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◇「周知」
「可愛がってる」*玲央
しおりを挟む「なー、玲央、カラオケ行かない?」
不意に言う勇紀の言葉に、首を傾げる。
「行ったじゃんか」
そう言った所で、ドアが開いた。
「おーす……相変わらず、玲央が早ぇし」
「驚かないよな、もう」
甲斐と颯也が笑いながら入ってきた。
「一限は?」
「終わったけど、オレら二限休講」
苦笑いの颯也に、甲斐が肩を竦める。
「夏のライブ行きたいとこ、探してみようぜって、ここ来たとこ」
「おー、いいね。よろしく。オレも後で探してみよ。行きたいとこ、色々あるよね」
勇紀が笑ってそう言ってるのを見て。
「あぁ、カラオケ、何なんだ?」
そう聞くと勇紀が、オレを見て、あーだってさーと苦笑い。
「カラオケ行ったけど、全然歌ってないじゃん。玲央が一曲歌っただけでさ。ライブだったから今週練習入れてなかったしさ。カラオケ行きたいなーと思っただけ」
そういえば歌ってなかったな、と思う。
優月が居ない間、ジムでも行こうかとも思ってたけど――――……。
「今日ならいーけど」
「あれ。優月は?」
「クラス会だって」
「ああ、そうなんだ。じゃあちょうどいっか。二人はどーする?」
「カラオケか。いいけど、飯食えるとこにして」
「こないだんとこでいーんじゃね? 美味かったし」
颯也と甲斐も乗り気みたいで、決まった。
「予約できるか聞いとく」
甲斐の言葉に頷いて、オレと勇紀は立ち上がった。
「誰か呼ぶ?」
「任せる」
甲斐に答えて、勇紀と部室を出た。
部室の棟を出て歩きながら、勇紀はオレを見た。
「なあ、玲央、夏休みの話、優月とした?」
「あぁ、話した」
「何て言ってた?」
「……行って良いの?て言ってた。邪魔じゃないの?とか」
そう言うと、はは、と勇紀が笑いながら、「優月っぽいね」と言う。
いいのかなと迷ってた優月の顔が浮かんできて、そーだな、と笑ってしまう。
「優月とどっか行こうとかいう話から始まったからって、言っといた」
「うん。そだね。喜んでた?」
「――――……明日から夏休みでも良いって、言ってたぞ」
「あははー。かーわいい」
勇紀が楽しそうに笑いながら言って、そうだよね、と頷く。
「優月にとったら、初めての恋人と過ごす夏休みだもんね」
「――――……」
「まあ、相手は、可愛い優月を汚す男だけどね」
やれやれだな、と言いながら、勇紀がクスクス笑う。
「まあでもさ、何かオレ、ちょっと思うんだけど、優月ってさ」
「ん?」
「どんなに汚されても、優月は、そのまんまな気がするよね」
「まあそうだな――――……って、汚さねーから」
危うくスルーしてしまうところで、ギリギリ突っ込むと、勇紀はおかしそうに笑う。
「つか、オレは汚してるとかじゃなくて」
「……なくて?」
「――――…可愛がってンだよ」
「――――……」
勇紀がポカンとして、アホな顔でオレを見てるが。
「じゃーな、オレこっち」
勇紀にそう言うと、あーもー、玲央ってば、とぶつぶつ言ってる。が、放置を決め込んで、歩き出した。
「――――……」
抱いてる時の優月を思い出すと。
愛しくなる。
超可愛がってんだよな、オレは。
――――……こんな風に思いながら、すんの、マジで初めて。
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