402 / 825
◇「周知」
「一番変わったこと」*玲央
しおりを挟む抱き締めている優月が、サラサラ肌触りが良くて、気持ちいい。
まだすーすー眠ってる。
――――……優月と会うまで通ってた店にも全然行かなくなって。
深夜を回って遊び歩くことも無くて。
誰か知らない奴を抱くこともない。
こないだ断ってから、誘われる事も無い。
まあそれだけはっきり、もう無いと断ったし。
一緒に買い物に行って、一緒にごはんを作って。食べて、並んで洗って、片づけて。毎日一緒にシャワーを浴びて、デートしたりして。
――――……で、毎日、同じ奴を抱き締めて眠るって。
……変わりすぎにも程があるな。
稔や勇紀が特に騒いでるし、甲斐や颯也もそう思ってるんだろうけど。
あいつらは、オレが一人でしてた事を全部知ってる訳じゃない。
オレが今まで一人でやってた事。それがもう、ことごとく変わってるって事迄は知らない。
だから、あいつらが言ってる変わった事、なんて、ほんの一部で。
「――――……ん……」
もぞ、と優月が動く。
でも、まだ寝ぼけてるみたいで、「……れお……」呼びながら、オレのウエストに腕を回して。すり寄ってからまた眠った。
「――――……」
一番変わったのは、行動じゃなくて、気持ちだ。
一人で寝た方が当然寝やすいし、安らかだと思っていたのに。
こんな風にくっつかれて。愛しくてたまらない、とか。
抱き締めて眠ると、安心するとか。
なんか、愛おしいって気持ちが、ものすごく、沸き起こるとか。
目で見えない部分の方が、絶対変わってるんだよな……。
優月を抱き締め直して、腕枕。
髪の毛を撫でながら、抱き寄せる。
サラサラの髪の毛が顎に触れる。
スヤスヤ、寝息。
んー……。
――――……まあ。ほんと。……愛しい、んだよな。
可愛くてたまんなくて。
めちゃくちゃ抱き締めたいと思うけど。
こんなスヤスヤ可愛く寝てるなら、ずーっと起きるまで待っててやりたいとも思うし。
「……ん……」
オレが動くと、反応して、ぴく、と動くけど。オレに触れてると安心するのか、起きはしないで、また寝息を立てる。いつもそう。
――――……そういや、優月って。
抱くほどに、エロくなってく。
素直だからかな。反応も素直だし、感じる快感にも素直で。
――――……真っ赤になって、涙目になってるとこなんて、もう、ますます泣かせたいし。……でもぐちゃぐちゃになるまで、可愛がりたい気もして。
どっちで抱こうか、いつも迷う。
……イったから待って、とか。あんなに可愛く言われて。
待つわけないし。……ほんとに。
あーだめだ。
また泣かせたくなってきた……。
その内、嫌われたりして。意地悪だからとか。
――――……恥ずかしいからもう嫌だとか。
うーん……。
と考えていたら。
「――――……」
腕の中から、じーーーーと、オレを見上げてる優月と、突然目が合った。
「……あれ? 優月?」
「…………ん? 朝……??」
「まだ、寝てていいよ……」
「……うん……」
言いながら、ハワハワあくび。
「……なあ、お前さ、オレに抱かれるのって、どう思ってる?」
ねぼけた感じの優月。
素直に言うかなと思って聞いてみたら。
「んんー……??? んーと……」
「――――……」
「……玲央が、色っぽくて、カッコいい」
「――――……」
「……だから、好き」
もぞもぞくっついてきて、また目を閉じてる。
なんか。
――――……はー、と息を吐く。
思ってたのと全然違う回答だったけど。 すげー、可愛いし。
よしよし、と撫でて抱き寄せると。
優月が腕の中で、ん、と声を出して。 ふふ、と笑って。
また静かに、眠りだした。
213
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる