【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇「周知」

「夏休み」*優月

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「あ。そうだ。忘れてた」

 不意に玲央が、そんな事を言って、オレを見つめた。

「うん?」
 忘れてたって何だろ、と、玲央を見つめ返すと。

「夏休みさ。地方のライブハウスを回ってみないかって話になってさ」
「うん」

「地方にも来てほしいって声は、前からあったからさ」
「うんうん」

「色んな地方のライブハウスで歌って、その地方で泊まったり遊んだり」
「わー、楽しそうだね、いいねえ」

 うんうん、と聞いていると。

「優月も行けるか?」
「ん? 行けるって??」

「優月も、一緒に」
「……え??」

 ぽかん、としてしまう。

 だって、ライブって、お仕事みたいなものだよね。
 
「オレ行ったら、邪魔じゃない?」
「何で?」

 今度は玲央の方が、きょとんとした。

「だって、ライブって……遊びに行くわけじゃないでしょ? オレ、フラフラしてたら邪魔じゃない?」
「優月が居て邪魔なんて思う奴居ないと思うけど……」

 玲央は、クスクス笑って言うけど。
 良いのか分からなくて、返事が出来ないでいると。

 すると、玲央がふ、と笑って。

「あのな、この話がどっから始まったかっていうと」
「うん」

「優月と、夏休み、色んな事しようって話したろ? それを勇紀達に話したらさ」
「うん」

「そこから、ライブしながら各地回って、ライブ以外は泊ったり遊んだりしようっていう提案になった訳」
「――――……」

「だから、最初から、優月と遊ぶっていう話から始まってんだよ」
「……そう、なの?」

「だからこれは、優月がOKなら、それでいいって話だから」

 玲央の言葉を自分の中で考えて。
 ひとめぐり。

「――――……え、じゃあほんとに、良いの?」
「良いのって言うか、一緒に行ってくれないと、困る」
「困る?」

「元が、優月と思い出作ろうっつー話だし」


 そこまで言われると。
 あ、じゃあほんとにいいんだ、と思えて。

「行く行く。行きたい」

 玲央達と、色んな所、回れるとか。めちゃくちゃ嬉しい。


「それってさ、オレさ、そのライブ、見ていいの?」
「当たり前だろ。見ないでどこに居るつもりだよ」

 玲央に、笑われてしまった。
 ……確かに。


「行く。絶対行く」
「OK。皆に伝える」

 めちゃくちゃワクワクする。
 嬉しいな。早く夏休みにならないかななんて、思っていたら。

 ふと微笑んだ玲央の手が、伸びてきて。
 オレの頭、くしゃ、と撫でた。一瞬だけ。
 

「――――……」

 目立つの分かってるのかな。
 こんな、一瞬撫でる、とか。

 素知らぬ顔で、お好み焼き、食べてるけど。
 何となく、玲央の事見てると。

「……ちょっと撫でたくなっただけ。でも優月周り気にしてるから。少しな?」

 クスクス笑って、玲央が小声で言ってくる。

「嬉しそうだから。優月」
「うん。だって、嬉しいよ。もう。明日から夏休みでも良いなあーて」

 玲央がまた、優しい瞳で、オレを見つめてくる。


「……玲央、ありがと。すっごく、楽しみ」
「――――……つか、オレも楽しみだけど」

「ライブも。めちゃくちゃ楽しみ! また皆カッコいいの、見れるんだ」
「Ankh好き?」
「好き」
「そっか」

 玲央が、嬉しそうに笑うから。
 何だか、余計に、嬉しくなる。



 

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