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◇同居までのetc
「何時間でも」*優月
しおりを挟む「――――……玲央……起きよっか」
しばらくくっついてたけど、そろそろかなと、そう言ったら。
「やっぱり今日はずっとこうしてようかなぁ……」
そう言いながらオレを抱き締める。
「……オレはいいけど」
「あ、いいのか?」
「うん……」
クスクス笑い合って、見つめ合う。
「でもするんでしょ?」
そう聞くと、玲央が仕方なさそうに頷いた。
それから、朝は順番にシャワーを浴びて、一日が始まった。
朝ごはんは二人で作って、一緒に食べた。
オレが片づけることにして、すぐに玲央は曲作りスタート。
奥の部屋に楽器が置いてる部屋があるから、そこに行くって言って、玲央は消えて行った。そういえば、一番奥の部屋は、まだオレ、入ったことなかったかも。……その隣の部屋も入ったこと、無いかな。
玲央と一緒にこの家に帰ってきて、お風呂入って、リビング行って、寝室……の日々だったようなと、思うと、なんだか可笑しい。
同じ部屋に居ていいよ、と言ってくれた。邪魔しないようにするね、と答えたけど。とりあえず朝ごはんの食器を片付けた後、お昼と夜の買い物をするために、下のスーパーに行く。
なんか。頑張ってる玲央の為に、ご飯考える、とか……楽しいな、と、ほくほく幸せに思いながら買い物終了。
お昼はサンドイッチにしようと思って、色々下準備。洗濯はもう乾燥まで終わってたから、全部畳んだ。あと掃除も済ませて、大体の家事は終わり。
ゆっくりコーヒーを淹れて、それを手に、玲央の居る部屋にそうっと入る。
わぁ、すごいなこの部屋……。
ピアノもあるし、キーボードやギターや……ここで何でもできちゃいそう。
玲央はパソコンに向かいながら、キーボードに触れていた。
ヘッドホンをしているので、オレが来たことに気付いてない。
入ってすぐの所にあるテーブルにコーヒーを置くと、ゆっくり玲央に近付いた。後ろからそっと腕に触れると。びっくりしたみたいにオレを振り返る。
「――――……優月」
ヘッドホンを首に降ろして、玲央が微笑む。
「玲央、コーヒー飲む?」
「ああ。ありがと」
目があって、微笑まれて。そんなことでなんだかとても嬉しくなってしまいながら。
オレは、コーヒーを玲央に渡した。
「優月、何してた?」
「んーと……家事と買い物と、お昼の用意」
そう言うと、玲央はコーヒーを飲みながら、ふ、と笑った。
「ありがと」
「お昼は、あとで持ってきてもいい?」
「ん。ああ、でも――――……先食べてていいよ。きりがいいとこで食べる」
「分かった。そうするね」
コーヒーを飲む間だけ少し話して、玲央はまた、ヘッドホンを付けた。
オレはマグカップを片付けてから、本とスケッチブックを手に、玲央の部屋へ。
部屋の隅にあるソファに、少し離れて座るけど、玲央は全然気づかない。
音は遮断されてるだろうけど、何となくオレが動いてるのは見えると思うんだけど。
すごい集中力……。
ここからだと横顔が見えるので、玲央の横顔をスケッチブックに描き始める。
前に玲央を、描いたのは初めて会って、誘われて、その誘いに乗るかを考えていた時。
玲央のところに行くかやめるか、考えながら、玲央の顔を、思い浮かべて描いてたんだった。
――――……こんな風に、なるなんて。
あの時は、かけらも想像してなかった。
……セフレがいっぱい居る玲央のセフレになる……というか。試しに、寝てみる……というか。男の人とそんな風になる、とか考えた事もなかったし。
なのに、玲央としたキスが、好きで。
セフレどころか恋人になれて。
……こんなに、毎日大好きで、過ごせるとか。
もうなんか、いまだに夢の中に居るみたいな気がする。
不思議……。
少し止まって考えて。
何か口ずさんでたり。ギターで弾いてみたり。
……絵になる人だなぁ――――……。
何時間でも、見てられそう……。
いつも、微笑んでオレを見る瞳が、ずっと違う方を見てて。
なんとなく伏し目がちにしてるから。すごく、綺麗。
楽器を弾く指先とかも、綺麗で。
大好きすぎる玲央を、白い紙に映し出しながら。
もうなんか楽しすぎて、ウキウキしてしまう。
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