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◇「周知」

「可愛いって」*玲央

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「何か所位、まわるかだよなー?」

 勇紀の言葉に、颯也が考えながら。

「とりあえず皆予定があるなら、その時期外すとこから考えればいいんじゃないか? 皆が空いてる時期に、どれくらい回れるかで、それで場所も決めて……」
「オレ別に夏は何もねえよ」

 甲斐がそう答えながら、ふと、オレを見て、「玲央は?」と聞いてくる。

「ああ、オレも今からならまだ予定入ってねえからいつでも……」

 そう答えながら。優月に触ってた奴が離れたのを見て、何だか少しほっとするような、変な気分。

 何だかモヤモヤしている所に、今度は女子達が、優月たちの席の周りに立った。

 知り合いの顔を見ると、挨拶がてら立ち寄る。ものすごく、ただ、何気ない風景なのだが。

 何かを話しかけた女子の方を見上げた優月の頬に、一人の女子が、そっと触れた。
 少しじっとしてる優月が手が離れると同時に、すぐに笑って何かを言ってる。

 ――――……。

 いや。分かってる。
 もう完全に、今のが何かは、ちゃんと分かってる。

 髪の毛とか。まつげとか、とにかくそれ系が顔についてたから取ってもらって、すぐありがと、って、言ってるだけ、だろう。

 と。分かりはするのだけれど。


 すげー、不快……。

 ……優月は、とにかく、可愛いけど。
 

「……勇紀さ」
「うん?」

「お前、よく優月の事可愛いっていうよな」
「――――……うん。まあ。だって、可愛いじゃん?」

 何を突然、という顔で、オレを見てくる。

「……あ、いいや。やっぱりなんでもねえ」

 オレは今一体何を話そうとしたんだ?
 自分で何が言いたいのかすら、よく分からなくなってきて。首を振りながら、そう言って話を終わらせようとした。

 がしかし。終わらなかった。

「えー、何何? オレが可愛いっていうの、もしかしてムカついてんの??」
「……あー、悪い。別にそうじゃねえ」

「だとしたって、何で今急に? オレ今優月の事可愛いとか、言ったっけ??」
「言ってない」

「何なの、玲央、気になるじゃん」

 勇紀がぎゃいぎゃい騒いでて、あー、うるさいと思いながら、自分が変なこと口走ったせいかとも思い、反省。


「だから――――……お前は可愛いと思うんだよなって事」
「うん。可愛いよね? ぽわぽわんとしてて。でも結構しっかりしてるとこもあるし。でも、ふわふわーとしてるし」
「――――……」

「しっかりしてるとこもあんのに、なんかぽわぽわーってしてるから、余計可愛いのかも。 ……で? 何で?」
「だから、恋愛感情とか無くても、可愛いって思うってことだよな」
「……うん。オレ、優月には恋愛感情ないよ?」

 えー何なの、ほんとに……と、眉を顰められて、脱力しか感じない。


「え、まさか疑ってないよね、そこ。オレ、ほんとに一切無いからね?」
「分かってる」


「じゃあなんだよー、何で改めて聞くの? 気になるじゃん」

 勇紀が眉をひそめてて、甲斐や颯也も何だか笑いながらオレを見てる。


「つかさー」

 甲斐が、可笑しそうに笑いながら。


「今ライブとかの話をしてんのに、優月が可愛い話しだすとか。お前ほんと、溶けてんな」

 甲斐にそんな風に言われて、ムカつくが。出だしが出だしの話だったので、何だか否定も出来ず、缶コーヒーを煽った。






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