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◇「周知」

「一発で」*優月

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 でも、そんな事言ったら――――……オレにとって、玲央は。
 最最最最最最最最優先だと思うけど。

 そんな風に思いながら、玲央を見つめていたら、何だか優しく笑んだ瞳が近づいてきて。

 あれ。……キス、されちゃいそう。
 校舎の裏通りって言っても……どうしよ……。

 思った瞬間。

「にゃあ」
「!」

 聞こえた鳴き声にぱっと振り返ると、クロがこっちに向かって歩いてきていて、オレを見ていた。

「クロ」
 近寄って、抱き上げる。

「会いに来てくれたの?」
 よしよし撫でると、ゴロゴロ嬉しそう。

「コンビニまで一緒に行こうね」

 抱っこしたまま、玲央を振り返ると。あれ? 何か変な顔してる。

「……邪魔していい?」
「え」

 邪魔って……。クロとの間を?
 あ、そっか。今、多分玲央はキスしようとしてたんだった……。「邪魔」って言うのは、さっきの邪魔するしないの話から来てるのかな。

 ちょっとムッとして見せてる玲央の顔に苦笑してしまいながら、「だめ、かな……」と答えたら。

「――――……」

 ふー、と息を吐きながら、オレの頭を撫でてくる。撫でながらクスクス笑う玲央を見ていたら、ふと思い出した。

「あ。玲央」
「ん?」
「あとで、一緒に写真撮ってくれる?」
「二人で?」
「んと……二人と一匹で」

 そう答えたら、玲央は苦笑い。
 オレの腕の中のクロをイイコイイコしながら、そこにもお前は入ってくる訳?と話しかけてる。なんか、可笑しい……。

「まーいいよ。……でも二人でも撮ろうぜ?」
「うん、もちろん。撮りたい」
「ならいいよ」

 オレはクロを抱いて撫でたまま、玲央と一緒に歩き始めた。

「気持ちよさそ」
「え?」
「クロが」

 ああ、クロが。うん。気持ちよさそうで可愛い。

「撫でられるの好きだもんねー」

 言いながら撫でていると、玲央が横で、「あのさー」と笑う。
 クロから玲央に視線を流すと、何だかすごく優しい瞳をしてて、ただでさえドキッと胸が震えるのに。

「家帰ったら、撫でて」

 優しい声で言われて、数秒惚ける。


「――――……えと……」


 撫でてって。
 ――――……撫でてって……。


「玲央、を?」
「そー」


「――――……」


 かあっと顔が熱くなる。
 撫でるとか。……全然いいけど。

 なんかもう、可愛いなとか思っちゃうと……っ。


「はは。――――……真っ赤……」

 頬に触れられて、すり、と撫でられる。


「かわいーな、優月」

 ぷにぷにされて、ますます恥ずかしい。

 しばらくしてようやく顔の熱が引いてから、そういえば、と玲央がオレを見た。

 
「何で写真撮りたいんだ?」
「んー……今日さ、クラス会あるでしょ」
「ん」

「そこで玲央のこと、言えたとして……写真があれば信じてくれるかなあって」
「ああ。なるほど……」

 じっとオレを見つめてから、玲央が笑う。
 
「……言うのか?」
「んー……皆はね、聞く気満々だと思う」
「ふーん? 何で?」

 また、じっと見つめられて、ん、と頷く。

「なんかオレ、最近、幸せそうって言われちゃうんだよ。玲央と離れた後とかさ、スマホで連絡取ってる時とか……皆に彼女できたのか聞かれちゃうの」
「……ふーん? それは何だか、嬉しいけど」

    玲央はほんとに嬉しそうに、クスクス笑ってる。

「でも、皆、どんな女の子って聞くからさ、やっぱり男とって思わないみたいで」 
「まあ。そうかもな」
「その上、玲央だって言っても、誰も信じてくれない気がして」

「キスしてるとこでも写真とっとく?」
「……それを皆に見せるの?」
「見せてみたら?一発で信じてもらえるんじゃないか?」

「――――……無理……かも……」


 うん。
 多分、一発で信じてくれるかもしれないけど。

 ……皆の叫びを押さえられる自信が、全然無い。



    考えた末そう言ったら、玲央は「まーそうだろうな」と、可笑しそうに笑った。






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