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◇同居までのetc

「呪文」*優月

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 ……玲央、起きそうにないや。
 でもいいや。見てられるだけで、幸せすぎ……。


 何だか、口元が緩んで、微笑んでしまう。


 キスは、朝、させてもらおう……。
 おやすみ、玲央……。 

 玲央を見ていた首を少しだけ戻して、目を閉じた。
 その時。
 玲央がもぞ、と動いて。

 あれ。と思った瞬間。
 玲央は、オレの背に手を回して、ぎゅ、と抱き締め直した。


 ……寝てる?

 すう、と寝息。
 でも、なんかさっきよりも、すっぽり玲央に抱き締められていて。


 ――――……オレが普段寝てる時も、もしかしていつも、
 玲央はオレをこうやって、抱いてくれてるのかな。

 しかも、玲央も、ほとんど、寝ながら。
 無意識に、みたいな、感じで。


 ああ、なんか、もう……。
 ……玲央、大好き。


 思わず、ふと笑って、額に当たってる玲央の顎に、少しだけスリスリして。そのまままた、目を閉じたら。


「……ゆづき……?」

 どきーん、と心臓が弾む。

 玲央って、目覚めすぎだと思うんだけど……! すっごく眠りが浅いのかな?? いま、オレ、ほんの少し、すりってしただけなのに。

 オレが寝たふりしてたら、玲央もこのまま眠れるかな?
 ――――……寝たふり、寝たふり……。

 どきどきどきどき。


「――――……」


 玲央の手がそっとオレの頬にかかってあげさせようとしてくる。


 ね、寝たふり……。どうしたら。顔あげるべき?
 えーっと……。


「ゆづき……?」

 もうバレてるのかな。
 仕方なく、手に逆らわず、顔を上げると、ちょっと眠そうな玲央と目があった。目が合った瞬間、玲央が、ふ、と微笑んだ。


「――――……起きてたのか?」
「……ちょっと前に……」

「喉乾いた? 平気か?」
「……ん、平気」

 頷くと、玲央は、さっき飲ませといた、と笑う。

「ありがと……」
「ん」

 クスクス笑って、玲央がオレを見る。


「何で起きた?」
「ううん。別に……なんか、目が覚めて」

 そっか、と玲央は頷いて、すり、と頬を撫でる。


「……玲央」
「ん?」

「……キス、していい?」
「――――……いーよ」

 クスクス笑って、ん、と微笑む唇。


 そうっとキスして、離れると、玲央はおかしそうに、目を細めた。



「――――……何で聞くんだよ?」
「んー……何となく?」

 ふふ、と笑って、玲央の腕の中に埋まる。



「……キスしたいなーって、思ってて」
「――――……? 今?」

「玲央が起きる前にね、ちょっとの間だけ、そう思ってたから」
「すればいいじゃんか」

「起こしちゃいそうで……」
「起こしていいのに」

 クスクス笑って、玲央がオレをよしよし撫でる。


「……起きてくれて、よかったなー」

 玲央がオレを抱き締めたままで、クスクス笑うのが、体に伝わる。


「――――……ゆづき」

 少しして名を呼ばれて、顔を上げると、オレがしたのよりも深いキスが、唇に重なる。
 しばらくして離れて。



「――――……これで、満足?」


 やさしい声に目を開けると、ふ、と笑われて見つめられた。
 ドキドキしながら、頷く。



「ありがと……」
「――――……キスして、礼言われるとか……」


 玲央がまた笑いながらオレを抱き締める。



「ほんとかわいーな……」


 玲央の、可愛い、は。
 幸せになる、呪文みたいだなあ……なんて思いながら。



 一緒にまた、眠った。
 
 
 




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