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◇「周知」

「愛しい」*玲央

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 バスルームから出て、いつも通り、優月の髪をドライヤーで乾かす。
 気持ち良さそうで可愛い。

 ただひたすら優しくしてあげたいと、思ってしまう。

 ……優月は、可愛い。
 今、オレの中で、一番可愛いと、思ってる。

 ……そもそも、人をこんな風に可愛いとか、愛しいとか、思った記憶がほとんどなく生きてきたような……。
 だから、生きてきた中で、一番、可愛いのかも、とも思う。


 ――――……最初に会った時、どう思ったっけ。

 確か。あん時は。……最初見た時は。
 ――――……クロに笑った顔が。無邪気で。

 ……キスしたらどうなるんだろう、と思ったんだよな。


「はい。終わり」
「ありがと。玲央も……」

「今日はいいや」

 ドライヤーかけてくれる時の優月の手も好きなのだけど。
 ――――……なんか。色々。今日結構ずっと我慢してた気がする。


 タオルで髪の雫を拭き取って、優月の手を引く。キッチンに寄って、水のペットボトルを、一本優月に渡して、自分も持つと、一緒に寝室に向かう。

 奥の間接照明だけを付けて、優月とベッドに腰かけた。

「水、飲みな?」
「あ、うん……」

 ぴく、と反応して。頷いた優月が蓋を開けて、水を飲む。
 オレが水を飲み終えて、ベッドサイドの台に乗せると、優月がじっとオレを見つめた。

「……髪、濡れた感じの玲央」
「ん?」

「……好き」

 ふ、と笑んで、下から見つめられる。


「――――……」


 ――――……なんか。
 ほんと。
 …………ハートに矢が刺さるみたいな絵が浮かぶ。


 何なんだろう、この、感じ。 

 そっと手を伸ばして、オレを見上げてる優月の頬に手をかける。


「……オレが好き?」
「――――……」

 優月は、じっとオレを見つめて。
 頬に置いた手に、そっと手を重ねて。すり、と頬を寄せてきた。
 
「うん」

 何だかとてつもなく嬉しそうにしてるその笑みに。
 愛しくて、たまらなくなる。


「――――……優月……」

 囁きながら、唇を重ねる。
 ゆっくり舌を絡ませて。伏せられた睫毛を見ながら、頬をまた、すりと撫でる。


「……あ、お水」
「……ん?」

「ふた、してない……」

 握り締めてた蓋を、ペットボトルにはめて。オレはそれを受け取って、下に置いた。


「――――……優月」

 そのまま、ベッドに背を沈めさせて。手をついて、腕の中に囲う。


「――――……なんか……あの」
「……ん?」

「……すごい……ドキドキ、する」
「ん。……オレも」

「ほんと?」
「……ほんと」

 言うと、優月がくす、と笑う。

「でも絶対、オレの方が、ドキドキしてるけど……」
「……触ってみな?」

 優月の手を掴んで、自分の胸に触れさせる。
 触れた瞬間。かあっと赤くなる優月。

「――――……」

 ほぼ毎日、一緒に寝て触れ合ってんのに。
 この反応が、すげー可愛い。

「……玲央も、ドキドキしてるけど――――…… 触ったせいで余計、オレがドキドキしてる……」

 どうしてか、小さな声で、ぽつぽつ言うのが。 
 可愛くてたまらない。


「優月」

 押し倒した優月を、引き上げて起こして。
 オレの太腿を跨がせて座らせると、密着して、抱き寄せた。

「……どして、これ?」
「先、めちゃくちゃキスしたい」

 オレを見つめて、瞬きしてる優月の後頭部、片手で押さえて。
 深く、唇を重ねた。


「――――……ん……」

 優月が、少し、唇を開けてくれる。
 最初の頃は、優月に、口開けて、とか、言ってたっけ。

 自然と開けてくれるようになってるこの感じ。
 すげー、愛しいんだけど。


 ゆっくり、舌を触れさせて、絡ませる。 
 手をバスローブから挿し入れて、胸を撫でる。



 んん、と優月の声が漏れると。 何だかヤバい位、興奮する。







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