508 / 825
◇同居までのetc
「玲央と家族」*優月
しおりを挟む「大学で仲良くしてる人で……」
オレが言って、玲央を見ると、玲央は、それはそれは綺麗に微笑んだ。
「神月玲央です」
母さんの方を向いて。
興味津々で母さん側に立った双子にも向けて、そう名乗る。
しゃべったらますます皆が呆ける。
「初めまして」
惚けてる三人に向けて、玲央がふ、と笑うと。
「あ、っと…… とりあえず、どうぞどうぞ、中に……」
やっとのことで気を取り直して、母さんと樹里が、笑顔になる。
「……イケメンすぎ。……何者???」
ぼそ、と一樹が言うので、思わず笑ってしまう。
「何者って……こんにちは、でしょ?」
一樹の頭に触れて、一緒に玲央の方を向く。
「……こんにちは」
照れたみたいに、ぼそっと一樹が言うと、玲央はちょっとかがんで一樹と目線を合わせると。
「一樹?」
と笑った。名を呼ばれた一樹は、ちょっと驚いた顔をしたけれど。
すぐに、ほわっとした笑顔で、うん、と頷いた。
「よろしく」
そういった玲央に、うんうん頷いてる。
……ん。落ちた? と、可笑しくてしょうがない。
「樹里、だよね?」
樹里はもっと分かりやすい。
呼ばれた瞬間、ほわわー--、とめちゃくちゃ嬉しそうに笑う。
「うん! お兄ちゃんの名前は?」
さっき名乗ってたけど、全然聞こえてなかったのかなと思うと、可笑しい。
「玲央、だよ」
「玲央くん、でいいの?」
「良いよ」
「うんっ」
めちゃくちゃ嬉しそう。
あ、もう樹里も落ちたな……。なんて思ってしまう。
母さんはさっき一瞬呆けてたけど、もう気を取り直して大丈夫みたい。
「どうぞ、入って」
言いながら、玄関への階段を先に上がっていく。
「入ろ、玲央」
「ん」
オレと玲央が母さんに続いて家に入ると、後から一樹と樹里が一緒に階段を登ってくる。ふ、と二人、視線が絡む。むっとした顔を、してはいるんだけど。
――――……多分、ほんとは。一緒に玲央のこと、叫びたいんだろうなぁ、なんて思ってしまって。
素直になればいいのになんて思うと、意地を張って視線を外してる二人が、何か、可愛い。
中に入って、テーブルにプリンの紙袋を置く。
洗面所で手を洗って戻ると、二人が紙袋を覗いていた。
お。二人、近い。
「ゆづ兄、プリン?」
樹里が嬉しそうに笑う。
「うん。玲央が買ってくれて。ね」
玲央を振り返って言うと、ん、と玲央が頷く。
ありがとうね、と母さんがお礼を言ってる。
母さんと玲央が話しているのを聞いていたら、唐突に。
――――……なんか、玲央がここに居るのが、不思議すぎる。
ていうか、嬉しすぎる……。
そんな風に思って、じっと見つめてしまう。
「優月、紅茶入れる?」
母さんの言葉に、はっと気づく。
「あ、うん。ありがと。玲央、そこ、座ってて?」
「ん」
玲央が立っていたところの椅子を引いて腰掛けると。
双子たちがとことこ、玲央の隣に行く。
オレは食器棚の引き出しからスプーンを四つ取り出した。
「ゆづ兄と仲良しなの?」
「うん。そうだね」
樹里の質問に、玲央が笑って答えてる。
オレは、紙袋からプリンを取り出して、スプーンと一緒に並べていく。
「めっちゃうまそう……」
一樹がじーと、プリンを見つめている。
「食べていいよ?」
オレがそう言うと、一樹は、玲央の方を見て、「良い?」と聞いてる。
「もちろん」
クスクス笑って頷く玲央。
――――……めちゃくちゃ、カッコいい人だよなあ……。
少し離れて、いつもと違うところで見ると、余計に感じる。
笑顔を向けられた一樹と、隣に居る樹里が、嬉しそうに笑う。
ああもう、あと少し、な気がするんだけどなあ。
……仲直り。
ふ、と微笑んでしまう。
六人がけのテーブルの、真ん中に玲央、その隣に樹里、玲央の正面に一樹が座る。
二人は、プリンの蓋をとって、スプーンを持って。
一口、ぱくっ。
「「うっま」」
二人の声が重なる。
瞬間、二人、視線を合わせた。
玲央がすっごく面白そうな顔で、二人を見比べている。
「……うまい?」
クスッと笑いながら、玲央が二人に聞くと。
二人は、同時に、「うんっ」と頷く。
頷いた二人が、ふと視線を合わせて。それからまだちょっと気まずそうに、すぐ視線を逸らすけど。
――――……多分、もう、あと少し。
ぱくぱくプリンを食べてる二人に、ふふ、と笑ってしまっていると、オレを見上げる玲央と視線が合う。
玲央がちょっと笑って、ほんの少しだけ、頷いてくれる。
双子に優しく接してくれてる玲央も、なんだかとっても大好きで。
うん、と頷き返した。
217
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる