458 / 825
◇「周知」
「大好き」*優月
しおりを挟む一限も二限も終わって、昼食もあと少し。
玲央に「もうすぐ食べ終わるよ」と入れると、「オレももうすぐ行く」「あのベンチの所で会ってコンビニ行こう」と返って来たので、分かったという了解のスタンプを押した。その瞬間、あ、と気付く。
またハムスター押しちゃった。似てるって言われたやつ……。
少し経って、「また似てる」と入ってくる。
あ。また入ってきた。
本気で似てると思ってるのかな。不思議。
そういえば玲央は、肉食獣……。カッコいいから良いけど。
ふ、と笑んでしまいながら、「似てないけど」というメッセージと、笑うスタンプを押す。それから「すぐいくね」と入れてスマホをしまうと、隣の友達にクスクス笑われた。
「優月、笑ってる」
「……あ。うん。ちょっと面白くて笑っちゃうんだよね」
あはは、と笑ってしまうと。
友達は、何が?と聞いてくる。
「んー……ハムスターのスタンプ押したら、似てるって言われて」
「どれ?」
そう言われたので、さっき送ったハムスターを見せると。
ぷ、と笑われて、まあ分かる、と言われた。
分かるんだ、とちょっぴり不思議気分になりながら、苦笑い。
「オレ、こんなにふわふわのもこもこの生き物じゃないけどね」
「んーまあ毛はないけど」
「なにそれ」
クスクス笑ってしまう。
「目が似てんじゃない? なんかくりくりしてるし」
「……ちょっと、似てるって言った人に聞いてみるね……?」
「あぁ、分かったら教えて」
「うん。楽しみにしてて」
お互い可笑しくて笑ってしまいながら、うんうん言い合ってから、オレは立ち上がった。
「ちょっと猫のとこ行ってくるー」
言うと、周りの友達が、また行くの、と笑ってる。
うん、また行ってくるねと笑い返し、トレイを持って、歩き出した。
――――……なんか歩き出すと、一歩ずつ、玲央に近付くみたいで、嬉しくなる。
お昼一緒に食べればよかったかなあ。
……でもなー。あんまりオレとばっかり居てもなあ。……やっぱりお昼位は、違う人と食べた方がいいよね。
じゃないとほんとに、毎日毎日、三食全部になっちゃったら、さすがに、ちょっぴり飽きられちゃうかなあ。……あ、でも、オレは飽きないと思うけど。
いつも玲央と離れているとそうなように、一人で色々考えていたら。前方に玲央を発見。
途端に嬉しくなって、結構遠くだけど追いつこうと、走り出した瞬間。
玲央に手を振って、近づいて行って、玲央の腕に触れる女の子。
「――――……」
ぴた、と足が止まった。
玲央とその女の子も足を止めて、話してる。
えーと……。
どうしよう、今、行かない方がいいよね。
戸惑っている内に、いつのまにやら、玲央の腕からその女の子は、腕を引いてた。
――――……。
しばらく話してる、女の子と玲央を見守る。
楽しそう。
――――……特に、女の子が。
玲央の事、大好きなんだろうなーと、思ってしまう。
分かる。
――――……カッコいいし。優しいし。
……立ってるだけであんなに素敵な人、いないよね。分かる……。
玲央が何か言いながら、指で今から行く方向を示してる。
女の子は、少し残念そう。
二人が別れて。
オレは、少しだけ、さっきの勢いはなくなってて。どうしようかな、走ろうかな。
思いながら、少しゆっくり、玲央の後を歩いてたら。
玲央がふっと、振り返って、こっちを見て、オレを見ると同時に立ち止まって、こちらにまっすぐに体を向けた。
優月
そんなに大声だしてない。声は聞こえてないけど。
何となく、名前を呼んでくれた感じは分かる。
何より、オレを見た瞬間、ふっと優しく笑んでくれて、まっすぐ、こっちを見て、止まってくれた。
なんだか、急に嬉しくなって、玲央に向かって、駆けだした。
――――……大好き、玲央。
202
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる