【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇「周知」

「ありがと」*優月

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「皆に少しは話したよ……あとで詳しいこと話すね」
『分かった。オレはこっちいつでも出れる。迎えに行く。どこの店?』

 そう聞かれて、とりあえず、場所を答える。

『いつ終わりそう?』
「今ラストオーダーだって」
『じゃあ三十分位したら、そっち向かう。店から少し離れたとこで待っててもいいけど』
「お店の前で待ち合せでいい?」
『OK。じゃあ後でな』

 やりとりを終えて、スマホをしまってふと気づくと、皆がニヤニヤしてる。

「恋人?」
「……うん」

 ふ、と笑んで頷く。

「……なんか、皆、思ってたより普通だね」

 さっきからずっと疑問だったことを、口に出す。

「もっと、何で?とか、なるかと思ってた」

 そう言うと周りに居た皆は、んー、と少し考える。

「ふんわり女の子だと思ってたから、ちょっとびっくりはしたけど……なあ?」
「うん。びっくりはした」
「したした」

 あはは、と皆が笑って。「そうだよね」とオレが言うと。

「でも、別にって感じ」
「そーそー。相手に興味はあるけど。優月がどんな奴好きなのか」
「ある! それはすげーある!」

 皆が勝手にこんな奴かなーとか、色々言ってるのを聞きながら、笑っていると、隣に居た女の子達に、優月くん優月くん、と呼ばれた。

「ん?」

 と体を向けると。
 皆、めちゃくちゃニコニコしてる。 

「優月くんて、すごいよね」
「すごい?」

「うん。すごい。あんな風に皆に言える人居ないよー」
「良く分かんないけど、感動しちゃった」

「――――……」

 そうだよね、オレも、恭介と吉原が居なかったら、あんな風には言ってないけど、と思って、苦笑いしか浮かばない。感動、ていうのも……まあ。男同士だからかな。カミングアウト、あんな風にした事で、だと思うのだけど。

 オレ自身がそんなに偏見とかが無くて、好きならそれで、と思ってしまったからか、普通に言っちゃったけど……確かに、ほんとなら、こんな風には言えないかもしれないし、受け止めてくれる事も、無い事なのかもしれない。

「皆も、そうなんだ位で受けとめてるしね」
「色々貴重な空間だったーここに居て良かったー」

 なんて言ってすごい、笑顔。

「それは、皆がそういう人達だったから……ありがたいなーと思うよ」

 去年からずっと仲良くしてる皆だから、言えたって言うのもあるし。
 その皆相手でも、玲央の名前を出すのを直前で躊躇う位だから、オレもやっぱり少しは、この関係が、特別なものだって思ってるんだろうなーって気づいたけど。

「でもなんか、最近優月くんがキラキラしてるっていうのは、女子達で言ってたんだよね~」

 ――――……ん?? キラキラ?

「幸せオーラっていうかー、なんかニコニコしてるしー、ふわふわしてるしー可愛いよねーって」

「え」

 言われたことが恥ずかしくて、固まる。

「服装変わったり、髪型ちょっと違ったり……」
「香水つけてた時もあったよね」
「え。……えっと」

「そう、だから、皆で可愛くなったーって言ってたの、絶対彼女にいじられまくってるんだろうねって」
「皆言ってたよねえ」

 あはは、と女子たちが笑って、周りで聞いてた皆も、どっと笑う。

「――――……」

 ――――……。
 皆、ほんとに、人のこと、見てるな……。
 オレ、二週間位、あんまり女子と絡んでなかった気がするんだけど……。

 なんか恥ずかしすぎる。

 顔が熱い。
 パタパタ手で扇いでると。「かわいー」「めちゃくちゃ照れてるー」と言われて、メニューで扇がれて、余計恥ずかしい。

「だから、優月くんの相手は、素敵な人なんだろうなーって」
「そうそう。勝手に思ってるよー」
「いつか教えてね、見たいー」
「そうだよ、見たいー!」

 素敵な人。と言われて。
 何だか、勝手に顔が綻ぶ。

「うん……」

 頷くと、隣に居た子に「あーん、かわいー」と、抱き付かれてしまった。

 うわ。……ちょっと酔ってる。
 狼狽えた所で、反対側にいた男連中に救われた。

「優月の彼氏に怒られるぞ」
「え。ここに居ないでしょ?」

 なんてやりとりを見て苦笑いしながら。


「……ありがとね」

 なんか本当に思って、そう言ったら。

 周りに居た皆が一瞬黙った後、ポンポン、と肩や頭や背中やらに手を置いてきて。なんだか、もみくちゃにされた。

「わー、もう、何なの??」

 くしゃくしゃになった髪を直しながら言うと、皆おかしそうに笑いながら。

「とりあえず、やなことされたら言ってこい」
「そーだよ、すぐ言えよ」

 なんて言われて。
 すぐに、「されてないよ」と答えると。ノロケ?と笑われた。


 多分、良い雰囲気の中で、うまく言えたのかな、良かった、なんて思いながら、皆と一緒に店を出ると。
 店の真正面、ロータリーのベンチの横に、玲央を発見。玲央はイヤホンしてスマホを見てる。何か音楽でも、聞いてるのかな。
 ――――……本当に、目立つなあ。玲央って。

 ずっと、皆に、玲央の事を話してる間、会いたくて会いたくて。
 なんかもう、嬉しくなってしまって、ついついオレは、玲央の所に駆け寄った。
 気づいた玲央が駆け寄るオレを見て、ふ、と微笑む。

「おかえり、優月」

 ――――……なんかその言葉が嬉しくて。
 めちゃくちゃ笑顔でただいま、と玲央を見上げたら。ますます優しく笑んで、頭をよしよしされる。

「もう別れてきた?」
「あ。まだだった。別れてくる――――……ね……」


 一旦、皆の所に戻ろうと振り返った瞬間。

 店の前に出た皆が、まっすぐまっすぐこっちを向いていて。
 じーーっと見られていることに、気付いた。オレの背後で、玲央が笑いを含んだ声で。

「言ったの? 優月」

 と、聞いてくる。

「えと……誰、ってことは……言ってない」

 そう言うと、玲央は、吹き出した。

「もーバレてそうだけど。――――……まあ、別れて来いよ。待ってるから」

 可笑しそうに笑いながら、玲央がまたオレをめちゃくちゃナデナデしてくる。


 …………っ絶対わざと、撫でてるよー、皆が見てるのにー。


「行っといで」

 ふ、と優しく笑われて。
 乱れた髪の毛を整えながら、んー、と複雑に頷いて。



 ……少し――――……かなり、逃げたい気持ちになりながら。

 オレは、もう、超ワクワクしてる感じの皆の所に向かった。


 





 

(2022/7/10)
(*´ω`)(笑)


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