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◇「周知」

「大好き」*優月

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 一限も二限も終わって、昼食もあと少し。
 玲央に「もうすぐ食べ終わるよ」と入れると、「オレももうすぐ行く」「あのベンチの所で会ってコンビニ行こう」と返って来たので、分かったという了解のスタンプを押した。その瞬間、あ、と気付く。
 またハムスター押しちゃった。似てるって言われたやつ……。
 少し経って、「また似てる」と入ってくる。

 あ。また入ってきた。
 本気で似てると思ってるのかな。不思議。

 そういえば玲央は、肉食獣……。カッコいいから良いけど。
 ふ、と笑んでしまいながら、「似てないけど」というメッセージと、笑うスタンプを押す。それから「すぐいくね」と入れてスマホをしまうと、隣の友達にクスクス笑われた。

「優月、笑ってる」
「……あ。うん。ちょっと面白くて笑っちゃうんだよね」

 あはは、と笑ってしまうと。
 友達は、何が?と聞いてくる。

「んー……ハムスターのスタンプ押したら、似てるって言われて」
「どれ?」

 そう言われたので、さっき送ったハムスターを見せると。
 ぷ、と笑われて、まあ分かる、と言われた。

 分かるんだ、とちょっぴり不思議気分になりながら、苦笑い。

「オレ、こんなにふわふわのもこもこの生き物じゃないけどね」
「んーまあ毛はないけど」
「なにそれ」

 クスクス笑ってしまう。

「目が似てんじゃない? なんかくりくりしてるし」
「……ちょっと、似てるって言った人に聞いてみるね……?」
「あぁ、分かったら教えて」
「うん。楽しみにしてて」

 お互い可笑しくて笑ってしまいながら、うんうん言い合ってから、オレは立ち上がった。

「ちょっと猫のとこ行ってくるー」

 言うと、周りの友達が、また行くの、と笑ってる。
 うん、また行ってくるねと笑い返し、トレイを持って、歩き出した。


 ――――……なんか歩き出すと、一歩ずつ、玲央に近付くみたいで、嬉しくなる。


 お昼一緒に食べればよかったかなあ。
 ……でもなー。あんまりオレとばっかり居てもなあ。……やっぱりお昼位は、違う人と食べた方がいいよね。

 じゃないとほんとに、毎日毎日、三食全部になっちゃったら、さすがに、ちょっぴり飽きられちゃうかなあ。……あ、でも、オレは飽きないと思うけど。

 いつも玲央と離れているとそうなように、一人で色々考えていたら。前方に玲央を発見。

 途端に嬉しくなって、結構遠くだけど追いつこうと、走り出した瞬間。
 玲央に手を振って、近づいて行って、玲央の腕に触れる女の子。


「――――……」

 
 ぴた、と足が止まった。
 
 玲央とその女の子も足を止めて、話してる。
 
 
 えーと……。
 どうしよう、今、行かない方がいいよね。

 戸惑っている内に、いつのまにやら、玲央の腕からその女の子は、腕を引いてた。


 ――――……。
 しばらく話してる、女の子と玲央を見守る。

 楽しそう。
 ――――……特に、女の子が。

 玲央の事、大好きなんだろうなーと、思ってしまう。

 分かる。
 ――――……カッコいいし。優しいし。
 ……立ってるだけであんなに素敵な人、いないよね。分かる……。

 
 玲央が何か言いながら、指で今から行く方向を示してる。
 女の子は、少し残念そう。


 二人が別れて。
 オレは、少しだけ、さっきの勢いはなくなってて。どうしようかな、走ろうかな。
 思いながら、少しゆっくり、玲央の後を歩いてたら。


 玲央がふっと、振り返って、こっちを見て、オレを見ると同時に立ち止まって、こちらにまっすぐに体を向けた。


 優月


 そんなに大声だしてない。声は聞こえてないけど。
 何となく、名前を呼んでくれた感じは分かる。


 何より、オレを見た瞬間、ふっと優しく笑んでくれて、まっすぐ、こっちを見て、止まってくれた。

 なんだか、急に嬉しくなって、玲央に向かって、駆けだした。
 



 ――――……大好き、玲央。

 




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