見つめてくるとことか、素直な返事とか……」

 玲央はひたすらクスクス笑って、楽しそうに続ける。

「可愛かったな。……優月の弟妹っていうのが納得」
「そっか」

 一度頷いてから、ふふ、と笑ってしまう。

「なんか嬉しい。玲央が、二人を可愛いって思ってくれたのが」
「外見とか色々想像できてた訳じゃないんだけど――――……だけどなんか、予想通りって感じだった。こんな感じの雰囲気だろうなと思ってた、そんな感じ」

 信号で止まると、玲央がオレを見て、クスクス笑う。

「お母さんも。――――……優月のお母さんって感じ」
「え、そうだった?」
「うん」
「……そっか……」

 母さんもかぁ。似てるかなぁ? 
 どこらへんでそう思ったんだろ。

 んー、と考えていると、玲央が笑った。

「柔らかい口調とか……雰囲気とか。似てる気がする」
「そう? ……んー、そっか。あんまり、家族と似てるって言われたことないから、ちょっと嬉しいかも……」

「優月……お母さんて、気づいてた?」

 笑ってたオレは、ふ、と玲央を見つめ返した。
 何に気づいてたかは言ってないけど、すぐに分かる位には、オレもそう思ってたから。

「……はっきり言わなかったけど……父さんと母さんは、子供たちが正しいと思って頑張ってるなら、味方だからって、言ってた」
「――――……ふぅん……」

 玲央はクスクス笑いながら視線を前に戻して、車を走らせ始めた。

「……そういうこと、普段から言う人?」
「ううん。……普段一緒に居られないから言っとく、みたいなこと言ってたよ。多分、改まって言われたことは、ないかも」
「――――……それで、最後、お父さんが居る時においでって言ってたよな」
「……うん、言ってたね」

 少しだけ間を置いてから、玲央は、ぷ、と笑った。

「バレてるかな。百パーじゃないだろうけど、ほぼそう思ってるって感じ?」
「……うん……そう、なのかな、やっぱり」

「まあ、わかんないけど……優月の家族は、優月が誰を選んでも、平気な気がした」
「――――……」

「オレに限らず、な? 優月が選んだ相手なら、良いって言いそう。……なんかそんな気がする――――……っていうか、なんとなく最初から、そう思ってたけど」

 玲央がなんだか楽しそうに笑って、オレに一瞬視線を流す。


「優月の家族っぽかった」

 そうかな、と言いながら、なんとなく。
 玲央が楽しそうに言ってくれるから、そのまま頷いて。それから。


「……オレは、玲央が、いい」
「ん?」

「他の人じゃなくて……玲央がいいな……」

 ちょうど信号で止まった時にそう言い終えたら、玲央と視線が合って。
 ふ、と瞳が緩んで。と思ったら、ギアを変えて、サイドブレーキをかけると、オレの腕を引いた。


「――――……」


 少しの間だけ。
 キスされる。

 前の車とかから、丸見えかなーとか、掠めて思うのだけど……。
 ……好きすぎて。いいや、と思ってしまう。

 目の前のカッコよすぎる瞳が、また細められる。


「オレも、お前が良い」
「――――……」

 そんな言葉に、じーん。と、浸っていると。
 クス、と笑って、くしゃくしゃ頭を撫でてくれながら、玲央はすぐ姿勢を戻す。

「ああ、今の、誰を選んでもっていうのは、言葉のあやっていうか……優月の家族は、優月が選んだならいいって言いそうっていう、それだけだから」

 クスクス笑って、玲央が、サイドブレーキとギアを戻す。
 わかってるよ、と言うと、玲央は頷いて微笑む。

「こっからしばらくまっすぐだから。優月、手」
「――――……」

 差し出された手に触れると、ぎゅ、と握られる。

「……手つないで運転とか。自分がするとは、マジで思わなかった」
「――――……それ言ったら、オレの方がだよ」

「ん?」
「手、つながれながら、男の人、好きって思うとは……玲央に会うまで、思わなかったよ」

 思ったことをそのまま言ったら、玲央は、「確かにそうだな」と可笑しそうに笑う。


 繋いでる手も、笑ってくれるのも、嬉しくて。
 玲央が、オレの家族と過ごしてくれてたのも嬉しくて。


 なんだか、ほんとに。
 幸せだなーと、思いながら、繋いでいるその手を、すりすりしてみる。

 

 


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