452 / 825
◇「周知」
「恥ずかしい?」*玲央
しおりを挟む学校が見えてきた。もうすぐ優月と別れる。
こんだけずっと居るのに、そんな事思うとか。何だかなと、思ってしまう。
「あー……今日優月、クラス会だよな?」
「うん。さっき連絡来てて、お店予約したって」
「どこ?」
「今回も駅前の料理屋さん。2階が全部座敷で貸切に出来るの」
ふーん、と頷いていると。
「玲央は、夕飯どうするの?」
「あー……誰かと食べるかも」
ニコニコしながら、優月は、分かった、と言う。
「――――……何、そんな笑ってんの?」
オレが不思議に思って、優月に聞くと。
「……なんかさ」
「ん」
「普通は、人の夕飯なんて聞かないでしょ?」
「……ん?」
「ずっと一緒に居るから、夕飯どーする?とか。聞くようになってるんだなーと思うと。なんか、嬉しいなーと思って」
「――――……」
多分、まあ、それはそうなんだろうと思う。
一緒っていう前提があるから、別になって、どうするか、自然と聞いてる。
――――……事実としてそうなんだけど。
それを敢えて、言葉にされると。
しかも、嬉しい、とか。そんなニコニコされると。
「――――……押し倒したい」
思わず漏れた、言葉に。
自分でも言ってから、少し驚いたけれど。
「えっ?」
と、めちゃくちゃびっくりした顔で、見上げられる。
聞き違いかな??とばかりの、でっかい瞳。
「あーごめん。本音が……」
「…………」
聞き違いじゃなかったのかなと、不思議そうに、さらにでっかくなる瞳。
あーもー……。なんか考えること、全部伝わってくる気がする。
吹き出してしまった。
可愛すぎて。
「……ごめん、優月がすげー可愛くて、もーキスして、そのまま押し倒したくなった。今日は夜まで会えないし。長いなーと思って」
クッと笑いながら、優月の肩に手をかけて、引き寄せながらそう言うと。優月がかあっと赤くなって、瞬きを繰り返しながらオレを見つめている。
「あの……オレ、お昼にクロのところに行くよ……?」
「ん、ならオレも行く」
即答しながら、肩を組まれて至近距離で恥ずかしそうな優月を離す。
……今さら近い位でこんなに真っ赤とか。ほんとに可愛い……。
「お昼食べて、コンビニ行ってから行くね?」
「ん? オレも行くよ。コンビニ。食べ終わりそうな所で連絡して」
「分かった」
嬉しそうに、頷く優月。
「――――……」
「……?」
頬に触れて、すり、と撫でながら手を離すと、優月が不思議そうに見つめてくる。
「……なるべく早く、行く」
「――――……」
自然と漏れた言葉に、またまたオレも自分で驚いたけど、優月もきょとんした。
「……わーもう、なんか」
「……」
「……そんなにいっぱい、一緒に居たい、みたいなこと、言われると……」
「――――……」
「離れたくなくなっちゃうんだけどー……」
また、ぷーー、と膨れてる。
この顔、朝もしてたな。はは。かわい。
キスしたいが。
さすがに、もうすぐ大学の正門前。
「オレこのまま部室行く。優月向こうだろ?」
「うん。じゃあまたあとでね」
優月は笑顔でそう言って、一歩、進んでから。
くる、と振り返る。
「……玲央?」
「ん?」
「ありがと」
「……何が?」
そう聞くと。優月は、ふわ、と微笑んで。
「一緒に居たいって、いっぱい、言ってくれて」
「――――……」
咄嗟に、返事が出来ないでいるオレに、じゃあねー!とニコニコ笑顔で手を振ると、足早に離れて行った。
何となく、その姿が見えなくなるまで、見送る。
……ありがと、だって。
一緒に居たいって、いっぱい、言ってくれて、ありがと。って。
ダメだ。
もー、連れ戻して、そのまま家に帰りたい。とか。
ダメだな、これ。
重症。
ていうか。
――――……恥ずかしくねーのかな。ああいうの、言うのって。
エロイ事言うより、よっぽど恥ずかしい気がするんだけど。
218
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる