473 / 838
◇同居までのetc
「玲央に出来ること」*優月
しおりを挟むマンションに近付いた所で、玲央がふと足を止めた。
「コンビニでなんか買う?」
「何を?」
「飲みたいものとかない?」
「んー……あ」
「ん?」
「アイス。食べたいな」
「OK」
ふと思いついて言うと、玲央が優しく笑う。
手を引かれてコンビニの自動ドアが開いた所で、する、と指が離れた。
でもそのまま、背中に手が置かれて、アイスの方に連れていかれる。
「このコンビニ、アイスたくさんだねー」
冷凍ケースが、すごいでっかい。
「何にしよ。玲央も食べる?」
「んー……」
「普段は? アイス、一人で食べる?」
「一人じゃ食べないな」
笑みを含んだその答えに、ふと、見上げる。
「あんまり甘い物食べない?」
「んー……いや、別に。チョコとかも食べたろ、こないだ。うまかったし」
じっと見つめられながらそう言われて、思い出したのは、口移しで食べさせられたチョコレート。
ぼぼっと、火がついたみたいに、顔が熱くなるオレ……。うぅ。
「……っ」
冷凍ケースを見る振りで俯くけれど、隣で玲央は、クックッと笑ってる。
絶対、今のワザとだ……。もー。
……オレは思うままに赤くなって、全然熱がひかないし。
ひどいよー。
「一緒に食べようかな」
クスクス笑いながら、玲央がオレを覗き込むような仕草。
ちら、と玲央を見て。目が合うと、つい笑い返してしまう。
「うん……玲央は、食べる時は、何を食べるの?」
「んー……さっぱりしてそーなやつがいーかな」
「さっぱり……」
んー、とケースの中を探して、「かき氷とか?」と見上げる。
「レモンとソーダがあるけど」
「ソーダにしようかな。優月は?」
「ピスタチオがいい」
そう言うと玲央が不思議そう。
「ふうん? 珍しい? オレ食べたことねえかも」
「うん、無い時もあるから、見つけると食べちゃう」
「うまいの?」
「んー。オレは好き。あとで食べる?」
「ん。じゃあ一口」
「うん」
それからお茶を選ぶと玲央が当然のようにレジに行って財布を出す。あ、とオレが止まったからだと思う。コンビニを出てからすぐ、玲央がオレを見つめた。
「あのさ、優月。前から話そうって言って、結局話してなかったんだけどさ」
「うん」
「こういう時、オレが出すからそれでいい? 優月は慣れないかもしれないけど……オレが色々してやりたいから」
「――――……」
してやりたいから。
……とか言われると。断るのもなんだかなと思うんだけど。
きっと玲央は今までもずっとそうしてきたんだろうけど……。
「じゃあ、そのかわりに、オレは、何をすればいい?」
「――――……」
玲央がまたオレと手を繋ぎながら、ふ、と笑う。
「何かしてほしくて、そーする訳じゃないしな」
「でもさ、されっぱなしっていうのも……あ、じゃあ玲央のお家で働こうかな」
「ん?」
「家事する」
今度は、ぷっと笑われてしまった。
「何だよ、それ……」
「え、だって……駄目?」
「駄目じゃないけど……それは、別に、払うからしてってことじゃないだろ。一緒に住むから、一緒にやろってことだよな」
「んー、まあ、そうなんだけど……」
でもなあ。なんか、ないかなあ。
「あ、その金は神月の家のじゃいなから。そこらへんも気にしなくていいよ」
「……そうなんだ」
「そう。オレが余裕で払えるうちは払うってことで」
「余裕じゃなくなること、ある?」
「……無いように頑張るけど」
クスクス笑って、玲央がオレを見下ろす。
「一緒に居てくれる時は払う。良い?」
「――――……じゃあ、オレが何か出来る事ないか考えてくれる?」
「……だからそういうんじゃないんだけど」
クスクス笑われる。
「――――……じゃあ、絵、描いて」
「ん?」
「描ける時に、絵を描いて」
意外な言葉に、じっと玲央を見つめる。
「オレの絵に、そんな価値ないような……」
「出るかもしれないだろ? 投資みたいなもん?」
「――――……」
よく分かんないよ、と言いながらも、笑ってしまう。
「――――……まあ……これ、簡単に言うとさ。してあげたいって思うだけなんだよな」
「――――……」
「食べさせたいとか、着せたいとか、好きなとこ、連れて行きたいとか。オレがそうしたいってだけだから……」
まっすぐ見つめられてそう言われて。
ふ、と息をついた。
「……ありがと」
「ん」
そう言うと、玲央は嬉しそうに笑う。
多分こういう人なんだろうなあ。今までずっとこうやって生きてきてて。
……これ以上断るのもなんだかなって気がするから……。
オレはオレで、玲央にできること、考えようかなあ……。
あ。そーだ。
出してもらった分ひそかに貯金としいて、たまったら何かプレゼントするとか。
――――……うん、そうしよう。
いいこと思いついた気がする。
「……何考えてんの?」
「え?」
「嬉しそうな顔してる」
クスクス笑われる。
あれ。顔に出てた?
「ううん。何でもない」
「ふうん?」
マンションのエントランスに入って、エレベーターについて。
扉が閉じた瞬間。
繋いでた指を引っ張られて、軽く、キスされた。
「何でもなくないだろ。そんなニコニコして」
「んー……玲央、大好き」
にっこり笑って、ちゅ、と頬にキスしたら。
玲央は一瞬びっくりした顔をしてから、ふうん、と首を傾げて苦笑い。
「――――……誤魔化そうとしてるだろ」
ぷに、と頬をつままれる。
「……まーいいけど」
くしゃくしゃ頭を撫でられながら、玲央の階で降りる。
「……いつか言うね?」
見つめてそう言うと、玲央は、クスクス笑いながら頷く。
310
お気に入りに追加
5,432
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-
悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。
拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。
逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。
兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる