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◇「周知」
「健全な」*玲央
しおりを挟む朝、優月と学校で別れてから、一限は部室で曲を作りながら時間を潰した。
最近、優月に付き合って学校に来て、空いた時間に曲作り。
締め切りギリギリで無理やり絞り出すより、なんかすごく楽に書ける気がする。これも、優月のおかげかな、なんて思ったりしながら、部室から出て二限の教室に向かい始めたところで、後ろから声がかかった。
「よお」
「昨日はおつかれー」
「ああ」
振り返るまでもなく、声で甲斐と勇紀と分かってたが。
なんか、ニヤニヤしてる。
「部室に居たの?」
「ああ」
勇紀に頷くと、二人が顔を見合わせて笑った。
「もう、一限で玲央を見かけるのがデフォルトになって来たよな」
「ほんと。嘘みたいだけど、二週目回ると、慣れてきた」
「優月が教職取ってるから、やたらコマが多いんだよ」
「そっか。優月が先生とかいいよねー、優しくて。オレ、生徒になりたいもん」
勇紀が楽しそうに笑いながら、そんな風に言う。
「まあ。……似合うよな」
楽しそうに生徒の前に立ってる優月が浮かぶ。
似合う似合うーなんて勇紀が笑って、何故か嬉しそう。
しばらく昨日の事とか話しながら歩いていた所で、ふと思い出した。
「なあ、夏休みなんだけど」
オレが言うと、二人が、ん?と顔を見てくる。
「――――……健全な遊び、すげーしたいんだけど」
そう言ったら、二人、しばらく黙った後、めちゃくちゃ可笑しそうに笑い出して。
「何だよ、健全って」
と口に出したらさらに可笑しくなったらしく、二人はめちゃくちゃ笑ってる。
「だから、人集めてパーティとかさ、そこから良い奴見つけてとか、なんかそーいうんじゃなくて」
「人聞き悪いな、オレはそんなにそーいうの行ってねーけど」
勇紀がクスクス笑う。
その横で、去年の夏はよくやってたな、と甲斐が苦笑い。
「海とか。バーベキューとか。なんなら、キャンプとか。夏っぽいと思うような事」
そう言ったら、勇紀が目を点にしてオレを見てくる。
「玲央暑いの好きじゃないじゃん。プールも、室内のが良いって言ってたし。海、良いの? キャンプなんてめんどくせーって言ってたじゃん」
「……そのオレ、もー忘れろ」
「えーーー。マジ信じらんない。優月すげーな」
「オレも信じられない」
勇紀と甲斐が、からかうと言うよりは、本気で、驚いた顔をして、大げさな声を出してる。
「……つか、最近すげー健康的な生活なんだよな、オレ。夜寝るのも割と早くて、朝はすげー早いし。なんか優月と居るとすげー和むから、精神的にも何だかずっと落ち着いてるし」
「――――……うわー、やば。玲央……」
「だからか、今まではすげえ面倒だった事も、あんまり面倒だと思わねえんだよな……朝からちゃんと飯作ってるし」
「うわーうわーうわー。 マジ、やば、玲央」
勇紀がひえー、という表情をしながら甲斐を見て、甲斐も肩を竦めてる。
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