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◇「周知」

「溺愛」*玲央

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 今日は2人とも4限まで。
 ――――……そしたら、車で優月のマンションに行く。

 オレのマンションに誰かの荷物を運ぶ日が来るとなんて思わなかった。


「おーす、玲央、おはよ」
「ああ、稔」

「昨日は楽しかったなあ?」

 ニヤニヤしてる稔に、そーだなと適当に返すと。


「もうオレ、分かった」
「何が?」

「玲央と優月の関係性」
「……関係性?」

 2限が一緒なので、一緒に歩きながら、稔に聞き返す。


「玲央の方が溺愛って事だろ?」
「――――……」

 まあ否定はしないけど。
 溺愛の自覚は、結構あるし。

「何でそーいう結論?」

「優月はわりと、玲央が何してても気にしないみたいな感じの余裕があるけどさ」
「――――……」

「お前は、余裕ないよな。 すげー側に居て、可愛がってやりたいっつーのがだだ洩れー」
「――――……」


 ……ほんと、稔って。
 ――――……ただうるせーだけかと思ってると。

 たまにいやーなとこ、ついてくるというか。

「……でもさ、ダダ洩れなんだけど、やっぱりなんかまだ信じられないとこもあって、オレは混乱中」

 なんて言って、あはは、と笑ってる。

「まだ信じられねえの?」
「――――……だって、玲央だぜ??」

「――――……」


 ……まあ。いーけど。


「今までの玲央の相手ってさ、オレが思うにさ」
「何」

「ルックスに自信がある子じゃないと、なかなか玲央に近付けなかったと思うんだよね。分かる?」
「――――……」

「バンドもやってるしさ、一般人というか、普通の子って、玲央の事好きでも、いけなかったと思う訳。遠くから見てるって感じだと思うんだよね」

 ……まあ何となく分かるので、黙って聞いていると。

「だから、玲央に近寄れるのは、綺麗なさぁ、プライド高い子達ばっかでさ。だから余計玲央の恋愛って、面倒なんだろうなーとオレは思ってたんだよね。でもなんだかんだ言って、玲央だってそういうのばっか選んでるしさ。まあ周りにそういうのしか居なかったからなのかもしんないけど」
「――――……」

 そんなのを聞きながら、中高時代思い浮かべる。
 ……まあ。
 確かに周りにはルックス良い奴しか居なかったような。

「お前がセフレが楽とか言い出した時も、まあ、分からなくはないっていうか。だから特に反対もしなかったし……まあ、甲斐もそーだし。やっぱモテるしそーなんのかなと思っててさ」
「……何かお前、結構色々考えてたの?」

 苦笑いが浮かんでしまうと、稔は、そりゃそーでしょ、と笑う。

「オレ結構近くに居たし。そりゃ、考えるでしょ。まあ、玲央がモテすぎて、嫉妬されすぎてめんどくせーって うんざりしてたのも知ってるし」
「――――……」

「だから、優月の事、可愛いとか言うから、ついつい話しかけたけど」

 そこまで言って、稔は、しばらく無言。
 口元に手を置いて、んー、と悩んでいる。


「……優月って、お前が居た奴とタイプ全然ちげーじゃん?」
「ああ」

「お前は可愛い可愛い言うけど……まあ、可愛いっちゃ可愛いかもだけど、派手に目立つ可愛いとかじゃねーし。……って、優月には言わないで」
「……言っても大丈夫だと思うけど」
「いや、言うな」

 笑ってそう言ってから。

「優月との事、ふざけていっぱいからかってたけど、ほんとにすげー不思議だったんだよね、昨日まで」
「――――……」


「でも、見てて分かった」
「何が」

「優月が玲央を見てるより、玲央が優月を見てる方が、ずっと多い」
「――――……」

「そんなのは、マジで初めて」

 言い切って、楽し気な稔に視線を流す。








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