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◇「周知」
「湯気…」*優月
しおりを挟む「――――……また、そういう顔してると……」
玲央がオレをちらっと見て、目を細めて微笑んだ。
「どっか、連れ込むよ?」
玲央の瞳がカッコ良すぎて、その上色っぽく緩むと、引いてきた顔の熱がまた戻ってくる気がする。
「そういう、顔、って……?」
「……どこでもついていきます、的な顔?」
クスクス笑いながら、玲央の手がまた頬に触れて、ぷにぷにつままれる。
「……」
やっぱり、エスパーだ。玲央。
ついていきたいって、完全に思ってた。
「バレたーって顔すんのも。――――……マジでかわいー」
玲央の両手がオレの頭に触れて、くしゃくしゃと撫でられる。
わー、髪がー、と思った瞬間。そのまま頬に触れて、玲央が近づいてきて、唇が触れた。
「……好きだよ、優月」
「――――……っ」
もう、息が、止まりそうになる。
こんなに、好きだと思うのも初めてだし、こんなに、ドキドキするのも初めてだし。その相手に、こんな昼間の明るい所で、キスされながら、こんな風に言われちゃうとか。
「湯気出そう……」
膝に乗ってるクロを撫でまくって、平常心を取り戻そうとしていると、玲央はクスクス笑う。オレの熱すぎる頬をさすりながら、また顔を上げさせられて、至近距離で見つめ合う。
「……っ出るよ、湯気……」
「――――……出してみ?」
可笑しそうに笑って、玲央がそう言って、見つめてくる。
「――――……」
も、なんか、その楽しそうな顔も見惚れちゃうし、もーどーしたら……。
そう思った瞬間。
遠くで、予鈴が聞こえた。
「……残念」
玲央によしよしされて、離される。
――――……もうすぐ、玲央と離れなきゃ。
ちょっと寂しくなりつつ、クロをナデナデしていると、玲央が立ち上がった。
「行くか?」
「あ、うん。 クロ、またね」
最後にめちゃくちゃ撫でてから、膝から下ろして、立ち上がった。
「久しぶりにゆっくり触ったんじゃねえの?」
「うん。そうかも……じゃあね、クロ」
一撫でしてから、鞄を肩にかけて、玲央の隣に立った。
歩き出すと、玲央がオレを見下ろす。
「写真あとで見てみな? クラス会で見せられないことはないと思うけど」
「うん、ありがと」
「――――……でもなんかオレはちょっと嫌かも」
「え。何で?」
「見れば分かるけど――――……すげー笑ってるから」
「……そうなの?」
「だって、コンビニのおばちゃん、すげえ面白くてさ。カシャカシャすごい音してるし」
玲央は思い出し笑いで、クックッと笑ってる。
「優月はクロと楽しそうだし、なんか、色々おかしくて」
「見ていい?」
「んー……後で見て」
苦笑いの玲央に、ん、と頷く。
「とりあえずそれ、勇紀と稔には見せんなよ?」
そんな台詞が面白くて、笑いながら頷いた。
「あ、そうだ。オレ、今日駅前のカラオケに居るから」
「え、そうなの?」
「勇紀が行きたいって。颯也とかも夕飯と一緒ならとかでOKだったから、そうなった」
「分かった。楽しんできてね」
「ん――――……そろそろ帰る頃になったら連絡しろよ」
「え?」
「一緒に帰ろ?」
「――――……」
玲央の顔を見ると、優しく笑って、オレをまっすぐに見つめてくれている。
嬉しくて、頷く。
「22時位?」
「うん、いつもそれ位かな……もうちょっと遅いかも」
「いーよ、カラオケに居るから。オレあっち、優月は?」
分かれ道で止まって、玲央がそう言う。
「オレは向こう」
「ん……じゃあな、優月。気を付けて行けよ?」
頭に置かれた手に、優しく撫でられると、顔が勝手に綻んでしまう。
「玲央も、気を付けてね」
「ん。後でな」
玲央の言葉に、うん、と頷いてから、玲央と別れて教室に向かって歩き出した。
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